勉強会報告

2013年5月15日

  演題:「私の目指す視覚リハビリテーションとは」
  講師:吉野 由美子 (視覚障害リハビリテーション協会会長
    日時:平成25年4月10日(水)16:30 ~ 18:00
    場所:済生会新潟第二病院 眼科外来 

【講演要約】
 私の目指す視覚リハビリテーションサービスの理想は、「一生涯を通じて、日本のどこに住んでいても、全盲でもロービジョンでも、身体障害者手帳所持の有無にかかわらず、介護保険サービスを利用していても、必要な時に視覚リハビリテーションサービスが受けられるようにすること」です。 このことが私の理想になったのは、私が高知でおこなって来た、視覚障害リハビリテーションの普及活動や、その後様々な問題を持った当事者の方との出会いを通して、そのような理想を持つようになりました。 

 そこで、この講演では、まず「高知県での普及活動で私が分かった」ことをお話しました。高知県の特徴は、県財政も貧しく、県民の所得水準が低く、公共交通機関などの社会インフラが整備されていないこと。視覚リハサービスの利用者は、7割以上が高齢者で、しかも中途視覚障害者であることです。高齢の中途視覚障害者は、「目が見えない・見えにくい状態になったら、なにもできない」とあきらめていることが多く、視覚リハに関する情報もほとんど知らせていないので、サービスを利用しようという気持ちにはなりません。だから、「利用しに来るのを待つ」のではだめで、「こちらから出ていくサービス『デリバリーサービス』でなければ、高知県には視覚リハは普及しないという戦略を立て、実施した過程をお話しました。

 次に、視覚障害者の高齢化と中途視覚障害者の割合が増加しているのは、高知県だけの特別なことではなく、日本全国どこにでも当てはまるということを、統計資料を使って説明させていただきました。 

 また日本眼科医会の研究班がおこなった2009年度の調査報告を引用して、視覚障害があって日常生活に困っている方は、手帳所持者の5倍以上になること。全盲とロービジョンの比率は1対9ほどで、ロービジョンの方が圧倒的であることを説明しました。

 しかし、一般の方たちも、行政の方たちも、視覚障害者=全盲者であり、幼い頃からの障害者であり、点字を日常的に使っている人であるという固定観念を持っていること。その観念にしたがって、今我が国の視覚障害者に対するサービスは、幼い頃からの視覚障害者で全盲の方中心で、実際視覚障害があることで日常生活に困っている方たちの多くは利用対象外になっており、視覚障害があって日常生活に困っている方のニーズには応えられていないということをお話しました。 

 このような現状の中で、大変つらい思いをしておられる方たちの事例を取り上げさせていただき、このような状況を変えて行くには、現状を理解している視覚障害当事者の方たち、支援者の方たちが積極的に啓発活動をおこない、「このケースは私の専門ではない」と言って拒まずに受け入れること。そのような悪戦苦闘の中から、新しい専門技術を作り出すこと、いろいろな関係機関との連携が重要であるこをお話し、講演を結ばせていただきました。

 私が話をさせていただいたのは、眼科外来で、視覚障害当事者の方も含め、30人ほどのとてもアットホームな雰囲気の中でした。私の話が終わった後、相互の意見交換ができ、私の講演内容について、多くの共感をいただくことができました。

 この機会でお話しさせていただけたことは、今後の私の活動の方向を決めていく、大きな手がかりとなりました。主催いただいた安藤先生、熱心に聞いてくださった参加者の皆さんに心から感謝申し上げます。 

【略歴】
 1947年 東京生まれ 65歳
 1968年 東京教育大学(現筑波大学)付属盲学校高等部普通科卒業
 1970年 日本福祉大学社会福祉学部入学
 1974年 同卒業、名古屋ライトハウスあけの星声の図書館に中途視覚障害者の相談業務担当として就職(初めて中途視覚障害者と出会う)
 1977年 東京都児童相談センター入都(障害者雇用枠)
 1989年 日本女子大学文学研究科博士課程前期社会福祉専攻入学
 1991年 同上終了(社会学修士)
 1991年10月~1999年3月まで 東京都立大学(現首都大学)人文学部 社会福祉学科助手
 1999年4月~209年3月まで 高知女子大学社会福祉学部講師→准教授
 2008年4月~任意団体視覚障害リハビリテーション協会長 

【後記】
 福島県からの参加の方も含め、30名近くの方々が参加しました。
 吉野さんは、先ずご自身の障害のことからお話を開始しました。ご自身の生い立ちから大学進学、東京でのご勤務、高知での体験等を紹介しながら、自ら描く理想の「視覚リハビリテーション」について語って頂きました。
 「ニーズは掘り起こすもの」「出張して行うリハビリ(攻めのリハビリ)」「どこでも、だれでも、いつでも、どんな場合でも、行えるリハビリ」「どんな障害にも対応できる力をつける」「連携だけではなく、どんなことでもやろうという気迫」等々の言葉が印象に残りました。
 貪欲な、そして精力的な現場の情熱を感じました。講演後の討論では、介護の方から現場へのサポートや教育も必要という声が上がりました。
 とても充実した時間を過ごすことが出来ました。吉野先生に感謝致します。

