報告:第254回(17‐04月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 小島紀代子 他
演題:「私たちの出前授業45×2
~目の不自由な人の未来のために、子どもたちの“今”のために~」
講師:小島紀代子、小菅茂、入山豊次、吉井美恵子、三留五百枝
(NPO法人障害者自立支援センターオアシス)
日 時:平成29年04月12日(水)16:30 ~ 18:00
場 所:済生会新潟第二病院 眼科外来
【講演要旨】
平成10年、「総合学習」が創設。地域の多様な立場の人と交流・体験を通し、「思いやりの心、生きる力」を育てる学びの場が地域に拓かれました。平成9年、オアシス主催「第1回学生、子どもたちのためのサマースクール」が、「目の不自由な人をもっと知ってもらうために」「誰もが誘導歩行できる社会に」を目指し開催、昨年20回を迎えました。
1.出前授業の変遷
「見えない人の体験談・誘導歩行」の依頼を受け、双方が戸惑いながらの始まりでした。体育館で当事者が一人で語り、そのあと二人一組になり「誘導歩行体験」。子どもたちは、「見えないと怖~い。大変。だから道で会ったら助けようと思います。」の感想が大半でした。
私たちは、「総合学習」のあり方に疑問を感じ検討しました。・アイマスク体験は、怖い思いと「かわいそう」だけが残り、逆効果の恐れ。・ひとり語りは、特別な人に感じられ真の姿が届きにくい。そこで、① 視覚障害者の全体像を伝えるために、「言葉」だけでなく「映像の力」を。② 体験談は、一人語りからインタビュー形式に。③ 体験学習はグループ別に分けて行う 「誘導」、「機器や道具」、「弱視メガネ・白杖」。④ 障害者の差別偏見と「今」の子どもたちの問題から、『感じ・考える』授業に。
2.小学校4年生の最近の授業風景
1) ~スライドを映しながら~
・視覚障害者の全体像(全盲・ロービジョン・中途・先天盲。見え方のいろいろ)。・オアシス物語(一人の自殺者と内科医師の取組み)。・目のリハビリテーション(こころのケア・歩行・調理・化粧・パソコン・機器・道具の訓練)。・オアシスの特徴(次の人のために教え合い、支え合う教室)
~目をつむっての体験~~
Q.もし君たちが見えなくなったらどんな気持ち?
A.隣の人がみえない、いやな気持ち。 どこにいるかわからない、不安になる。
Q.見えなくなったら、何もできなくなるのかな?
・「みかんや物を触ってもらう」・・・他の感覚を使う。
・「自分の名前を書いてもらう」・・今までの経験の力を使う。
2) ~インタビュー形式の語り~
当事者の以前の職業などを映し、子どもたちからスライドを説明してもらう。当事者の心の内をカミングアウトする。
Q. 見えなくなって困ることは?
A. 死にたくなった、つらかった、白杖が持てない、好きなこともある。元気になれたのはネ。
Q. 見えなくなって、よかったことは?
A. 「よいことなんか、ひとつもないけど、君たちに会えた」「小さいことにも感謝できる」「本当の仲間に出会えた」「パソコンができた」
@悲しみ・苦しみから、楽しみ、喜びなど、ありのままを真剣に語る当事者と聞く子どもたち。
3) ~「パソコン・iPad・機器・道具」の紹介~
@子どもたちは、驚き、それを使い生活する当事者へ尊敬のまなざし。
4) ~『考える』授業~
Q1.「もし、君たちのお父さん、お母さんが見えなくなって、白杖が持てないと言ったら?」
A.・僕が誘導するからいい。 危ないから家族を説得する。 オアシスに相談する。
・お父さんの誕生日に盲導犬をプレゼントする、それまでは仕方ない。
Q2.「もし君たちが見えなくなったら、白杖持てますか?」
A.(持ちたくないと答えた子) ・だって見下されるから ・恥ずかしいから ・もちたくないから
(持つと答えた子) ・仕方ないじゃん、生きていかなければならないから。
Q3.白杖と盲導犬だったら、どっち?
