歴代の日本ロービジョン学会理事長3名、および各地でロービジョンケアを実践している3名に講演して頂きました。各講師の講演が素晴らしく、充実した時を過ごすことが出来ました。
研究会には、新潟県内は言うに及ばず、全国(香川県・東京都・埼玉県・愛媛県・兵庫県・宮城県・茨城県・福島県・大阪府・滋賀県・奈良県・山形県・京都府・千葉県・岐阜県・神奈川県・和歌山県・福岡県・岡山県;参加申し込み順)から、約80名(医師・視能訓練士・教員・学生・心理カウンセラー・社会福祉士・ガイドヘルパー・市民の方々・当事者・家族等々)が参加し、「我が国のロービジョンケア 過去・現在・未来」をテーマに、大いに盛り上がりました。
後日、講演要約を報告する予定ですが、速報版として安藤のメモを基に報告します。
速報版『 新潟ロービジョン研究会2014】
日時:平成26年年9月27日(土) 14:00~18:40
会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
主催:済生会新潟第二病院眼科
1)特別講演
1.「日本におけるロービジョンケアの流れ1:日本ロービジョン学会の設立前」
田淵昭雄 (川崎医療福祉大学感覚矯正学科)
ロービジョンケア(LVケア)に眼科医が関与した歴史は、1929年に小柳美三東北大眼科教授がLV児の特殊教育の必要性を訴え、1933年に南山尋常小学校(東京麻布)に全国初の弱視学級が開設されたことに始まる。その後、原田政美・大山信郎、湖崎克らの眼科医が活躍したが、眼科医の関与が多いとは言えない。今後、ロービジョン学会を通して眼科医はもっと積極的に関わらなければならない。
2.「日本におけるロービジョンケアの流れ2:ロービジョンケアからロービジョンリハビリテーションへ-平成24年度診療報酬改定の意味するところ-」
高橋 広(北九州市立総合療育センター)
LVケアの必要性を始めて感じた患者との出会い。平成24年度診療報酬改定でLVケア検査判断料の成立までの獅子奮迅の活躍を披露。眼科医への期待は、「見える質の向上(QOV)」。眼科医は治すことが仕事で、福祉がケアを行うのか?LVケアは生活支援を目指す。当時、参考となる図書は少なく患者に学びばがらやってきた。支える仲間が重要。福祉と教育に繋げるのが眼科医の仕事。「眼科医が行うLVケアには、寄り添うLVケアと、背中を押すLVケア(=LVリハビリテーション)がある。
3.「本邦におけるロービジョンケアの課題と将来への展望」
加藤 聡(東京大学眼科准教授)
現理事長として、1)LV学会とは、2)LVケアを取り巻く課題、3)将来の展望を語る。ケアができなければ専門家でない。最新医療の研究と並行して行われていかなければ、最新治療により受けられる患者の恩恵は最小限のものになってしまう危険性がある。
2)シンポジウム「我が国のロービジョンケアを語ろう」
座長 仲泊 聡(国立障害者リハビリセンター病院)
安藤伸朗(済生会新潟第二病院)
1.「ロービジョン当事者として相談支援専門家として我が国のロービジョンケアの未来に対する夢を語る」
吉野由美子 (視覚障害リハビリテーション協会)
生い立ち・病気のこと・眼科医の言葉に対する感情(気持ち)を披露。「治ることは期待しないが、治療して欲しい」、「治る見込みのない障害者であっても治療の対象として診て欲しい」「視機能が向上しないと治療の意味がないのか?そんなことはない」「少なくても眼の状態について説明して欲しい」「最善の治療を受けているという確信がないとLVケアは受けられない」「主治医と専門家の連携を。よく話を聞いて欲しい」
2.「一眼科医としてロービジョンケアを考える」
八子恵子 (北福島医療センター)
眼科医として診療に携わる中で、必要と感じた(効果のあった)症例を提示し、「治療が必要がなくなった患者でもやるべきことはある」。「気が付くこと 何かを提案する 自分にもできることがあることを知る 出来ないことは他人に頼る」、、
3.「私たちの視覚障害リハビリテーション」
山田 幸男 (新潟県保健衛生センター;信楽園病院 内科)
これまで築いてこられたNPOオアシスの成り立ちを振り返り、多くの示唆に富む講演。内科医であるながらロービジョンケアに取り組んだと評価する方もいるが、内科医であればこその発想(体内時計/骨代謝等)は、かなり独創的でかつ先駆的な仕事。
糖尿病透析患者Oさんの失明したことによる自殺という事件を、このような形で乗り越えてた山田先生、新潟の誇り。
コメンテーター
田淵昭雄(初代日本ロービジョン学会理事長)
高橋 広(第2代日本ロービジョン学会理事長)
加藤 聡(第3代、現日本ロービジョン学会理事長)
3)結びの言葉
仲泊聡 (国立障害者リハビリテーションセンター病院)
1964年(昭和39年)世界盲人福祉協議会ニューヨーク大会「盲人の人間宣言」、2008年(平成20年)国際連合総会「障害者の権利に関する条約」、わが国でも、2014年(平成26年)1月、障害者権利条約を批准等々歴史的な背景から、現在改革が行われている。