 吉野先生が会長を務める視覚障害リハビリテーション協会が主催する「視覚障害リハビリテーション研究発表大会」の第22回が、来月に新潟で開催されます。2つの招待講演(iPS細胞/網膜色素変性の治療)、2つの特別講演(心のケア/視覚障害者へのITサポート)、シンポジウム「視覚障害者の就労」、その他「歩行訓練」「スマートフォン」「盲学校」等々視覚リハビリテーションに関係する多くの課題について学ぶことができます。最新の福祉機器を揃えた機器展示、盲導犬の体験コーナーもあります。多くの方に参加して頂きたいものと準備しております。
 http://andonoburo.net/on/1690

 

 第22回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
  期 日: 2013年6月21日(金)  プレカンファレンス
                    22日(土)・23日(日) 本大会
  会 場:「チサン ホテル & コンファレンスセンター 新潟」4階
         「新潟大学駅南キャンパスときめいと」 2階
  メインテーマ : 「見えない」を「見える」にする「心・技・体」
   大 会 長 :  安藤 伸朗  (済生会新潟第二病院)
   実行委員長 : 渡辺 哲也  (新潟大学工学部 福祉人間工学科)
   ホームページ: http://www.jarvi2013.net/

 

 

【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】

 平成25年6月12日(水)16:30~18:00
   「視覚障害グループセラピーの考察」
      小島 紀代子 (NPOオアシス) 

 平成25年6月21(金)~23日(日)
  第22回視覚リハビリテーション研究発表大会
  (兼 新潟ロービジョン研究会2013)
  最新情報 http://andonoburo.net/on/1690
  ホームページ:http://www.jarvi2013.net/

 平成25年7月10日(水)16:30 ~ 18:00
   「新潟盲学校弁論大会 イン 済生会」 

 平成25年8月7日(水)16:30 ~ 18:00
         「楽しい外出をサポートします!~『同行援護』その効果とは!?~」
     奥村 京子 (社会福祉法人新潟市社会福祉協議会)

 平成25年9月11日(水)16:30 ~ 18:00
   「言葉 ~伝える道具~」
     多和田 悟 (公益財団法人日本盲導犬協会 訓練技術担当理事)

 

 

 

2013年3月30日

 演題:「視覚障害者とスマートフォン」
 講師:渡辺 哲也 (新潟大学 工学部 福祉人間工学科)
  日時:平成25年3月13日(水)16:30 ~ 18:00 
  場所:済生会新潟第二病院 眼科外来 

【講演要旨】
1.はじめに
 昨今、タッチパネル操作が主体のスマートフォンとタブレットPCの広まりが目覚ましい。ロービジョンの人たちにとってこれらの機器は、画面拡大操作がしやすい、拡大読書器の代わりに使える、持ち運びに便利、そして格好いい、など利点が多い。他方で、全盲の人たちにとっては、たとえ音声出力があっても、触覚的手がかりのないタッチパネル操作は難しいのではないかと思われる。そこで、全盲の人たちがスマートフォンやタブレットPCを利用する利点と問題点について各種調査を始めた。Webを使った文献調査、利用者への聞き取り調査、音声によるタッチパネル操作実験などを通してわかってきたことを報告する。

2.GUIショックとの相似
 文字中心であった二つ折り型携帯からタッチパネル操作のスマートフォンへの移行は、1990年代にコンピュータの基本ソフトが文字操作中心のMS-DOSから画像操作中心のWindowsへ移行したときに匹敵する衝撃的な変化である。両者の相似点は、(1) 取り扱う情報がテキスト情報からグラフィカル情報へ移行したことと、(2) 矢印キーを使ったテキスト情報選択からポインタを使ったアイコンの直接選択へ移行したことの2点である。

 他方で異なる点は、(1) スクリーンリーダの存在と、(2) ポインタの操作方法である。1990年代前半にWindowsが普及し始めた頃、日本ではWindows用スクリーンリーダはまだ研究開発の途上にあった。他方で、iPhone、iPad、Androidが普及し始めた現在、これらのOS向けのスクリーンリーダは開発済みであるばかりか、機械に標準で装備されている。操作方法に関しては、従来のパソコンではマウスやタッチパッドを使ってポインタを動かす相対操作であるのに対して、タッチパネル操作では指先位置がポインタ位置となる直接操作である。このため、画面を見ないでも音声フィードバックさえあればユーザはアイコンを指示できる。これら二つの特徴により、全盲の人たちはスマートフォンやタブレットPCを利用できる。

3.利用方法
1)スクリーンリーダ
 iPhoneやiPadには、スクリーンリーダVoiceOverが標準装備されている。AndroidにもスクリーンリーダTalkBackが標準装備されているが、日本語出力のために音声合成ソフト(ドキュメントトーカ)をインストールする必要がある。

2)アイコン等の選択
 2通りの操作方式がある。直接指示方式では、触れた位置にあるアイコンなどが選択され、読み上げが行われる。続けてダブルタップすると選択決定となる。画面構成を覚えておけば操作は容易だが、画面構成が分からないと目標項目を探すのは困難である。順次選択方式では、画面上でスワイプ(フリックともいう)することで、前後の項目へ移動し、これを読み上げる。項目間を確実に移動できるが、目標項目に到達するまで時間がかかることが多い。

3)文字入力
 テンキー画面によるフリック入力やマルチタップ入力(同じキーを押すたびに、あ、い、う、と変化)、50音キーボード画面やQWERTYキーボード画面が音声読み上げされる。漢字の詳細読み機能もある。いずれの方式も、個々のキーが小さいため、入力が不正確になりがちである。この問題を解決するため、iPhoneには自動修正機能が装備されている(英語版のみ)。ジョージア工科大学で開発されたBrailleTouchというアプリでは、タッチ画面を点字タイプライタの入力部に見立てて6点入力をする。

