報告:第208回(13‐06)済生会新潟第二病院 眼科勉強会
2013年7月17日

  演題:「視覚障害グループセラピーの考察」
  講師:小島 紀代子(新潟県視覚障害者のリハビリテーションを推進する会
             NPO法人障害者自立支援センターオアシス)

    日時:平成25年6月12日(水)16:30~18:00
    場所:済生会新潟第二病院 眼科外来  

【講演要旨】
 こころのケアの一つとして2000年から行われ、150回以上続いている「グループセラピー」の考察を通して、オアシスの活動全体をみつめる良い機会になりました。視覚障害リハビリテーションは「こころのケア」に始まり、最後まで必要な治療で最も難しいと云われています。

 私たちの活動の中で『直接的なこころのケア』は、①」視覚障害リハビリテーション外来 ②グループセラピー③なんでも相談・電話相談です。
  『間接的なこころのケア』として、④パソコン・機器の使い方、点字教室 ⑤白杖・誘導歩行介護講習会 ⑥調理・化粧教室・日常生活指導・転倒予防 ⑦サマースクール・学校訪問 ⑧看護学生実習受入れ ⑨同行援護従事者養成講座 ⑩新潟県内パソコン教室姉妹校10校の開設があげられます。 

 活動の根幹は、月2回の「リハビリ外来」です。その外来は、東京から経験豊かな清水美知子先生、石川充英先生と眼科の大石正夫先生、内科の山田幸男先生他で診療が行われています。先生方は、広い視野と既成概念にとらわれないユニークな人間性をお持ちです。その精神やお考えのもとに多くの職種、人々が連携し、「チーム医療」が行われています。

Ⅰ.「グループセラピー」とは何か、目標は?
 目の不自由な人【ピア(Peer)「仲間」「対等」】が中心になり、集団で行う。

1) 同じ目の不自由な人と出会いたい。「気持ち」「情報」「考え方」を『わかちあい』抑えていた気持ち、怒り、悲しみを外に出し、役立つ情報を得て、前向きな考え方を仲間と共に身につける。

2)『わかちあい』から気持ちが楽になり、『ひとりだち』へ。ガイドヘルパー制度を使って、スーパーで買い物、近くの公園を散歩して帰宅。自分で選び自分で決めることが「自立」そして、社会参加へと。

3 『ひとり立ち』は、鬱ウツしていた気持ちが解けて、安心して自由な気持ちで話ができ、いろんなことが許せ、「社会への働きかけ」へと発展していく。

 以上が、グループセラピーの目標です。

 オアシスでは、毎月第1土曜日13時~15時に開催。メンバーは対等、個人の意志の尊重、話したくない時は話さない。この部屋で聞いたことはこの部屋に置いていく。新しいメンバーを大切に、話しやすい雰囲気を作るなど、簡単なルールのもと、目の不自由な人の司会進行で行っています。

Ⅱ.グループセラピーのアンケート調査から
 グループセラピーによく参加している人、1,2回参加した人、参加していな方に分けて、調査をしました。

○参加する目的
 「同じ目の不自由な人の話を聞いてみたい。どうして生活しているのか知りたい」

○参加してよかったことは?
 「自分だけが悩んでいるのではないことが分かった」、「前向きに考えられるようになった」「機器の情報、生活の工夫がわかった」
 よく参加する組は、「家族や晴眼者にはわからないつらさや失敗が話し合えた」、「気持ちが楽になった」

○不満に思うこと、よくない点は
 「ある程度のところで話が終わり、解決策が得られない」、「一般社会の価値観とのずれや、メンバーの固定化」

○本音が、話せたかどうか?
 1,2回組み~「何とも言えない」が66%でした。

○こころのケアに役立ちましたか?
 よく参加する組は「役立った」が92% 
 1,2回組みは、「役立たない・何とも言えない」が50%です。

○どういう時に、どういう人が参加するといいでしょうか?
 「視力低下の不安の強い 人、何か困ったことがある時、少し落ち着いた頃」。

○どういうテーマがよいですか?
 「ひとりになった時にどうしたらいいか」「毎日の生活の工夫」「視力が落ちて行く不安」「家族との葛藤」が上位、
 その他、「差別や偏見」「白杖が持てない」「冠婚葬祭の時の対処のしかた」「親や配偶者の介護」など、よく話題になるテーマです。

