報告:第206回(13‐04月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会

この記事は、2013年5月15日配信。

  演題:「私の目指す視覚リハビリテーションとは」
  講師:吉野 由美子 (視覚障害リハビリテーション協会会長
    日時:平成25年4月10日(水)16:30 ~ 18:00
    場所:済生会新潟第二病院 眼科外来 

【講演要約】
 私の目指す視覚リハビリテーションサービスの理想は、「一生涯を通じて、日本のどこに住んでいても、全盲でもロービジョンでも、身体障害者手帳所持の有無にかかわらず、介護保険サービスを利用していても、必要な時に視覚リハビリテーションサービスが受けられるようにすること」です。 このことが私の理想になったのは、私が高知でおこなって来た、視覚障害リハビリテーションの普及活動や、その後様々な問題を持った当事者の方との出会いを通して、そのような理想を持つようになりました。 

 そこで、この講演では、まず「高知県での普及活動で私が分かった」ことをお話しました。高知県の特徴は、県財政も貧しく、県民の所得水準が低く、公共交通機関などの社会インフラが整備されていないこと。視覚リハサービスの利用者は、7割以上が高齢者で、しかも中途視覚障害者であることです。高齢の中途視覚障害者は、「目が見えない・見えにくい状態になったら、なにもできない」とあきらめていることが多く、視覚リハに関する情報もほとんど知らせていないので、サービスを利用しようという気持ちにはなりません。だから、「利用しに来るのを待つ」のではだめで、「こちらから出ていくサービス『デリバリーサービス』でなければ、高知県には視覚リハは普及しないという戦略を立て、実施した過程をお話しました。

 次に、視覚障害者の高齢化と中途視覚障害者の割合が増加しているのは、高知県だけの特別なことではなく、日本全国どこにでも当てはまるということを、統計資料を使って説明させていただきました。 

 また日本眼科医会の研究班がおこなった2009年度の調査報告を引用して、視覚障害があって日常生活に困っている方は、手帳所持者の5倍以上になること。全盲とロービジョンの比率は1対9ほどで、ロービジョンの方が圧倒的であることを説明しました。

 しかし、一般の方たちも、行政の方たちも、視覚障害者=全盲者であり、幼い頃からの障害者であり、点字を日常的に使っている人であるという固定観念を持っていること。その観念にしたがって、今我が国の視覚障害者に対するサービスは、幼い頃からの視覚障害者で全盲の方中心で、実際視覚障害があることで日常生活に困っている方たちの多くは利用対象外になっており、視覚障害があって日常生活に困っている方のニーズには応えられていないということをお話しました。 

 このような現状の中で、大変つらい思いをしておられる方たちの事例を取り上げさせていただき、このような状況を変えて行くには、現状を理解している視覚障害当事者の方たち、支援者の方たちが積極的に啓発活動をおこない、「このケースは私の専門ではない」と言って拒まずに受け入れること。そのような悪戦苦闘の中から、新しい専門技術を作り出すこと、いろいろな関係機関との連携が重要であるこをお話し、講演を結ばせていただきました。

 私が話をさせていただいたのは、眼科外来で、視覚障害当事者の方も含め、30人ほどのとてもアットホームな雰囲気の中でした。私の話が終わった後、相互の意見交換ができ、私の講演内容について、多くの共感をいただくことができました。

 この機会でお話しさせていただけたことは、今後の私の活動の方向を決めていく、大きな手がかりとなりました。主催いただいた安藤先生、熱心に聞いてくださった参加者の皆さんに心から感謝申し上げます。 

【略歴】
 1947年 東京生まれ 65歳
 1968年 東京教育大学(現筑波大学)付属盲学校高等部普通科卒業
 1970年 日本福祉大学社会福祉学部入学
 1974年 同卒業、名古屋ライトハウスあけの星声の図書館に中途視覚障害者の相談業務担当として就職(初めて中途視覚障害者と出会う)
 1977年 東京都児童相談センター入都(障害者雇用枠)
 1989年 日本女子大学文学研究科博士課程前期社会福祉専攻入学
 1991年 同上終了(社会学修士)
 1991年10月~1999年3月まで 東京都立大学(現首都大学)人文学部 社会福祉学科助手
 1999年4月~209年3月まで 高知女子大学社会福祉学部講師→准教授
 2008年4月~任意団体視覚障害リハビリテーション協会長 

【後記】
 福島県からの参加の方も含め、30名近くの方々が参加しました。
 吉野さんは、先ずご自身の障害のことからお話を開始しました。ご自身の生い立ちから大学進学、東京でのご勤務、高知での体験等を紹介しながら、自ら描く理想の「視覚リハビリテーション」について語って頂きました。
 「ニーズは掘り起こすもの」「出張して行うリハビリ(攻めのリハビリ)」「どこでも、だれでも、いつでも、どんな場合でも、行えるリハビリ」「どんな障害にも対応できる力をつける」「連携だけではなく、どんなことでもやろうという気迫」等々の言葉が印象に残りました。
 貪欲な、そして精力的な現場の情熱を感じました。講演後の討論では、介護の方から現場へのサポートや教育も必要という声が上がりました。
 とても充実した時間を過ごすことが出来ました。吉野先生に感謝致します。

 吉野先生が会長を務める視覚障害リハビリテーション協会が主催する「視覚障害リハビリテーション研究発表大会」の第22回が、来月に新潟で開催されます。2つの招待講演(iPS細胞/網膜色素変性の治療)、2つの特別講演(心のケア/視覚障害者へのITサポート)、シンポジウム「視覚障害者の就労」、その他「歩行訓練」「スマートフォン」「盲学校」等々視覚リハビリテーションに関係する多くの課題について学ぶことができます。最新の福祉機器を揃えた機器展示、盲導犬の体験コーナーもあります。多くの方に参加して頂きたいものと準備しております。
 http://andonoburo.net/on/1690

 

 第22回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
  期 日: 2013年6月21日(金)  プレカンファレンス
                    22日(土)・23日(日) 本大会
  会 場:「チサン ホテル & コンファレンスセンター 新潟」4階
         「新潟大学駅南キャンパスときめいと」 2階
  メインテーマ : 「見えない」を「見える」にする「心・技・体」
   大 会 長 :  安藤 伸朗  (済生会新潟第二病院)
   実行委員長 : 渡辺 哲也  (新潟大学工学部 福祉人間工学科)
   ホームページ: http://www.jarvi2013.net/

 

 

【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】

 平成25年6月12日(水)16:30~18:00
   「視覚障害グループセラピーの考察」
      小島 紀代子 (NPOオアシス) 

 平成25年6月21(金)~23日(日)
  第22回視覚リハビリテーション研究発表大会
  (兼 新潟ロービジョン研究会2013)
  最新情報 http://andonoburo.net/on/1690
  ホームページ:http://www.jarvi2013.net/

 平成25年7月10日(水)16:30 ~ 18:00
   「新潟盲学校弁論大会 イン 済生会」 

 平成25年8月7日(水)16:30 ~ 18:00
         「楽しい外出をサポートします!~『同行援護』その効果とは!?~」
     奥村 京子 (社会福祉法人新潟市社会福祉協議会)

 平成25年9月11日(水)16:30 ~ 18:00
   「言葉 ~伝える道具~」
     多和田 悟 (公益財団法人日本盲導犬協会 訓練技術担当理事)

 

 

 



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