4.様々な便利アプリ
 光認識、色認識、紙幣認識、拡大機能、読み上げなど、単体の機械や従来型の携帯電話で実現されてきた機能が、スマートフォンへのアプリのインストールだけで利用可能になった。インターネットとの常時接続やGPSによる位置の推定など、スマートフォンの特徴的な機能を応用した新しいアプリとしては、物体認識、屋外のナビゲーションなどがある。以下にアプリ名とその内容を紹介する。
 ・Fleksy:打ち間違えても、「正しい」候補を賢く表示
 ・Light Detector:光量を音の高低で表示
 ・マネーリーダー:紙幣の額面金額を読み上げ
 ・明るく大きく, VividCam:コントラスト改善、拡大
 ・TapTapSee, CamFind:視覚障害者向け画像認識
 ・Ariadne GPS, ドキュメントトーカボイスナビ:現在地・周囲情報・経路案内

5.まとめ
 音声支援により全盲の人もタッチパネルを操作できる。しかし、アイコン等の選択や文字入力が効率的に行えるとは言いがたい。お札や色の判別などのアプリは従来の携帯電話でも利用できたが、これらを簡単にインストールできる点は利点であろう。スマートフォンで新たに実用可能になった物体認識やナビゲーション機能の実用性の検証とその発展が今後期待される。

 

【略歴】
 平成 3年 3月 北海道大学 工学部 電気工学科 卒業
 平成 5年 3月 北海道大学 工学研究科 生体工学専攻 修了
 平成 5年 4月 農林水産省 水産庁 水産工学研究所 研究員
 平成 6年 5月 日本障害者雇用促進協会 障害者職業総合センター 研究員
 平成13年4月 国立特殊教育総合研究所 研究員
 平成21年4月 新潟大学 工学部 福祉人間工学科 准教授

 情報通信技術(ICT)を用いた視覚障害者支援に従事。これまでの開発成果は、スクリーンリーダ”95Reader”、電子レーズライタ”Mimizu”、漢字の詳細読み”田町読み”(iPad・iPhoneに搭載)、触地図作成システム”tmacs”など。 

【後記】
 現在、IT関係の発達は目覚ましいものがあります。iPadやスマートフォンに代表される携帯端末もその一つです。こうしたものが発達することは、情報をいち早く得るためや、情報を発信するために欠かせないものになってきました。一方では、こうした機器に不慣れであると、情報に取り残された、いわゆる情報難民を生み出すことになります。
 視覚障害者がこうした情報難民にならないようにするために取り組んでおられる、渡辺研究室の活躍を期待したいと思います。 

 *参考までに
  新潟大学 工学部 福祉人間工学科 渡辺研究室のWebサイト
  http://vips.eng.niigata-u.ac.jp/

 

『済生会新潟第二病院 眼科勉強会』
 1996年(平成8年)6月から、毎月欠かさずに続けています。誰でも参加出来ます。話題は眼科のことに限らず、何でもありです。 参加者は毎回約20から30名くらいです。患者さん、市民の方、医者、看護師、病院スタッフ、学生、その他興味のある方が参加しています。眼科の外来で行いますから、せいぜい5m四方の狭い部屋で、寺子屋的な雰囲気を持った勉強会です。ゲストの方に約一時間お話して頂き、その後30分の意見交換があります。

   日時:毎月第2水曜日16:30~18:00(原則として)
   場所:済生会新潟第二病院眼科外来 

*勉強会のこれまでの報告は、下記でご覧頂けます。
 1)ホームページ「すずらん」
  新潟市西蒲区の視覚に障がいのある人とボランティアで構成している  音声パソコン教室ホームページ
  http://www11.ocn.ne.jp/~suzuran/saisei.html

 2)済生会新潟第二病院 ホームページ
  http://www.ngt.saiseikai.or.jp/02/ganka/index5.html

 3)安藤 伸朗 ホームページ
  http://andonoburo.net/

 

【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】
 平成25年8月7日(水)16:30 ~ 18:00 
  「楽しい外出をサポートします! ~『同行援護』その効果とは!?~」
     奥村 京子 (社会福祉法人新潟市社会福祉協議会) 

 平成25年9月11日(水)16:30 ~ 18:00
  「言葉 ~伝える道具~」
     多和田 悟 (公益財団法人日本盲導犬協会 訓練技術担当理事) 

 平成25年10月9日(水)16:30 ~ 18:00
  「眼科医として私だからできること」
     西田 朋美
    (国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部 眼科医長)

 平成25年11月13日(水)16:30~18:00
   演題未定
     櫻井 浩治 (精神科医、新潟市)

 

2013年3月14日

  演題:「歩行訓練40余年を振り返る」
  講師:清水 美知子 (フリーランスの歩行訓練士;埼玉県)

    日時:平成25年2月13日(水)16:30 ~ 18:00 
    場所:済生会新潟第二病院 眼科外来 

【講演要約】
 今回の勉強会には6名の方が盲導犬とともに参加されました。当初は杖を使った歩行訓練についてお話しする予定でしたが、床に臥している6頭の盲導犬を前にして、自然に口から出て来たのはわが国の盲導犬に関する歴史でした。

