『第14回 越後眼科研究会』
日時:平成25年10月19日(土)17:00~19:30
場所:チサンホテル&コンファランスセンター新潟(越後東の間)
特別講演の大島先生のお話は、1時間の講演が、アッという間でした。非常に勉強になる講演をありがとうございました。 以下、私の記憶をたどりながら、講演要旨をまとめてみました。
特別講演 講演要旨
『重症増殖糖尿病網膜症に対する外科的治療のアップデート:小切開硝子体手術の進化と補助薬剤ベバシズマブの功罪』
大島 佑介(西葛西 井上眼科病院)
大学院で学んだvascular cell biologyを基に、現在の眼内新生血管の抑制について概観し、眼内血管新生に対する分子標的治療(抗VEGF)の功罪について述べた。
現在、糖尿病網膜症の大きな問題である血管新生緑内障や牽引性網膜剥離の治療に、抗VEGF療法は有効であるとともに、問題があることを示した。
充分量と適正量~bevacizumab(Avastin)の1mg硝子体内投与は、適正なのか?前房内のVEGF濃度は、投与後しばらくの間は測定不能なくらいの低値。これをどう解釈するのか?やり過ぎではないか?0.1mgで同じような効果が期待出来うること。同時に抗VEGFの神経保護作用に対する悪影響や、血管閉塞の合併について触れた。
27G硝子体手術 硝子体手術の歴史に触れ、17Gが開発され、20Gとなり、最近は23/25Gとなってきた。27Gは当初、黄斑疾患にのみの適応と考えられていたが、PDRやPVRへも適応が広がってきた。大きな要因として、27G機器・広角視野システム・明るい照明系の開発等が挙げられる。疾患による硝子体の性状の特徴から27Gが向かない疾患(AMDに伴う硝子体出血等)もあるが、現在では多くの網膜硝子体疾患に適応が広がりつつある。特にPDRの場合は、硝子体液化が進行していることが多く、膜処理等には、従来の双手法よりも好都合であることを理解しました。ダブルポートカッターの話なども新鮮だった。
今後は、血管新生緑内障や牽引性網膜剥離ばかりでなく、PDR術後の視神経萎縮が課題である。
【略歴】
1992 大阪大学医学部・卒業 大阪大学医学部眼科学教室・入局
1993 多根記念眼科病院
1995 淀川キリスト教病院眼科
1997 大阪労災病院眼科
1999 大阪大学大学院医学系研究科臓器制御学専攻(博士課程)
2003 大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室・助手
2010 大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室・講師
2012 中国南開大学医学院・客員教授
2013 西葛西井上眼科病院・副院長
京都府立医科大学および近畿大学医学部眼科・客員講師
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以下、一般演題の抄録です。
17:00~ 一般演題 座長:橋本 薫(長岡赤十字病院眼科) (講演10分.質疑5分)
1)アイファガン点眼液0.1%について ○千寿製薬株式会社
2) 術中に腫瘍だと判明した急性涙嚢炎の1例
○橋本 薫、田中 玲子、武田 啓治(長岡赤十字病院眼科)
症例は79歳女性。近医で急性涙嚢炎として複数回排膿処置を施行されていた。手術目的に当科紹介受診され、涙嚢摘出術を施行した。切開直後に充実性の組織を認め、腫瘍除去術を施行した。術後の病理検査で上顎洞癌由来のSCCと診断された。急性涙嚢炎でも術前のCT検査は必要であると思われた。
3) 網膜色素変性症のOCT所見
○安藤伸朗、大矢佳美、中村裕介(済生会新潟第二病院)
網膜色素変性の治療については、人工網膜や再生医療、遺伝子治療などが話題になっているが実用化には、まだ数年あるいは数十年かかりそうである。現在臨床の現場では、白内障手術や黄斑浮腫など克服できる課題がある。今回は特にOCT所見を中心に臨床現場での問題を掘り下げる。
4) 硝子体手術に至った網膜血管腫の1例
○ 村上健治(新潟市民病院)
症例は15歳女性、網膜血管腫を伴う網膜剥離の診断で当科を紹介されて受診した。流入血管および血管腫本体に光凝固を施行し病勢は鎮静化したが徐々に黄斑上膜が出現し再び視力低下を来したため硝子体手術を施行し た。黄斑上膜が出現した場合は早期の硝子体手術が望ましい。
5) 白内障手術術後合併症に対する網膜硝子体治療
○吉澤豊久(三条眼科)
白内障手術には術中の核落下、眼内レンズ破損などに加えて、術後黄斑浮腫などの合併症がある。今回、術後に増悪したMPPE、網膜硝子体牽引症候 群により黄斑浮腫が悪化した2例を経験したので報告する。MPPEに対しては ranibizumabの硝子体注射、硝子体網膜牽引に対しては硝子体手術により視機能を改善させた。術後合 併症の原因・発症機序を見極め、それに応じた対処法を行うことが重要である。