速報『第244回(16-06)済生会新潟第二病院眼科勉強会 加藤功』
2016年6月9日

速報 第244回(16-06)済生会新潟第二病院眼科勉強会 
  演題:「水枯れの大河 信濃川・千曲川に鮭の道を拓く」
  講師:加藤功(NPO法人新潟水辺の会)
 日時:平成28年06月08日(水)16:30 ~ 18:00
 場所:済生会新潟第二病院 眼科外来

 平成8年6月に始めた当勉強会、今回で20周年を迎えました。加藤功さんの講演が素晴らしく、いい記念になりました。

 信濃川のこと。千曲川のこと・鮭の遡上のこと、、、知らないことばかりでした。冒頭の言葉は、重みがありました。
●「かつて、人は川で魚や蟹などを採り、川から引いた水で田を耕して米を作り日々の糧としてきた。川は人々の生活を支え、そこに生まれた知恵や文化は長く受け継がれてきた。まさに、山河が人々の生活の源であった。」
●「明治以降近代技術の発展によって、川の水の利用範囲は広がり、飲料水・農業用水だけでなく、工業用水・発電用水として利用されるようになり、私たちはその恵みを一方的に享受するのみで、川や水を省みることのない生活に慣れ、川の自然環境や川文化が破壊されるのを傍観し続けてきた。」

 金言が満載の講演でした。「採れるだけではなく、必要なものだけ採る」「足るを知る」「「鮭が海の栄養を山に運ぶ」「鮭文化」「稚魚放流は無償の行為」、、、、、、、鮭の遡上が年々減っきていること、水力発電は安全な電力を提供してくれると単純に信じていたのですが、川の自然や鮭の遡上に大きな影響のあること、稚魚の放流を行っている団体があちこちにあること、少しずつ鮭の遡上が増えてきていること、ダムの放水の工夫により鮭の遡上に効果を上げることが出来ること等々、沢山の学びがありました。何よりもこんな活動を地道に行っているグループがあることを知ることが出来、感謝する次第です。
 頂いた抄録の最後に以下の様な記載がありました。「当会は鮭を遡上される団体ではなく、鮭を河川環境回復の指標とし、信濃川・千曲川での生物循環経路を将来にわたり、持続可能な環境での復元を願っている。」 今、改めて新潟水辺の会のHPやFBを拝見して感動しています。
 http://niigata-mizubenokai.org/
 https://www.facebook.com/niigatamizubenokai/

————————————————————————-

【講演抄録】
演題:「水枯れの大河 信濃川・千曲川に鮭の道を拓く」
講師:加藤功(NPO法人新潟水辺の会)
◆信濃川と鮭
信濃川は、甲斐(山梨)、武蔵(埼玉)、信州(長野) 3県境に位置する甲武信岳(2,475m)に源流を発する流路延長367km、年間流量160億m3/s、流域面積11,900km2 を有するわが国を代表する河川である。
上流部長野県内では千曲川と呼び、新潟県では信濃川と呼ばれ、平安時代以降わが国屈指の鮭の生産地として知られ、河口から300km上流の長野県松本や上田まで、秋になると数万尾の鮭が遡上する自然豊かな河川であった。平安初期に書かれた「延喜式」には、信濃国より大和朝廷への鮭の献上記録が多く残されている。
昭和10年代に始まった国策の電源開発により信濃川や千曲川での大規模なダム建設が始まると、ダムの落差による減水区間と無水区間が発生し、信濃川中流域より上流に鮭の姿が消えた。これは生態系や河川環境の保護より、経済やインフラを優先した結果であった。

◆水害と川の恵み、そして食文化
「鮭」は、全国的に「鰤(ぶり)」と並ぶ“年取り魚・食文化”であり、西の「鰤文化圏」に対して、越後以北を「鮭文化圏」と称し、かつてどこの河川でも鮭が遡上していた。流域に住む人々は、遡上する鮭や鱒などの魚を食べ、川と密接な関わりを持っていた。
しかし川は、水害というものを同時に抱えている。経済の発展とともに人々は川に背を向けるようになり、「良い子は川で遊ばない」の看板や川の災害については人が語るが、自然と人間の付き合い方や折り合いについて考えることが無くなっている。