 国産第一号の盲導犬は塩屋賢一さん(東京盲導犬協会:現「アイメイト協会」の創設者)が訓練したチャンピイですが1)、その18年前の1939年にはドイツから購入した4頭の盲導犬が陸軍病院で訓練され、戦争で失明した軍人に与えられています2)。1970年以降、国産の盲導犬訓練事業が本格化するまで、外国産の盲導犬を使う例は他にもあったようです。佐々木たづさんは著書3)の中で、英国産の盲導犬を日本の道路環境に順応させる大変さを述べています。Howard Robsonさん(1970年代に盲導犬訓練施設を開設すべく民間企業に招かれて英国から来日した盲導犬訓練士)は、当時の日本の道路状況が英国に比べて非常に悪く(歩道がない、側溝に蓋がないなど)、自国での訓練法、歩行方法がそのままでは通用しないことについて驚きとともに書いています4,5)

 一方、米国でHooverらによって開発された長い杖(a long cane)を使った歩行方法6)は、1960年代の中頃にわが国に伝えられました。杖を使って歩く方法についての記述はそれ以前にも国内外にありましたが7,8)、普及しませんでした。その後、1970年にAmerican Foundation for Overseas Blind(AFOB)の支援を得て、日本で初めての歩行訓練指導員講習会が日本ライトハウスで開催されました。1972年からは、厚生省の委託を受け、毎年、盲人歩行訓練指導員研修として開催されました。そして1990年には、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院(現「国立障害者リハビリテーションセンター学院」)に視覚障害生活訓練専門職養成課程が開設され、この時から指導内容が「歩行訓練」のみではなく、コミュニケーション訓練、日常生活動作訓練など視覚障害者の社会適応訓練全般に変わりました。職名の呼び名も「視覚障害生活訓練専門職」(国リハ)や「視覚障害生活訓練指導員」(日本ライトハウス)となりました。

 ここでわが国の視覚障害リハビリテーションについて振り返ると、1948年に東京と塩原に光明寮が開設されて以来、三療師を職業ゴールとする職業リハビリテーションに終始してきました。1970年代に入り歩行訓練士が養成され、七沢ライトホームなど新たな施設が開設され、社会適応訓練が実施されるようになりましたが、職業訓練の前段階に位置づけられ、学習技能(例:点字)の習得および寮生活の自立を主な目的とした個別性の乏しい画一的なプログラムでした。それでも1970,80年代は施設を拠点とした歩行訓練の最盛期で、1977年には日本歩行訓練士協会も発足しました(1991年に解散)。1990年代になると、職業訓練を希望する入所者の減少が目立ち始め、2000年以降は大きく定員を下回った状況が続き、歩行訓練指導の件数も減ってきました。

 歩行訓練が行われる場所に関して考えると、施設での歩行訓練は施設生活には有用ですが、退所後は習得技術を生活環境に合わせて調整したり、地理道路情報を集めたり、経路を開拓したりといった作業を、見えない・見えにくい状態で、すべて自分でしなければなりません。それに比べ生活圏での訓練は、生活スタイルを変えることなく訓練を受けられ、実環境に特化した技能の習得により訓練の成果を直ちに生活に反映させることができるなど多くの利点があります。最近、地域で歩行訓練を提供する機関は増えており、全国で70ヶ所を越えると推定されます。ただしこれらの機関の多くは中途失明者緊急生活訓練事業あるいは独自の財源で運営する団体のため、財政的基盤が小規模かつ脆弱で、訓練頻度や訓練期間などに制約が生じ、当事者の状況や要望に応えられているとは言えないのが現状です。

 この40余年間に歩行訓練の内容も変化しました。そのいくつかを以下に記します。

1.杖操作法の主流が二点打法 (Two-Point Touch Technique) 9)から常時接地法(ConstantContact Technique)10)
2.聴覚的な手がかりより触覚的な手がかりを重視した歩行方法11)の定着

3.交通環境の変化(例:定周期制御から感応制御式信号へ)による指導内容の改変
4.訓練士主導から訓練生の主体性を尊重した訓練へ

 これまでに、点字ブロック、音響信号機、エスコートゾーン、ホームドア、など移動支援設備が普及しつつありますが、交通の慢性的な混雑、歩道上の自転車交通、高齢者などモビリティ障害者との衝突、交差点の信号制御の複雑化、駅プラットホームからの転落の危険、自動車の静音化など視覚障害者を悩ませる数多くの問題が解決されるにはまだまだ時間がかかるでしょう。そのため残念ながら、現状では都市部の不慣れな地域の外出にはガイドを使って行動するのが合理的で安全と言えるかもしれません。でも、日々の生活環境を考えると、徒歩圏内にもコンビニ、スーパー、友人宅、バス停など多くの目的地があります。路線バスで数駅足を延ばせば、さらに目的地は増えるでしょう。経路を決め、繰り返し歩き、道筋を熟知すると、ひとりで行ける身近な場所は意外と多くあるものです。社会生活を営む上で、自らの意志選択で自由に外出できるということは大切です。歩行訓練士は目的地まで安全に移動するための方法や経路選択について、専門的見地から助言します。