A.ひとりで歩くと淋しい、不安だから盲導犬を持つ ・僕は白杖も盲導犬も持つ。
Q4.「点字ブロックは、車椅子の人には迷惑、視覚障害者には必要。どうしたらいいかな?」
A.「簡単じゃん・・・片方は車いす用に、もう片方は、点字ブロックを敷く。」
3.中学校 「いじめ」問題を意識しての授業
重複障害で重い障害のAさんは、周囲に助けを求め仕事を継続。軽い障害のBさんは、周囲に助けを求めず隠していたため孤立化し仕事を辞めた。Aさんは「反対の立場だったら私も隠した」と。Bさんは、淡々と苦しみを語り、中学生も先生も共感!感じてもらえた授業。
4. 最近の子どもたちの感想文
・白杖を持ちたくない気持ちが、すごーくわかりました。・目の不自由な人は、かわいそうではありません。普通の人と同じことができて凄い。・「目のリハビリ」があることにびっくりした。(多くの子どもたちからも)・調理したり、パソコン、アイパッド、携帯電話が使える。拡大読書器もすごいです。・目が不自由でも、楽しいことがあるということ。仲間が増え、パソコンができること。・ぼくは、差別しないと決めました。なんでもない人でも困っていたら、「どうしましたか?」って聞いて助けてあげます。・仕事のこと、いやな思い、見えなくなった時のショックなど、悲しい気持ちで聞きました。・話したくないことを話してくれた。感謝しています。強い人でした。・目の不自由な人が次の人に教えてあげる。気持の分かる人が教えるのはいいことです。
5・まとめ
最後に、見えない人のハーモニカで力強く歌い、「ありがとう」と握手する子どもたち。まっすぐな心で感じ、聴いてくれた子どもたちが教えてくれました。
「仕方ないじゃない・・生きていかなければだめだから」「僕は白杖も盲導犬も持つ」「私はデイズニーランドのキャスターになりたい。もし働くことになったら、不自由な人のために、いっぱいアイディアをだしたい」 (4年女子)
「出前授業45×2」は、私たちに「生きる勇気」を、未来に「希望」を感じさせる時間でした。
【メンバー紹介】
小島紀代子(事務局・相談員・視覚障害リハビリテーション外来)
小菅茂 (福祉機器普及員・テープ起こしワーク員)
入山豊次 (福祉機器普及員・グループセラピー・テープ起こしワーク員)
吉井美恵子(パソコン指導員・同行援護養成講座指導員・盲ろう者通訳介助員)
三留五百枝(フットケア&健康相談員・テープ起こしワーク員・看護師)
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NPO法人障害者自立支援センターオアシスの紹介
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1.「視覚障害リハビリ外来」1994年開設(月2回)
中央から視覚リハ専門の先生お2人と眼科医・内科医による、「就労・進学などの悩み相談」「移動・歩行のリハビリテーション」「拡大鏡・遮光眼鏡の選択、指導」「パソコン・iPad・拡大読書器」「日常生活用具」「福祉制度」の紹介と使い方指導等。
2.「日常生活訓練指導」~リハビリ外来と連携~(週4回)
「パソコン・機器の使い方指導」「調理・化粧教室」「転倒予防運動」等。
3.「こころのケア」
外来の先生方によるカウンセリング、「グループセラピー」「昼食会・カフェ」ほか。お茶やお話を楽しむ方、いろんな方たちとの交流の場を提供。
4.「地域社会貢献~地域の人と共に~」
「白杖・誘導歩行・転倒予防講習会」「サマースクール」「看護学生実習施設」「同行援護従業者養成講座」「出前授業」等。スタッフは眼科医・内科医、日常生活訓練士、元盲学校の先生、栄養士、看護師、保健師、MSW、機能訓練士他さまざまな職種の方、視覚障害者、その家族、ボランティア。
*「獲った魚を与えるよりも、魚の獲り方を教えよ」の精神で自立支援を行い23年。就労者の増加、「今」を受け止め明るく暮らす方たちが「希望」です。
http://userweb.www.fsinet.or.jp/aisuisin/
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【追 記】
オアシスグループの見事なステージでした。小菅さんを中心に練りに練ったスタイルで、小島さんのナレーション、入山さんの語り、吉井さんと三留さんのプレゼンと時間いっぱいに使ったショー形式の講演でした。
子どもたちに目の不自由な人の生活を教えるだけでなく、感じてもらう、考えてもらう工夫が溢れていました。私たちは時々参加しながら、なるほどなるほど、ほーそうだったのか、と感心しながら拝見していました。まさに「子供は未来」と感じました。そして子供と接することで、関わった大人達も生き生きしてくることが良く判りました。
オアシスの皆さん、ありがとうございました。
【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】
平成29年05月10日(水)16:30 ~ 18:00
第255回(17-05)済生会新潟第二病院眼科勉強会
「地域包括ケアシステムってなに?−新潟市における医療と介護の連携から−」
斎川克之(済生会新潟第二病院 地域連携福祉センター 副センター長
新潟市医師会在宅医療推進室室長)
平成29年06月07日(水)16:30 ~ 18:00
第256(17-06)済生会新潟第二病院眼科勉強会
「視覚障害者とスマホ・タブレット 2017」
渡辺哲也(新潟大学 准教授:工学部 工学科 人間支援感性科学プログラム)
平成29年07月
第257(17-07)済生会新潟第二病院眼科勉強会
新潟盲学校弁論大会 イン 済生会 (予定)
平成29年08月09日(水)16:30 ~ 18:00
第258(17-08)済生会新潟第二病院眼科勉強会
演題未定
小西 明(済生会新潟第二病院医療福祉相談室、前新潟盲学校長)
平成29年09月02日(土)午後
新潟ロービジョン研究会2017
会場:新潟大学医学部有壬記念館(ゆうじんきねんかん)
2階会議室
テーマ:「私と視覚リハビリテーション」
1)司会進行
加藤聡(東大眼科)、仲泊聡(理化学研究所)、
安藤伸朗(済生会新潟第二病院)
特別コメンテーター
中村 透(川崎市視覚障害者情報文化センター)
大島光芳(新潟県上越市)
2)プログラム
1.「ロービジョンケアとの出会い」
高橋政代(理化学研究所CDB 網膜再生医療研究開発プロジェクト)
2.「眼科医オールジャパンでできるロービジョンケアを考える」
清水朋美(国立障害者リハセンター病院)
3.「私と視覚障害リハビリテーション」
山田幸男(NPOオアシス)
4.「眼科医療におけるキュアとケア」
安藤伸朗(済生会新潟第二病院眼科)
全体討論
平成29年11月18日(土)午後
済生会新潟第二病院眼科-市民公開講座
会場:済生会新潟第二病院 10階 多目的室
日時:平成29年11月18日(土)午後
演題:「人生の手応えを共にさがし求めて〜死にゆく人たちと語り合った20年〜」
講師:細井順(ヴォーリズ記念病院ホスピス長;滋賀県近江八幡市)