眼の愛護デー(10月10日)に、8都府県から眼科医・内科医・神経内科医・リハビリ医・麻酔医やリハビリ関係者・教育者・当事者等々、約60名が参加し、済生会新潟第二病院10階会議室で公開講座を行った。テーマは「治療とリハビリ」。熱い討論があった。
1.「加齢黄斑変性治療の現状と課題」
五味文(住友病院)
加齢黄斑変性はこれまで失明する疾患の代表例だった。現在では抗VEGF療法が登場し、多くの患者が良好な視機能を保てるようになってきた。その治療の実際を示し、治療費がかかること、すべての患者がよい視機能を保てるわけではないことに触れ、抗VEGF療法の有用性と限界を語って頂いた。特に、患者さんへのアンケート、大変興味深かった。治療について、医者からの評価ばかりでなく、患者さんからの評価も必要な時代になってきていると感じた。
2.「iPS細胞による眼疾患治療の現状と未来」
高橋政代(理化学研究所)
iPS細胞を移植する再生医療が、世界で初めてわが国で臨床治験された。最初の臨床治験が行われてから1年の臨床経過を示してもらった。今後は、F1カー(個別のiPS細胞)ばかりでなく、カローラ(iPS細胞バンク)も用意するという。治療選択肢が増えるのはいい進歩。診療・研究・リハビリを兼ねた「アイセンター」構想が、より具体化している。企業の方も参加し戦略として進めているという。
3.「高次脳機能障害と向き合う~神経心理ピラミッドを用いたホリスティック・アプローチ~」
立神粧子(フェリス女学院大学)小澤富士夫
中枢神経が障害された場合の回復は可能だろうか?リハビリにいい方法はないのだろうか?くも膜下出血で数年間、表情も感情もなく,無反応で無気力だったところから、ニューヨークRusk研究所のプログラムで一年間訓練を受け回復した経験をお話頂いた。神経学的にどのような回復をたどったのか、興味深いところである。治療やリハビリを、病院・施設を主体に考えると見方(評価)が短期的になってしまう。 病は一生もの、治療(訓練)も一生もののはず。家族と共に歩む治療の重要性を再認識。コーチングの技(sweet & short)、広く使えそうだ。
4.討論から
○障害者にとって就労は大切な課題。○リハビリを続けるにはモチベーションが大切。○施設で訓練しても社会(コミュニティ)が受け入れないという現実。○見えない人に対する、(それを知らない)社会(人たち)の拒絶反応も課題。○社会全体の成熟は必要。○与えるリハビリから、障害者自らが望むリハビリ。○地域包括ケアの取り組み、、、、、、
【後 記】
盲学校の弁論大会を当院で10年近く続けているが、子供たちが「将来は、働いて税金を払えるようになりたい」「今は助けてもらって生活しているが将来は人を助ける職業につきたい」と語る姿にいつも感動している。リハビリにはその評価が大切だが、働いて得る報酬は確かな評価の一つ。
現在、多くの眼科術者は、ロービジョンケアに関心がないが、硝子体手術を開発し広めた硝子体手術の先駆者であるロバート・マカマーとチャールズ・スケペンスは、ロービジョンケア(患者のこと/家族のこと)にも多くの関心を抱いていたことを思い起こした。
速報『済生会新潟第二病院眼科 公開講座 「治療とリハビリ」』 10月10日
2015年10月11日