 季節は今、冬から春へと向かっています。外に出て、移りゆく季節を楽しむことができる時期です。歩行訓練士とともに散歩道を探してみてはいかがでしょうか。

【参考文献】
 1. 河相洌(1981)、ぼくは盲導犬チャンピイ,偕成社
 2. 葉上太郎(2009)、日本最初の盲導犬、文芸春秋
 3. 佐々木たづ(1964)、ロバータさあ歩きましょう、朝日新聞社
 4. Robson, H. (1976), Guide Dog Training in Japan- 1, New Beacon, 60,13-117
 5. Robson, H. (1976), Guide Dog Training in Japan- 2, New Beacon, 60,41-143
 6. Bledsoe, C.W. (2010), The Originators of Orientation and Mobility Training, Foundations of Orientation and Mobility edited by W.R. Wiener, et.al. AFB Press
 7. Levy, W. H. (1872), Blindness and the Blind, Chapman and Hall, London
 8. 木下和三郎(1939)、盲人歩行論、傷兵保護院
 9. Hill, E. & Ponder, P. (1976), Orientation and Mobility Techniques: A Guide for the Practitioner,American Foundation for the Blind, New York
 10. Fisk, S. (1986),Constant-Contact Technique with a Modified Tip: A New Alternative for Long-cane Mobility, Journal of Visual Impairment and  Blindness, 80, 999-1000
 11. 村上琢磨(2011)、私の歩行訓練史(特別講演)、第37回感覚代行シンポジウム講演論文集

 【略歴】
 1979年~2002年 視覚障害者更生訓練施設に勤務、その後在宅視覚障害者の訪問訓練事業に関わる
 1988年~    新潟市社会事業協会「信楽園病院」にて、視覚障害リハビリテーション外来担当。
 2002年~    フリーランスの歩行訓練士
 現在に至る

(参考) 清水美知子 ホームページ
 http://www.ne.jp/asahi/michiko/visionrehab/

【後記】
 最初に盲導犬を使った日本人はどなたですか?と盲導犬のことから話が始まりました。盲導犬のこと、歩行訓練のこと、歴史と共に多くの知識が語られました。多くは知らないことばかりでしたが、歴史の流れを学び、今の現状の一端を知ることが出来ました。特に戦勝国は軍隊が残り、負傷した兵士は国が治療しリハビリをしたが、敗戦国では傷痍軍人には治療はおろかリハビリもされなかったという下りに合点が行きました。
 最後に、6月21日(金)午後、新潟で行う視覚リハ大会プレカンファレンスで、「歩行訓練の将来」というテーマで、清水さん、山田幸男先生、松永秀夫さんの3人で討論するので、是非、聞きに来てほしいとのメッセージがありました。

『第22回視覚障害リハビリテーション発表大会』(2013 新潟)
 兼 新潟ロービジョン研究会2013
 http://andonoburo.net/on/1690 
【特別企画】
 「歩行訓練の将来」               6月21日(金)午後
   山田 幸男(司会:信楽園病院/NPO障害者自立支援センターオアシス)
   清水 美知子(歩行訓練士;埼玉県)
   松永 秀夫(新潟県視覚障害者福祉協会)

 いつも清水美知子さんの話は、魅力いっぱいです。今後の益々の発展を期待します。

 

【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】
 平成25年4月10日(水)16:30 ~ 18:00
   「私の目指す視覚リハビリテーションとは」
      吉野 由美子 (視覚障害リハビリテーション協会会長)

 平成25年5月8日(水)16:30~18:00
   「インクルーシブ教育システム構築と視覚障害教育
                                                                         ~盲学校に求められるもの~」

      小西 明 (新潟県立新潟盲学校:校長)

 平成25年6月12日(水)16:30~18:00
   「視覚障害グループセラピーの考察」
      小島 紀代子 (NPOオアシス)

 平成25年6月21(金)~23日(日)
  第22回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
  (兼 新潟ロービジョン研究会2013)
  ホームページ:http://www.jarvi2013.net/  
  最新情報 http://andonoburo.net/on/1690
  参加申し込み:http://www.jarvi2013.net/sanka

 平成25年7月10日(水)16:30 ~ 18:00
  「 楽しい外出をサポートします! ~『同行援護』その効果とは!?~」
     奥村 京子 (新潟市社会福祉協議会)

 

2013年3月13日

報告:第205回(13‐03月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会  渡辺 哲也
 演題:「視覚障害者とスマートフォン」
 講師:渡辺 哲也 (新潟大学 工学部 福祉人間工学科)
  日時:平成25年3月13日(水)16:30 ~ 18:00 
  場所:済生会新潟第二病院 眼科外来  

【講演要旨】
1.はじめに
昨今、タッチパネル操作が主体のスマートフォンとタブレットPCの広まりが目覚ましい。ロービジョンの人たちにとってこれらの機器は、画面拡大操作がしやすい、拡大読書器の代わりに使える、持ち運びに便利、そして格好いい、など利点が多い。他方で、全盲の人たちにとっては、たとえ音声出力があっても、触覚的手がかりのないタッチパネル操作は難しいのではないかと思われる。そこで、全盲の人たちがスマートフォンやタブレットPCを利用する利点と問題点について各種調査を始めた。Webを使った文献調査、利用者への聞き取り調査、音声によるタッチパネル操作実験などを通してわかってきたことを報告する。 

2.GUIショックとの相似
文字中心であった二つ折り型携帯からタッチパネル操作のスマートフォンへの移行は、1990年代にコンピュータの基本ソフトが文字操作中心のMS-DOSから画像操作中心のWindowsへ移行したときに匹敵する衝撃的な変化である。両者の相似点は、(1) 取り扱う情報がテキスト情報からグラフィカル情報へ移行したことと、(2) 矢印キーを使ったテキスト情報選択からポインタを使ったアイコンの直接選択へ移行したことの2点である。 

