『小児眼科のロービジョンケア』
佐藤 美保 (浜松医科大学)
シンポジウム「サブスペシャリティーからのロービジョンケアの展望」
2013年10月12日 第14回 日本ロービジョン学会学術総会(倉敷)
【講演要旨】
小児眼科外来は、小児の良好な視力発達を目標として治療を行っているが、重度の先天性眼疾患をもって生まれた児や、未熟児網膜症などで、改善の期待できない重度の視覚障害をもつ児に対して、その家族も含めたロービジョンケアを行うことは重要な役目である。
浜松医科大学付属病院では視覚障害のある小児を対象とした療育相談を行っている。そのなかでも3歳以下を早期療育相談として、視覚支援校と早期に繋がりをもたせる試みを行っている。早期療育相談の流れは、重篤な視力障害を持つ乳幼児が受診した場合に、院内早期療育相談の存在を養育者に伝える。養育者が相談を希望した場合には、ロービジョン外来担当の視能訓練士が窓口となって、視覚支援校の乳幼児発達支援指導員と連絡をとる。院内早期療育相談は、視覚支援校の教員が大学病院の外来を訪問する。初めに眼科医、視能訓練士が同席して、病状を保護者と教員に説明するとともに児の眼症状をいっしょに確認する。その後、教員が乳幼児の行動を観察しながら、育児支援、発達支援、情報提供などを保護者に対して行う。院内早期療育相談終了後、保護者からの希望があれば視覚支援校を訪問しての教育相談に繋げていく。
低視力の原因は、黄斑低形成、未熟児網膜症、第一次硝子体過形成遺残、眼白子症、先天白内障 先天小瞳孔、視神経異常、網膜色素変性症、緑内障 強角膜症などである。視力は0.1以上のものもいたが、ほとんどは0.1以下であった。そして、相談を受けた養育者の多くは、引き続き視覚支援校との連絡をとり視覚支援校幼稚部への進学を選択するものが多くみられた。
生まれてきたばかりの赤ちゃんが、生涯視力に問題を抱えていきていくという事実を受けいれることは容易なことではない。医師の役目は正しい診断をくだし、治療可能なものにたいしては全力で治療にあたるが、そうでない場合には予後を判断したうえで正直に事実を伝えることである。予後の判断が即座にできない疾患に関しては継続的なフォローをしながら必要な情報を提供していく。ときには悲観的な説明ばかりではなく、児が成人となる20年後の未来の医療への希望へとつなぐ説明を行うことも必要である。養育者は子育てに悩みながら相談できる場所をさがしているため、早期療育相談を通して医療と教育、福祉をうまくつないでいくことが重要と考える。
【略 歴】 2013年7月1日現在
1986年 名古屋大学医学部卒業
1992年 名古屋大学医学部大学院外科系眼科学満了
1992年 学位取得
1993年 名古屋大学眼科学助手
1993年9月-1995年3月 米国Indiana 大学小児眼科斜視部門留学
1997年7月 名古屋大学眼科学講師
2002年7月 浜松医科大学医学部眼科学助教授(准教授)
2011年1月1日浜松医科大学医学部病院教授
現在に至る
第12回国際斜視学会(ISA 2014;京都) 会長(予定)
2014年12月1日(月)~12月4日(木)
http://www.isa2014.jp/index.html
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第14回日本ロービジョン学会学術総会
シンポジウム2「サブスペシャリティーからのロービジョンケアの展望」
日時:2013年10月12日(土)16:20~17:50
会場:第1会場(倉敷市芸文館 メインホール)
オーガナイザー:安藤 伸朗(済生会新潟第二病院)
佐藤 美保(浜松医科大学)
演者:門之園 一明(横浜市大医療センター)
佐藤 美保(浜松医科大学)
若倉 雅登(井上眼科)
根岸 一乃(慶応義塾大学)
栗本 康夫(神戸市立医療センター中央市民病院)
安藤 伸朗(済生会新潟第二病院)
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