◆鮭の稚魚放流
大河・信濃川・千曲川水系で、産卵・孵化した鮭の稚魚が安全に日本海まで降り、3~4年後に太平洋で育った成魚が再び河口新潟から長野まで遡上できるかつての河川環境を夢見て、新潟水辺の会は10年前より活動を始めた。
なぜ鮭が遡上出来ないかなどの問題点を調査すると共に、千曲川へ鮭を戻すため、地球環境基金、三井物産環境基金の助成支援を受けて、9年間で190万尾の稚魚を、千曲川・信濃川に放流してきた。

◆65年振りの鮭のヤナ落ち
鮭稚魚放流を始めて3年目の平成22年10月20日、実に65年振りに信濃川の河口より254km上流の上田市の千曲川にある中山ヤナに、体長60 cm、体重1.6 kgのメス鮭が落ちた。(ヤナ場に魚がかか 
ることを上田では「ヤナ落ち」と言う)2年後の平成24年11月13日、同じヤナ場に体長56 cm、体重1.7kgのオス鮭が落ちた。
その後、2016年11月25日から12月3日にかけ立て続けに5尾の鮭がヤナに落ち、連日新聞・テレビで取り上げられた。5尾ヤナ落ちしたことはその数倍の鮭が千曲川へ遡ってきたことを意味している。

◆レッドマウス病の発生、鮭の稚魚偶然の発見
2015年2月上旬、石川県で国が魚類の特定疾患に指定しているレッドマウス病が国内で初めて発見された。この病気は、①人には感染しない、②死亡率は、急性型で30~70%、③発生水温は13℃以上で、ほとんど全ての鮭科魚類(ニジマス、イワナを含む)に感染する特徴がある。
長野県は海なし県である為漁業は、河川と養魚場の魚をメインとしている。その為長野県より稚魚放流の自粛要請があり、2016年春の稚魚放流を中止した。
そんな中の2016年2月、千曲川の中流部において鮭の稚魚1尾が偶然発見された。私たちのこれまでに稚魚放流した鮭が大きくなり、故郷の千曲川に戻ってきたことを意味している。

◆発眼卵の河床埋設放流
当会は鮭を遡上される団体ではなく、鮭を河川環境回復の指標とし、信濃川・千曲川での生物循環経路を将来にわたり、持続可能な環境での復元を願っている。
これまで信濃川の支川・能代川に遡上した鮭を採卵、人工ふ化させ大きくなった稚魚を千曲川へ放流することで千曲川への鮭の回帰を目指してきた。
今後は人工ふ化放流に頼るだけでなく、鮭の発眼卵の河床埋設による自然孵化の定着を図る。これにより信濃川を、生物の豊かに生存する普通の河川に戻すことの一環であると考えている。

==========================================
==========================================

【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】
平成28年07月06日 (水)16:30 ~ 17:30
 第245回(16-07)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  新潟盲学校弁論大会 イン 済生会
 @第1水曜日です

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
平成28年07月17日(日) シンポジウム「病とともに生きる」
 開場: 9時30分 講演会10時~13時
 会場:「有壬記念館」(新潟大学医学部同窓会館)
 http://andonoburo.net/on/4424
コーディネーター
 曽根 博仁(新潟大学医学部 血液・内分泌・代謝内科;教授)
 安藤 伸朗(済生会新潟第二病院 眼科部長)
基調講演 (30分)
 大森 安恵(海老名総合病院・糖尿病センター;内科医、
  東京女子医大名誉教授、元東京女子医大糖尿病センター長)
 「糖尿病と向き合うー私の歩いた一筋の道ー」
 http://andonoburo.net/on/4450
パネリスト (各25分)
 南 昌江 (南昌江内科クリニック;内科医)
  「糖尿病を通して開けた人生」
  http://andonoburo.net/on/4462
 小川 弓子(福岡市立西部療育センター センター長;小児科医)
  「母として医師として~視覚障害の息子と共に~」
  http://andonoburo.net/on/4478
 清水 朋美(国立障害者リハセンター病院第二診療部 眼科医長)
  「オンリーワンの眼科医を目指して」
  http://andonoburo.net/on/4491
 立神 粧子(フェリス女学院大学音楽学部・大学院 音楽研究科教授)
  「続・高次脳機能障害というエベレストに登る~作戦を立ててがんばる~」
  http://andonoburo.net/on/4495
ディスカッション (50分)
 演者間、会場を含めた討論
13時 終了
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