他方で異なる点は、(1) スクリーンリーダの存在と、(2) ポインタの操作方法である。1990年代前半にWindowsが普及し始めた頃、日本ではWindows用スクリーンリーダはまだ研究開発の途上にあった。他方で、iPhone、iPad、Androidが普及し始めた現在、これらのOS向けのスクリーンリーダは開発済みであるばかりか、機械に標準で装備されている。操作方法に関しては、従来のパソコンではマウスやタッチパッドを使ってポインタを動かす相対操作であるのに対して、タッチパネル操作では指先位置がポインタ位置となる直接操作である。このため、画面を見ないでも音声フィードバックさえあればユーザはアイコンを指示できる。これら二つの特徴により、全盲の人たちはスマートフォンやタブレットPCを利用できる。 

3.利用方法
1)スクリーンリーダ
iPhoneやiPadには、スクリーンリーダVoiceOverが標準装備されている。AndroidにもスクリーンリーダTalkBackが標準装備されているが、日本語出力のために音声合成ソフト(ドキュメントトーカ)をインストールする必要がある。 

2)アイコン等の選択
2通りの操作方式がある。直接指示方式では、触れた位置にあるアイコンなどが選択され、読み上げが行われる。続けてダブルタップすると選択決定となる。画面構成を覚えておけば操作は容易だが、画面構成が分からないと目標項目を探すのは困難である。
順次選択方式では、画面上でスワイプ(フリックともいう)することで、前後の項目へ移動し、これを読み上げる。項目間を確実に移動できるが、目標項目に到達するまで時間がかかることが多い。 

3)文字入力
テンキー画面によるフリック入力やマルチタップ入力(同じキーを押すたびに、あ、い、う、と変化)、50音キーボード画面やQWERTYキーボード画面が音声読み上げされる。漢字の詳細読み機能もある。いずれの方式も、個々のキーが小さいため、入力が不正確になりがちである。この問題を解決するため、iPhoneには自動修正機能が装備されている(英語版のみ)。ジョージア工科大学で開発されたBrailleTouchというアプリでは、タッチ画面を点字タイプライタの入力部に見立てて6点入力をする。 

4.様々な便利アプリ
光認識、色認識、紙幣認識、拡大機能、読み上げなど、単体の機械や従来型の携帯電話で実現されてきた機能が、スマートフォンへのアプリのインストールだけで利用可能になった。インターネットとの常時接続やGPSによる位置の推定など、スマートフォンの特徴的な機能を応用した新しいアプリとしては、物体認識、屋外のナビゲーションなどがある。以下にアプリ名とその内容を紹介する。
・Fleksy:打ち間違えても、「正しい」候補を賢く表示
・Light Detector:光量を音の高低で表示
・マネーリーダー:紙幣の額面金額を読み上げ
・明るく大きく, VividCam:コントラスト改善、拡大
・TapTapSee, CamFind:視覚障害者向け画像認識
・Ariadne GPS, ドキュメントトーカボイスナビ:現在地・周囲情報・経路案内 

5.まとめ
音声支援により全盲の人もタッチパネルを操作できる。しかし、アイコン等の選択や文字入力が効率的に行えるとは言いがたい。お札や色の判別などのアプリは従来の携帯電話でも利用できたが、これらを簡単にインストールできる点は利点であろう。スマートフォンで新たに実用可能になった物体認識やナビゲーション機能の実用性の検証とその発展が今後期待される。 

【略 歴】
 平成 3年 3月 北海道大学 工学部 電気工学科 卒業
 平成 5年 3月 北海道大学 工学研究科 生体工学専攻 修了
 平成 5年 4月 農林水産省 水産庁 水産工学研究所 研究員
 平成 6年 5月 日本障害者雇用促進協会 障害者職業総合センター 研究員
 平成13年4月 国立特殊教育総合研究所 研究員
 平成21年4月 新潟大学 工学部 福祉人間工学科 准教授
 情報通信技術(ICT)を用いた視覚障害者支援に従事。これまでの開発成果は、スクリーンリーダ”95Reader”、電子レーズライタ”Mimizu”、漢字の詳細読み”田町読み”(iPad・iPhoneに搭載)、触地図作成システム”tmacs”など。 

【後 記】
 現在、IT関係の発達は目覚ましいものがあります。iPadやスマートフォンに代表される携帯端末もその一つです。こうしたものが発達することは、情報をいち早く得るためや、情報を発信するために欠かせないものになってきました。一方では、こうした機器に不慣れであると、情報に取り残された、いわゆる情報難民を生み出すことになります。
 視覚障害者がこうした情報難民にならないようにするために取り組んでおられる、渡辺研究室の活躍を期待したいと思います。 

 *参考までに
  新潟大学 工学部 福祉人間工学科 渡辺研究室のWebサイト
  http://vips.eng.niigata-u.ac.jp/

 

2013年2月3日

   日時:平成25年01月09日(水)16:30 ~ 18:00 
  場所:済生会新潟第二病院 眼科外来

 演題:「視覚障害者のリハビリテーションから学んだこと」
 講師:石川 充英 (東京都視覚障害者生活支援センター 就労支援課)

