第22回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 講演要旨
【シンポジウム】 『視覚障がい者の就労支援』
星野 恵美子 (司会:新潟医療福祉大学)
小島 紀代子 (NPO障害者自立支援センターオアシス)
清水 晃 (新潟県上越市)
今野 靖 (新潟公共職業安定所)
工藤 正一 (NPO法人タートル)
平成25年6月23日(日)
チサンホテル&カンファレンスセンター新潟 越後の間
【講演要旨】
障がい者にも、健常者にも、就労(働くこと)は、その経済面での保障や社会的、自尊感情のために重要である。就労支援においては、その障害特有の解決を要する課題がある。今回のシンポジウムでは、視覚障がい者が働く現状と課題を明らかにしその支援策等について検討し、今後に生かすことが今回のシンポの目的であった。 実践・体験豊かなシンポジストに恵まれたおかげで、実り大きいシンポとなった。就労支援の成功の鍵としては、当事者の相談をして、心を支えつつ職業能力を高め、各種の専門家が適切に連携して問題解決を図ることが効果的である。
以下に各領域のシンポジストの発言を振り返る。
1.視覚障害者を取り巻く現状と課題 相談支援する立場から
小島 紀代子 (NPO障害者自立支援センターオアシス)
NPO法人オアシスでは調理、歩行、化粧等の日常生活訓練や、パソコン、拡大読書器の使用や福祉制度の紹介を行う。また、多くの方の相談に当たり、グループセラピーを通して心のケアに力を注いでいる。 相談事例の調査報告から、中途障害によるシニア層で離職の理由は、文字の読み書きの困難や夕方からの歩行が難しく、残業や仕事ができないと思い退職。また若い世代では、運転が困難になり仕事に支障、世間の目が重圧になり白杖が持てない、盲学校という選択肢を断念する。いずれの世代でも離職後相談に訪れるため、打つ手が限定される傾向にある。一方、就労した人は早くに助けを求め、辛い時に相談し、就労に必要な各種技能を訓練し取得したり、多様な専門職とのチーム医療に支えられて就労にこぎつける。
2.当事者の立場で
清水 晃 (上越市役所勤務)
仕事を持つ意味は人生にとって大事な自分自身の存在を守るための仕事の選択がある。再就職へ向けてのアクションとしては、サポート体制の構築や就労支援制度に関する情報を整理し、自己分析作業が大切である。まとめとして、病状悪化に伴い、様々な苦労をしたが、現在は自身のサポート体制が整っているため、将来的な不安は少ない。今後、さらなる病状悪化が予想されるが、連携を図りながら、就労継続や自己能力開発に努めていきたい
3.ハローワーク新潟における視覚障がい者の就労支援
今野 靖 (新潟公共職業安定所)
職業リハビリテーションの目的は、求職者が職業を通じて、社会人として生活できるように支援する。就職準備から職場定着までのチーム支援によるサポートが重要である。 視覚障がい者(応募者側から)の採用・就労継続のポイントとしては、 (1)正確な自己分析(能力・キャリア・障がい特性)に基づく応募先の選択、 (2)就職活動ノウハウを基本とした効果的な実践(自己PR,アピール)、 (3)本人のニーズと適性に合った紹介と企業への面接・採用の働き掛け、(4)通勤面、職場内での職業生活のクリア及び職務遂行能力の確保、 (5)助成金・支援メニュー、支援機器等を活用した課題・問題解決が重要である。
4.「視覚障害者の就労支援と今後の課題」
工藤 正一 (NPO法人タートル)
中途で視覚障害者となっても、いかにすれば、働き続けられるか。 事例からみた就労成功の条件とは、①障害の受容と前向きな姿勢 ②ロービジョンケアを踏まえた関係者との連携、③PC操作技術の習得と歩行訓練による通勤の安全、④職場の理解・協力、⑤各種支援制度の活用である。また、職場復帰や雇用継続の判断には産業医の意見が重要で、産業医が眼科医と連携し保有視機能の状態と配慮事項等の情報の共有することで、適切な支援・雇用管理が可能となる。また、雇用継続のためには、・障害受容と心のケア、生活面と職業面の問題の解決、受障初期の眼科医療からの連携が必要である。
今後の課題として、視覚障害があっても働き続けられるように、①在職者訓練等、職業訓練機会の保障、②視覚障害者に対応できるジョブコーチの養成、③歩行訓練と職業訓練の人材の養成及び障害者支援体制の整備として、④ロービジョンケアと産業医との連携、⑤視覚障害の正しい理解と合理的配慮の検討が望まれる。