平成28年08月10日(水)16:30 ~ 18:00
 第246回(16-08)済生会新潟第二病院眼科勉強会
 「京都ライトハウス創立者・鳥居篤治郎が抱いた絶望と希望とは」
  岸 博実(京都府宇治市)

平成28年09月14日(水)16:30 ~ 18:00
 第247回(16-09)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  林 豊彦(新潟大学工学部教授/新潟市障がい者ITサポートセンター長)

平成28年10月12日(水)16:30 ~ 18:00
 第248回(16-10)済生会新潟第二病院眼科勉強会
 (目の愛護デー講演会)
  演題未定
  大野建治(神奈川県:眼科医)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『新潟ロービジョン研究会2016』
  日時:平成28年10月23日(日)
    開場:8時45分 研究会:9時00分~13時30分
  場所:有壬記念館2階会議室(新潟大学医学部同窓会館)
    新潟市中央区旭町通1-757 TEL. 025-227-2037
  主催:済生会新潟第二病院眼科
  参加無料/要事前登録
  http://andonoburo.net/on/4716

1.9:00~9:05
 はじめに
  安藤伸朗(済生会新潟第二病院;眼科医)
2.9:05~10:35
【第1部 連携を求めて】
 座長:仲泊 聡(神戸理化学研究所;眼科医)
    安藤伸朗(済生会新潟第二病院;眼科医)
1-1) 20分
 看護師が関わると、こんなに変わるロービジョンケア
  橋本伸子(しらお眼科;石川県白山市、看護師)
1-2) 20分
 情報障害に情報保障の光を、患者に学ぶビジョンケア
  三宅 琢(Studio Gift Hands;眼科医)
1-基調講演)30分
 視覚リハビリを新潟で育んで(予定)
  山田幸男(NPOオアシス:内科医)

 質疑応答 20分

3.10:35~10:45  コーヒーブレイク

4.10:45~12:35
【第2部 眼科医療と視覚リハビリ】
 座長:加藤 聡(ロービジョン学会理事長:東京大学、眼科医)
    安藤伸朗(済生会新潟第二病院;眼科医)
2-基調講演)30分
 最大のロービジョン対策は予防と治療:私の緑内障との闘い(予定)
  岩瀬愛子(たじみ岩瀬眼科;岐阜県多治見市、眼科医)
2-1) 20分
 新潟県の訓矇・盲唖学校設立に尽力した眼科医
  小西 明(済生会新潟第二病院医療福祉相談室、前新潟盲学校長)
2-2) 20分
 我が国初の眼科リハビリテーションクリニック(順天堂大学)
 ー開設当時を振り返ってー
  佐渡一成(さど眼科;仙台市、眼科医)
2-3) 20分
 眼科医・原田政美の障害者福祉理念と功績
  香川スミ子(元 浦和大学)

 質疑応答 20分

5.12:35~13;25
 【第3部 熊本地震を考える】(予定)

6.13:25~
 おわりに
  仲泊 聡(神戸理化学研究所;眼科医)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


平成28年11月09日(水)16:30 ~ 18:00
 第249回(16-11)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  青木 学(新潟市市会議員)

平成28年12月14日(水)16:30 ~ 18:00
 第250回(16-12)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  清水美知子(フリーランスの歩行訓練士)

平成29年01月11日(水)16:30 ~ 18:00
 第251回(17-01)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演者未定

平成29年02月08日(水)16:30 ~ 18:00
 第252回(17-02)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  宮坂道夫(新潟大学医学部教授)

平成29年03月08日(水)16:30 ~ 18:00
 第253回(17-03)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
   栗原 隆(新潟大学人文学部教授)