○家族を入れたグループセラピーの案が出ていますがどう思いますか?
 「家族も視覚障害が分かるので、あったほうがよい」1,2回参加組42%
 「家族が参加しないように思うから今のままでよい」よく参加する組33%

○まだ参加してない人に・・参加されないのはなぜですか?
 「まだ参加する気持ちになれない」「自分の気持ちが話せるかどうか心配」60% 

Ⅲ.グループセラピーのまとめ
 よく参加するAさんは、視力が落ちてくる不安を何回も何回も口に出し、好きなことを見つけ今の自分を受けとめ、全盲になられても落ち着いています。

 1.2回の参加のBさんは、まだ仲間との信頼関係ができていないので、本音が話せない、自慢話は聞かされる、足の確保も難しいなど、ある程度続けないと気持ちや情報の「わかちあい」までは到達しない。しかし、1,2回でも、『悩んでいたのは、自分一人ではない』ことが分かり、『視力が落ちて行く不安』『生活の工夫』など、グループセラピーは、継続してほしいと願っていますが、ご自分は「リハビリ外来」の先生方と話し合うほうが合っていると。

 Cさんも1,2回組みですが、オアシスの福祉機器普及係として、次の視覚障害者に教える、姉妹校にも行政への働きかけを呼び掛けるなど、「機器の使い方教室」で生き生きとしています。

 長年皆さんの傍にいる私は、『「人」は、語ること、弱さ、つらさを吐きだすことで、納得し強くなれる。聴くことにより、自分を、障害を、客観視でき、役に立つ情報を得、前向きな考え方に変化させていく』など、障害を受け容れるには、時間とお仲間の力は、大切な要素と感じています。
 グループセラピーの良い点は、前向きになれる。自分のことは自分で決める。変えられないことがあることが分かるなど。
 気をつけることは、どうしても、内側に向きがちです。新しい風、社会に働きかけること。そこだけで解決するのではなく、リハビリ外来や地域に繋がる必要性を痛感します。
 また、今後は、『家族』のグループセラピーや、家に閉じこもっている方へのアプローチの検討と、視力が低下していく方、困った時などに、なくなってはいけないのが、「リハビリ外来」・「オアシス」・「グループセラピー」だと思いました。活動の継続、広報のあり方を多くの皆さんと考えたいと思います。

Ⅳ.みえてきたこと
 メインの活動に、「パソコン・機器使い方教室」「白杖誘導歩行講習会」「調理・化粧教室」などがあります。誰もが「こころのケア」をしてもらっている感覚はなく、技術を学ぶ場として定着していますが、仲間が集まりお茶やおしゃべりができ、技術を学ぶ場が一緒にあることが、「こころのケア」として大きく貢献していると思いました。
 中途で障害者となり、言葉も失いかけた人たちが、自分を表現できる場があり、受け入れ難いことも、仲間と交ること、生活するための技術を学ぶことで、「こころ・からだ」が、強くなれます。「リハビリ外来」といろんな職種の人たちの支援を得ての『チーム医療』のお陰と思いました。
 最後に、参加した目の不自由な方にお聞きしました。「不自由・不便から得たものは?」そんなことあるわけがないと言いながら「人の気持ちが分かる」「家族の有難さ」「小さいことに感謝できる」「信頼できる仲間に出会えた」など・・「苦」を体験した人達の人間的『深さ』を垣間見た気がしました。
 どんなに科学が発達しても、「人と人との支え合い」により、絶望から「希望」が見える。相互扶助が「よりよく生きる」ための基本だと改めて感じさせていただきました。
 よき先生方とオアシスの仲間たち、支えて下さる多くの皆さん、発表の場を与えて下さった安藤先生に心から感謝申し上げます。

【略歴】
 1994年 「新潟県視覚障害者のリハビリテーションを推進する会」事務局
 1994年 信楽園病院「視覚障害リハビリテーション外来」スタッフ
 1995年 信楽園病院「視覚障害パソコン教室」スタッフ
 2000年 「いのちの電話」相談員認定 現在休部
 2005年 「NPO法人障害者自立支援センターオアシス」 理事・事務局
 2005年 信楽園病院移転のため活動場所を移動(有明児童センター2F)
       月2回「視覚障害リハビリテーション外来」スタッフ
       週4回「日常生活訓練センターオアシス」スタッフ
 現在に至る。

