報告 第121回(06‐04月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 遁所直樹
2006年4月28日

 演題:『なぜ生まれる無年金障害者』 
 講師:遁所直樹 
          NPO法人自立生活センター新潟 副理事長
          新潟学生無年金障害者の会 代表
    (「生活できる真の国民皆年金制度」の確立をめざしています)
  日時:平成18年3月8日(水) 15:00~16:30
  場所:済生会新潟第二病院 眼科外来 



【講演要旨】
 「一番いいたいことは、ただの一点『国民年金を払いましょう』ということです」、と話し始めた。はじめに言葉の解説。「任意加入」「免除」「猶予制度」「裁定請求」「棄却」と「却下」「再審査請求」、、、、。正直、なかなか難しい。実際裁判では、日本語なのに判らない言葉でやり取りされるという。 

 年金制度は、複雑である。その詳細を国は国民に判り易く伝えてくれているだろうか? 学生無年金障害の訴えた当初、誹謗中傷があった。「金を支払ってないのだから、年金をもらえないのは当然。そんなに金が欲しいか!」 でも、、、障害者が障害年金をもらって何が悪い、我々は困っているんだから助けて欲しい、助けてもらえれば我々にだって出来ることがある。全国に12万人の「無年金障害者」がいるが、「学生無年金障害者」は4000人、そのうち裁判闘争をしているのは30人。当事者は、嘆きの声を出さないと、世間の人には判ってもらえない。理屈は弁護士さんが作ってくれる。

 「負けて勝つ」ということがある。国を相手にする社会保障の裁判は、裁判では負ける。でもその後に制度は変わる。ところが東京地裁で、原告が勝訴してしまった。年金を受け取れない人たちを放置してきたのは国の責任であることを認めた画期的な判決であった。裁判官が神様のように神々しく見えた。東京・新潟・広島は、地裁で勝訴、高裁で敗訴。現在は最高裁で争っている(*ただし勝訴というのは、原告の言い分が少しでも認められた判決のこと)。

 東京地方裁判所で勝訴判決を言い渡した藤山裁判官は、印象深い。原告や、弁護士だけが頑張っていても裁判官の心を動かさなければ判決は勝訴とならない。しかし、国相手の裁判の場合、なかなか裁判官の心を動かすことが難しい。原告の口述の機会を与えることはもちろん、今回の勝訴につながった要因は、藤山裁判官が感性が豊かであったことでった。困っている人に対して、真剣に耳を傾け、相手の心を思いやり一緒に考えることのできる方だった。新潟地方裁判所の犬飼裁判官、広島地方裁判所の裁判官もそのような方だった。どんな制度にも「間(はざま)」がある。全ての人にセーフティーネットを用意し、安心して暮らせる日本にして欲しいというのが願いである。

 『国民年金を払いましょう』、そして『もらう権利』を主張しましょう!!

【追 記】
 「我々は困っているんだから助けて欲しい」「当事者は、嘆きの声を出さないと、世間の人には判ってもらえない」「理屈は弁護士さんが作ってくれる」「負けて勝つ」等々のフレーズは印象に残りました。 「全ての人にセーフティーネットを用意し、安心して暮らせる日本にして欲しい」という遁所さんの主張は、正論だと思いました。 

 以下、年金について、少しネットで調べてみました。
****************************
《社会保険庁ホームページ》
年金の基礎知識やQ&A、相談窓口の案内
http://www.sia.go.jp/ 

《無年金障害者の会》 
http://www7.plala.or.jp/munenkin/munenkin-f.html
 病気や事故などで心身に重い障害を負ったのに、年金制度の不備などで、障害基礎年金が受けられない。 こんな私たち無年金障害者の実情を知って欲しい、そして何らかの救済の手をさしのべて欲しいと、平成元年(1989年) 「無年金障害者の会」を結成しました。 本会は、年金制度の谷間で障害基礎年金が支給されない無年金障害者の救済を求めて運動を行っています。合わせて安心して暮らせる年金制度の確立を求めています。

[無年金障害者の発生する理由]
 学生無年金障害者~20歳を過ぎた学生で国民年金に任意加入していなかった
 主婦無年金障害者~サラリーマンの妻で国民年金に加入していなかった 
 
在日外国人無年金障害者~在日外国人で国籍条項により国民年金に加入できなかった
 滞納無年金障害者~経済的理由により国民年金保険料を滞納した
 無年金障害者~その他障害状態が軽いと評価されたために無年金になった 

 「皆年金」と言いながら全国で12万人の無年金障害者がいると言われています。何故こんなに無年金障害者が生まれたのでしょう…?それは国民年金制度に欠陥があったからです。しかも、その欠陥を判っていながらこの制度をスタートさせたとすれば、それは大きな問題ではないでしょうか?年金というと「老齢年金」を思い浮かべるでしょうが「遺族年金」「障害基礎年金」もあります。皆さまにとって決して人事ではないこの問題!この問題を1人でも多くの方に知って頂きたく思っています。 

[年金制度の欠陥]    
  外国人の場合~1982年(昭和57年)の法改正前は、国籍条項があり、在日外国人ついては国民年金に入ることができませんでした。     
 
主婦の場合~1985年(昭和60年)の法改正前は、厚生年金加入者の配偶者(サラリーマンの妻)は、国民年金に加入しなくてもよいとされていました。
  学生の場合~1989年(平成元年)の法改正前までは、学生や専門学校生については、国民年金に加入しなくてもよいとされていました。
 主婦や学生を国民年金制度から除外したのは、主婦や学生には収入が無いため保険料が納められないからということが理由の一つでした。実際にも、主婦は夫の収入で生活をし、老後も夫の年金で生活をするであろうから、主婦自身に独自の年金はいらないと考えられ、学生については何年かすれば卒業して就職したときに厚生年金等に加入するから問題ないと考えられていました。

 このように国民年金制度から除外されている間に、不幸にも病気や事故で障害を負った場合、その人は一生涯にわたって障害基礎年金を受けることができないのです。