【講演要旨】

1 はじめに

 視覚障害者のリハビリテーションの仕事を始めて25年が過ぎた。私が東京都視覚障害者生活支援センター(以下、センター)に入職した当時は、施設利用を希望する人は行政に申し出て、行政が利用の可否と決定するという措置制度の時代であった。現在は、2006年から施行された障害者自立支援法により、視覚障害者自身が福祉サービスを選択できるようになった。障害者自立支援法により、歩行訓練や点字、日常生活動作訓練などの日常生活訓練は、自立訓練(機能訓練)として位置づけられ、就労移行支援事業が創設された。パソコンを利用して一般事務職を目指す視覚障害者は、職業訓練校だけではなく、就労移行支援事業所でも訓練を受けられるようになった。センターは、2009年から通所による自立訓練(機能訓練)と就労移行支援の2つの訓練サービスを提供している。
 このように視覚障害者の福祉制度が大きく変わる中、Aさんの出会いを振り返ることにより、改めて視覚障害者のリハビリテーションに対する考え方の礎を学ばせていただくことができた。

2 Aさんとの出会い

 Aさんと出会ったのは今から20年ほど前。ご主人を亡くし、ご自身も視力低下の中での出会いであった。この頃のご自身の状態を自らの著書で『生きる屍のようであった』と記されている。(以下、『』内の記述は著書からの引用)
 このような状況の中、歩行訓練の担当となった。当初は、『植え込みに入り込んでしまったり、曲がるところが分からずに、隣の塀にぶつかってしまったり、とても疲れた。』『何かわからないところを杖を左右にふりまわして、こんなことをしなければならないなんてと情けない思いであった。』この状況を改善させたのは、訓練を受けていた仲間であったようだ。『4、5か月も経つうちに、真っ暗闇の霧の中で、ただ一人ぼっちと思っていたのだが、「違うぞ、私以外にもそういう人がいるんだ」これは私にとって大きな教訓であった。次第に訓練にも熱が入るようになった。その年の秋になると、順調に進むようになっていった。少しはまじめでやる気になってきた。』 ここに施設や事業所で当事者同士が出会い、互いに刺激を受け、訓練を受ける意義がある。しかし、近年では当事者同士の関係性が少し薄れてきているような気がしている。

 話をAさんに戻す。当時の歩行訓練は、例えていえば自動車の教習所のような進め方であった。決められた訓練カリキュラムを施設周辺の訓練場所で実施し、そのカリキュラムを習得すれば自宅の周辺を含め、訓練していないところも歩くことができるという考え方が主流であった(以下、教習所型)。そのカリキュラムの最終段階として、周囲の人に援助を積極的に依頼しながら、事前に情報収集した目的地に単独で移動するという「卒業試験」があった。

 Aさんの卒業試験の目的地は「銀座三越ライオン像の前」であった。Aさんは事前に乗換駅や乗車号車などを調べ、当日は適切なタイミングで援助を依頼しながら無事にライオン像についた。『私はしみじみとして思いで、ライオン像を丁寧に手で触ってみた。「やった、やったぞ! 一人でここへ来たんだ!」感慨深かった。』

 Aさんは、卒業試験で自信をつけ、センターまで一人で通えるような歩行力をつけた。その状況を知ったAさんの友人から、Aさんとセンターに、自分の会社の手伝いをしてほしいという提案があった。このとき、友人の会社への通勤経路については歩行訓練を実施した。教習所型では十分に対応できなかったのである。Aさんは短期間で通勤が可能となった。このように、実際に視覚障害者が歩くところで歩行訓練を実施することが、最近の歩行訓練の主流となっている。

 Aさんは、卒業試験、通所、通勤により単独歩行に自信を持った。その後は、アメリカへのホームステイ、視覚障害者を支援するNPO法人の設立など、昔の輝きを取り戻した。

3 視覚障害者の移動(歩行)を支援するとは

 Aさんとの出会いを通して、視覚障害者の移動(歩行)が、リハビリテーションの根幹をなすものだと改めて学んだ。単独歩行するためには、周囲の支援と理解、訓練体制、歩行環境(歩道の整備、横断支援等の歩行支援設備)、公共交通機関の利便性などの条件が必要である。それと、最も重要な条件は、一人で歩きたいという強い意志である。意志と条件が整ってこそ、単独歩行は可能となる。単独歩行するにあたっては、移動する距離や時間が問題ではない。自ら置かれている状況や条件の中で、利用者本人が歩こうという意志を持ち、いかに歩くということを主体的に考えるかである。また、支援者はいかに主体的に考えることができるよう支援するかが重要である。この主体的な移動は、必ずしも単独歩行だけを意味するのではない。同行援護などの制度を利用してのガイドヘルパーによる誘導歩行も含まれる。主体的に移動することは、利用者自身が、それまでの世界観を大きく変化させることであり、その結果、次なる活動の意欲にも繋がっていくことから、その支援体制が重要である。

4 支援体制を構築するための「Renkei」

 視覚障害者のリハビリテーションを進めるためには、当事者の力と周囲の支援が必要である。支援が必要なときに、必要な支援者が「Renkei」をすることが重要だと考える。

