「学問はしたくはないけれど・・」 加藤 聡(東京大学眼科准教授)
「摩訶まか緑内障」 木内良明(広島大学眼科教授)
日時:2014年7月6日(日)
開場9時30分 講演会10時~13時
各演題:講演1時間・質疑応答30分
会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
済生会新潟第二病院眼科では2010年2月「学問のすすめ」講演会を開始しました。今回で9回目になります。困難な状況にある医療の世界ですが、そこを打破できるのはリサーチマインドを持った若手医師です。そこで若い医師とそれを支える指導者に、夢と希望を持って学問、あるいは臨床に励んでもらうことを目的に始めた講演会です。
演者の先生には、ご自身の研究テーマを中心に、若い人へのメッセージを添えて、これまでの学究生活について自叙伝風に語って頂きます。どなたでも参加できます。
第9回講演会は、木内良明(広島大学眼科教授)と加藤 聡先生(東京大学眼科准教授)に講師をお願いしました。今回は、加藤聡先生の略歴と抄録を紹介します。
主催:済生会新潟第二病院 眼科
======================
演題: 「学問はしたくはないけれど・・」
講師: 加藤 聡(東京大学眼科准教授)
【抄録】
振り返るに私は、今まで学問をしたいなどと思ったことはなかったが、「知りたいとか、その知ったことを広めたい」と思う気持ちは強く持っていた。
新潟大学を卒業して、東京大学眼科に入局し、研修医2年目の頃、おぼつかない白内障手術(水晶体嚢外摘出術)を行うも、糖尿病眼では術後に炎症が強く出てしまい、眼底管理の上で妨げとなる虹彩後癒着を作ることがしばしばあった。その原因を知りたく、ちょうどその頃開発されたフレアメータにて炎症を定量化し、また電子顕微鏡による研究でその原因を探ることができた。
それがきっかけで糖尿病の眼の合併症、通常の人ならば網膜症に興味を持つところだが、私はもっぱら前眼部の病変に取り組むことになった。女子医大の糖尿病センターに勤務先が異動になり、朝から晩まで網膜光凝固に明けくれる日々のなか、糖尿病眼の白内障術後眼では前嚢収縮や後発白内障が網膜光凝固の妨げとなることを多く経験した。白内障術者にそのことを話してもYAGレーザーで解決されることなので、臨床的に問題ないと相手にしてもらえなかった。
そこで、そのことを訴えるために後発白内障を定量化する方法を学んだが、その頃の日本ではSheimpflugカメラを用いた方法が主流で、周辺部の後発白内障の定量が行えなかった。そこで、それを学びに世界で初めて眼内レンズ移植が行われたロンドンのSt Thomas hospital に行き、その後の後発白内障を少なくなるための眼内レンズ、手術法の研究を行うことができた。
その後、日本に戻り、東大病院に勤務するようになり、多くの増殖糖尿病網膜症症例の手術を見る機会があったが、中には充分な結果が得られない症例があった。その症例をさかのぼってみてみると、中には充分な光凝固の効果が得られていない例に遭遇することもあった。どんな上手な術者よりも適切な網膜光凝固が失明から救うことが明かであったため、そこからは、研究というよりも網膜光凝固教育に力を入れるようになった。
そのほかに、医学教育改革やロービジョンケアなど、学問ではないが、言いたいことだけは一杯あるのが現状である。
【略歴】 加藤 聡 (カトウ サトシ)
1987年 新潟大学医学部医学科卒業
東京大学医学部附属病院眼科入局
1990年 東京逓信病院眼科
1996年 東京女子医科大学糖尿病センター眼科講師
1999年 東京大学医学部附属病院分院眼科講師
2000年 King’s College London, St. Thomas’ Hospital研究員
2001年 東京大学医学部眼科講師
2007年 東京大学医学部眼科准教授
2013年 日本ロービジョン学会理事長
2014年 東大病院眼科科長兼任
現在に至る
======================
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」の意味
福沢諭吉の「学問のすすめ」の一説としてあまりに有名ですが、本当に意味するところは以下の通り
人は生まれながら貴賎上下の差別ない。けれども今広くこの人間世界を見渡すと、賢い人愚かな人貧乏な人金持ちの人身分の高い人低い人とある。その違いは何だろう?。それは甚だ明らかだ。賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとに由ってできるものなのだ。人は生まれながらにして貴賎上下の別はないけれどただ学問を勤めて物事をよく知るものは貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるのだ。
======================
これまでの「学問のすすめ」プログラム
http://andonoburo.net/on/2661