第22回視覚リハ大会 特別講演 1 『視覚障がい者はどうして支援機器を使わないのか?』

この記事は、2013年6月7日配信。

第22回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 特別講演1
 演題:「視覚障がい者はどうして支援機器を使わないのか?」
 講師:林 豊彦(新潟大学教授 工学部福祉人間工学科)
  座長 小田 浩一(東京女子大学)
  日時:平成25年6月22日(土) 10時〜10時50分
  会場:チサンホテル 4階 越後の間(東) 

【抄録】
 その答えは「知らないから」。我々の調査によれば、新潟市の視覚障がい者は自立生活や就労に不可欠な支援機器のことをほとんど知らない。知らないから、使わないのは当然である。なぜそうかというと、障がい者の周りにいるソーシャルワーカー、コメディカル、教師が包括的には学んでいないからである。近視になったら眼鏡をかけることのは誰でも知っているのに、極度に見えにくくなったら拡大読書機を使うこと、視覚がほとんど使えなくなったら音声パソコンを使うことを知っている人は、それぞれ11.5%、5.6%しかいない。 

 その解決策としては次の2つが考えられる:1)支援機器の選択・適合の専門家である支援技術者が他の専門家と恊働して支援する公的機関の設置;2)障がい者を直接支援する社会福祉士、介護福祉士、コメディカルの一部を支援機器の専門家として育成。ともに実現できれば、難しくない機器の選択・適合は現場だけで解決でき、難しい問題は地域の支援センターと恊働して解決できる。 

 上記2つの実現のために、我々は新潟市の委託を受けて平成20年度に「新潟市障がい者ITサポートセンター」を新潟大学内に設置した。現在のスタッフは、センター長の私以外に3人(常勤の支援技術者1人、非常勤の支援者・事務員が各1人)である。しかし、すべての臨床ニーズには対応しきれないため、地域の関連組織・機関・団体と協力しながら支援事業を拡大している。特に継続的な連携に力を入れており、定期的に支援会議や相談会を開催している特別支援学校が4校ある。本学医学部附属病院のロービジョン外来にも月1回参加している。新潟県視覚障害者福祉協会とは、共同で「視覚障がい者のためのパソコン講習」(全10回、各2時間)を年2回開いている。出前の講習会・研修会は年30回を超える。コメディカルのための支援技術講座も試行的に始めた。これらの啓発活動を通じて足場を固めながら、事業の拡大をはかっていきたい。  

【略歴】
 1977 新潟大学工学部・電子工学科卒業
 1979 新潟大学大学院・工学研究科修士課程修了
    新潟大学・助手 歯学部
 1986 歯学博士 (新潟大学)
 1987 新潟大学・講師 歯学部附属病院
 1989 工学博士 (東京工業大学)
 1991 新潟大学・助教授 工学部情報工学科
 1996 Johns Hopkins大学・客員研究員
 1998 新潟大学・教授 工学部福祉人間工学科
 2008 新潟市障がい者ITサポートセンター長(兼任) 

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【第22回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 特別講演】
 特別講演 1  座長 小田 浩一 (東京女子大学)  
  演題「視覚障がい者はどうして支援機器を使わないのか?」
        講師 林 豊彦(新潟大学教授 工学部福祉人間工学科) 

 特別講演 2  座長 吉野 由美子 (視覚障害リハビリテーション協会)
  演題「視覚障害者に対するこころのケア」 
  講師 山田 幸男(信楽園病院/NPO法人障害者自立支援センターオアシス)

*第22回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
  ホームページ : http://www.jarvi2013.net/
  詳細なページ : http://andonoburo.net/on/1690



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