【後記】
 オアシスのアイドル、小島さんの講演に多くの方が集まりました。150回も続けているグループセラピー、、、、 お聞きしながら、多くの医療関係者に聞いて欲しいと思いました。 「こころのケア」から話が始まりました。
 ・受け入れ難い状況を受入れ、行動できる「力」を得るために出来ることは?
 ・舌は一枚だが耳は二つあるのだから、「語る」ことよりも「聴く」ことが大事。
 ・「不自由・不便」から得るものがあるはず。。。。
 ・医者が行うのは治療と説得、でも患者に必要なことは納得
 ・人は、大切なものを失った時、「言葉」も失い、言いだせない時がある
 ・医者は医学の力で病を治療するが、グループセラピーは自然治癒力を高める効果がある。どちらも必要、
「視力を失って得たものはありますか?」という小島さんの問いに答えてくれた皆さんの答えも印象的でした。
 ・真の友人を得た ・感謝の気持ちを持つことが出来た・・・・・・・ 

 最後にフリーアナウンサーの樋口幸子さんが登場して、皆で大きな声を出し朗読会を行いました。大きな声を出すと元気になれます。締めくくりは、素敵な詩「そのあと」(谷川俊太郎)を朗読してもらい参加者一同、感動しました。

 今回、改めて小島さんのお話を伺い、優しさ、ひたむきさに心が打たれました。益々の活躍を祈念致します。

 

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 附)「そのあと」谷川俊太郎

  そのあとがある

  大切なひとを失ったあと

  もうあとはないと思ったあと

  すべて終わったと知ったあとにも

  終わらないそのあとがある

 

  そのあとは一筋に

  霧の中へ消えている

  そのあとは限りなく

  青くひろがっている

 

  そのあとがある

  世界に そして

  ひとりひとりの心に

 http://homepage2.nifty.com/fruit~/sakuhin2013/sonoato/sonoato.html

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『NPO法人障害者自立支援センターオアシス』
 http://www.fsinet.or.jp/~aisuisin/

「グループセラピー」
 日時:第1土曜日 13時~15時まで
 場所: 有明児童センター2階相談室
 対象: 目の不自由な人と御家族
http://www.fsinet.or.jp/~aisuisin/serapy.html

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『済生会新潟第二病院 眼科勉強会』
 1996年(平成8年)6月から、毎月欠かさずに続けています。誰でも参加出来ます。話題は眼科のことに限らず、何でもありです。 参加者は毎回約20から30名くらいです。患者さん、市民の方、医者、看護師、病院スタッフ、学生、その他興味のある方が参加しています。
 眼科の外来で行いますから、せいぜい5m四方の狭い部屋で、寺子屋的な雰囲気を持った勉強会です。ゲストの方に約一時間お話して頂き、その後30分の意見交換があります。

   日時:毎月第2水曜日16:30~18:00(原則として)
   場所:済生会新潟第二病院眼科外来

*勉強会のこれまでの報告は、下記でご覧頂けます。

 1)ホームページ「すずらん」
  新潟市西蒲区の視覚に障がいのある人とボランティアで構成している音声パソコン教室ホームページ
  http://www11.ocn.ne.jp/~suzuran/saisei.html

 2)済生会新潟第二病院 ホームページ
  http://www.ngt.saiseikai.or.jp/02/ganka/index5.html

 3)安藤 伸朗 ホームページ
  http://andonoburo.net/

 

【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】

 平成25年8月7日(水)16:30 ~ 18:00 
  「楽しい外出をサポートします! ~『同行援護』その効果とは!?~」
     奥村 京子 (社会福祉法人新潟市社会福祉協議会)

 平成25年9月11日(水)16:30 ~ 18:00
  「言葉 ~伝える道具~」
     多和田 悟 (公益財団法人日本盲導犬協会 訓練技術担当理事)

 平成25年10月9日(水)16:30 ~ 18:00
  「眼科医として私だからできること」
     西田 朋美 
    (国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部 眼科医長)

 平成25年11月13日(水)16:30~18:00
   演題未定
     櫻井 浩治 (精神科医、新潟市)