案内 第2回【なでしこ会】 (済生会新潟第二病院眼科 病診連携の会)
2016年9月2日

 「なでしこ会」(済生会新潟第二病院眼科 病診連携の会)を行います。
 白内障や網膜剥離・眼底疾患を中心に、いつも多くの患者を紹介して頂いておりますが、時に興味深いケースもあります。そこで県内外の専門の先生に協力して頂き、症例検討を中心に病診連携の会を開催することに致しました。開業医の先生方や大学の先生や研修医、眼科に限らず医師や医療関係者であればどなたでも参加することの出来る会です。堅苦しくなく、しかも勉強になる検討会にしたいと思います。 
 今回は、糖尿病網膜症をテーマに、眼科と内科の両面から討論してみたいと思います。ご存じの通り、我が国における視覚障害の原因として糖尿病網膜症は代表的な疾患の一つです。眼科では長い間、網膜症による視覚障害との戦いがあり、網膜光凝固・硝子体手術・薬物(抗VEGF)等々、年々進歩してきています。一方内科でも急増する糖尿病患者に対する治療は、1921年インスリンの発見を契機に進み、殊に近年はインクレチン製剤、SGLT2阻害剤等々糖尿病治療が年々進歩してきています。眼科・内科での糖尿病網膜症に対する治療の現状を語り、皆様からの疑問にお答えし、討論したいと思います。
 期待してご参加下さい。
 

【第2回なでしこ会】 済生会新潟第二病院眼科 病診連携の会
 日時:2016年9月13日(火) 19:00~21:00
 会場:ホテルオークラ新潟 5階メイフェア
 テーマ:「糖尿病網膜症の管理」
  総合座長 安藤伸朗(済生会新潟第二病院 眼科部長)
  1.眼科から 安藤伸朗(済生会新潟第二病院眼科)
  2.内科から 津田晶子(木戸病院内科)
 共催:済生会新潟第二病院眼科
    ノバルティス  ファーマ㈱ 

 お弁当を用意致します。 

当日参加もOKですが、準備の都合上事前連絡を頂けると嬉しいです。
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【事前登録】第2回なでしこ会(済生会新潟第二病院眼科病診連携の会)
 (参加する 参加しない)
   氏名
   所属の病院・医院
   専門診療科 〜 眼科・内科・小児科・その他
   メールアドレス
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@「なでしこ会」命名の由来
 大正1年以来、撫子(なでしこ)は済生会の紋章として用いられています。
 http://www.saiseikai.or.jp/about/reason/

 

講演1 座長 中村裕介(済生会新潟第二病院 眼科)
 演 題:糖尿病網膜症治療の変遷と最近の話題
 講 師:安藤伸朗(済生会新潟第二病院 眼科)
【抄 録】
 糖尿病網膜症による視覚障害との戦いは、これまで長い間続いている。
1.眼科の糖尿病網膜症治療の歴史
 近代眼科学の発展は、1851年Helmholtzの検眼鏡開発に始まる。その後眼科学は飛躍的に発展した。1869年糖尿病網膜炎の報告、1956年キセノン光凝固、1961年 螢光眼底撮影開発、日本臨床眼科学会GD「糖尿病網膜症」設立、1971年硝子体手術、1976年日本初の硝子体手術と続く。 

2.眼科医になってから40年間 第一線での糖尿病網膜症との戦い
 私の父も眼科医であるが、昭和30年代から40年代前半までは、視覚障害を来す疾患の中で、糖尿病網膜症はそれほど重要な疾患とは認識されていなかったという。しかし私が1977年(昭和52年)新潟大学医学部を卒業し、眼科医になった頃は、糖尿病網膜症は我が国における視覚障害を来す代表的な疾患であった。眼科医になっても全身的な疾患と関わっていたいという思いもあり、1979年より新潟大学眼科で糖尿病外来を担当した。当時の網膜症外来では蛍光眼底撮影と光凝固(当初はキセノン凝固、その後アルゴンレーザー凝固)の日々であった。

 1980年ごろからは、硝子体手術に取り組んだ。当時は手術器具も稚拙で、術中術後合併症が多く、手術時間も2~3時間を超えることもしばしばであった。少しずつ成功例を増やし、硝子体手術症例が1500例を超えた1991年、米国Duke大学に留学(血液眼関門の研究)。わずか1年の留学であったが、Machemerらの手術を毎週見学し、術後回診にも参加することができた。

 糖尿病網膜症に関する医学の進歩は著しく、1991年OCT 開発、1994年糖尿病網膜症の発症進展にVEGF(血管内皮細胞増殖因子)の関与が明らかになり、糖尿病網膜症の治療に抗VEGFの効果が明らかになった。1995年に糖尿病眼学会設立、1996年私は大学での18年9か月の大学で生活を経て、済生会新潟第二病院に就職し今日まで20年6か月を超えるに至っている。 

3.糖尿病網膜症治療の話題の変遷
 我が国の眼科における糖尿病網膜症に関する研究の動向を知るため、毎年秋に開催される日本臨床眼科学会における一般講演・学術展示の演題を1995年より10年毎に調べた。糖尿病網膜症に関する演題は、1995年25題、2005年30題、2015年23題であった。主な演題の内容は、1995年:増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術、2005年:糖尿病黄斑症に対する硝子体手術、2015年:糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF療法と変遷してきた。 

4.今日的課題
 2014年日本で認可された抗VEGF療法は、糖尿病網膜症治療を一変させたが、多くの問題を抱えている。抗VEGFの適正な使用法を含め、新しい治療法の確立が今後の課題である。 

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講演2 座長 安藤伸朗(済生会新潟第二病院 眼科部長)
 演 題:内科医からみた糖尿病治療と網膜症治療の進歩と課題
 講 師:津田晶子(木戸病院 内科)
【抄 録】
 1982年、新潟大学病院通院中の1型糖尿病患者さんの網膜症は直線的な進行が認められていました。インスリン強化療法や汎網膜光凝固療法などが始まったばかりの頃です。「これではいけない」と1981年、新潟でも血糖自己測定・ポンプ治療・インスリン強化療法開始。同年ようやく、インスリン自己注射やHbA1が保健適用。1986年血糖自己測定保険適用。 

 35年後の現在では、通院をきちんとされている患者さんでは1型糖尿病であっても、網膜症がほとんど見られなくなりました。また進行しかかった網膜症が鎮静化できた方も大勢いらっしゃいます。眼科治療の進歩は目覚ましく、本当にお世話になっております。 

 一方、今、問われているのは、細小血管症だけでなく、動脈硬化症や認知症やロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome)や癌などを如何に早期に発見し予防できるかが、という一つの科や医療機関の枠を超えた、課題に思われます。 

 健診からの受診率はいまだに低く、若年発症2型糖尿病や高血圧症の治療中断は高率で、特に自営業・非正規労働者・長距離運転業などで目立ちます。38歳にして、脳に心臓に動脈硬化症を進行させた症例、放置期間が長く、腎・眼・神経障害/OHが進行した55歳の症例、をご紹介したいと思います。受診された患者さんを診るだけで終わらせず、受診や通院継続がもっと容易にできるような、病診連携や各科連携、健診とのタイアップを進めてゆく必要を感じています。
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