 Aさんの場合、友人と支援センターが連携をとり支援を行った。Aさんを中心に、友人、センター、行政が「Renkei」をとりながら支援を実施した。「Renkei」には「連携(cooperation)」と「連係(connection)」がある。「連携」とは、経過・決定に利用者が存在、利用者と複数の支援者の目標が同じであり、一方の「連係」は経過・決定に利用者が不在で、利用者と複数支援者の目標が異なっている。視覚障害者のリハビリテーションを行うには、支援者一人、1施設での支援には限界があり、利用者の強みを引き出す支援を行うためには、複数の支援者と「連携」を組むことが重要である。他の機関につなげるだけの「連係」では不十分であり、スムーズな「連携」には、構築されたネットワークの利用が重要である。ネットワークはすぐに構築することができない。よりよい「連携」とネットワーク構築のためには、互いの支援者の顔が見えることがとても重要だと考える。

 

【略歴】
 1986年3月 駒澤大学文学部社会学科卒業
 1986年4月 日本盲人社会福祉施設協議会 
       東京都視覚障害者生活支援センター入職
 1992年10月 視覚障害者歩行訓練指導員(歩行訓練士)養成課程修了
 1996年3月  日本大学大学院理工学研究科医療・福祉工学専攻 前期博士課程修了
 1996年4月  東京都視覚障害者生活支援センター 指導訓練課主任指導専門職
 1986年6月 信楽園病院 中途視覚障害者リハビリテーション 外来担当
 2001年11月 NPO法人視覚障がい者支援しろがめ理事
 2011年11月 視覚障害リハビリテーション協会監事
 2012年4月 東京都視覚障害者生活支援センター就労支援課長

 現在に至る

 

【後記】

 今回は、視覚障害者が「自ら歩く」ということから多くのことを学んだ。
 曰く、「自分で歩く」ことは視覚リハの基本。歩いた距離の問題ではなく、「自分で歩こう」という意識が大事。そのためには、単独歩行とガイドヘルパーのバランスが大事。
 曰く、「れんけい」が必要。他機関につなげるだけの「連係」では不十分。支援者一人、一施設での支援には限界があり、利用者の強みを引き出す支援を行うためには、複数の支援者と「連携」を組むことが大事。「連携」に基づく「ネットワーク」が重要。「連携」とは、経過・決定に利用者が存在、利用者と複数の支援者の目標が同じであることが必要。。。。
 現場の人ならではのご意見でした。石川先生が話すということで、雪が吹きすさぶ中、多くの方が参加されたことに、先生への評価が表れていると感じました。
 視覚障害リハビリで活躍する石川先生の、益々の発展を祈念しております。

 

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『済生会新潟第二病院 眼科勉強会』
 1996年(平成8年)6月から、毎月欠かさずに続けています。誰でも参加出来ます。話題は眼科のことに限らず、何でもありです。
 参加者は毎回約20から30名くらいです。患者さん、市民の方、医者、看護師、病院スタッフ、学生、その他興味のある方が参加しています。
 眼科の外来で行いますから、せいぜい5m四方の狭い部屋で、寺子屋的な雰囲気を持った勉強会です。ゲストの方に約一時間お話して頂き、その後30分の意見交換があります。

   日時:毎月第2水曜日16:30~18:00(原則として)
   場所:済生会新潟第二病院眼科外来

*勉強会のこれまでの報告は、下記でご覧頂けます。

 1)ホームページ「すずらん」
  新潟市西蒲区の視覚に障がいのある人とボランティアで構成している
  音声パソコン教室ホームページ 
  http://www11.ocn.ne.jp/~suzuran/saisei.html

 2)済生会新潟第二病院 ホームページ
  http://www.ngt.saiseikai.or.jp/02/ganka/index5.html

 3)安藤 伸朗 ホームページ
  http://andonoburo.net/

 

【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】
 平成25年2月13日(水)16:30~18:00
   「歩行訓練40余年を振り返る」
      清水 美知子 (フリーランスの歩行訓練士;埼玉県)

 平成25年3月13日(水)16:30~18:00
   「視覚障害者とスマートフォン」
      渡辺 哲也 (新潟大学工学部福祉人間工学科)

 平成25年4月10日(水)16:30 ~ 18:00
   「私の目指す視覚リハビリテーションとは」
      吉野 由美子 (視覚障害リハビリテーション協会会長)

 平成25年5月8日(水)16:30~18:00
   「インクルーシブ教育システム構築と視覚障害教育
                ~盲学校に求められるもの~」
      小西 明 (新潟県立新潟盲学校:校長)

 平成25年6月12日(水)16:30~18:00
   「視覚障害グループセラピーの考察」
      小島 紀代子 (NPOオアシス)

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 平成25年6月21(金) プレカンファレンス
         22日(土)23日(日)

  第22回視覚リハビリテーション研究発表大会
             (兼 新潟ロービジョン研究会2013)

    会場:「チサン ホテル & コンファレンスセンター 新潟」
        「新潟大学駅南キャンパスときめいと」
    メインテーマ:「見えない」を「見える」にする「心・技・体」
    大会長:安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院)

  特別講演

   「心」(心のケア)  山田 幸男(新潟信楽園病院;内科医)

                           6月22日(土)午後

   「技」(IT視覚支援)林 豊彦(新潟大学工学部 教授)

                           6月22日(土)午前

   「体」(医学)一般開放(共催:新潟ロービジョン研究会2013)

             高橋 政代(理化学研究所) 6月23日(日)午後

             山本 修一(千葉大学眼科教授)

  シンポジウム
     「視覚障がい者の就労支援」         6月23日(日)午前
       司会:星野 恵美子(新潟医療福祉大学)
           小島 紀代子(NPOオアシス)

  特別企画
   1.「歩行訓練の将来」              6月21日(金)午後
        司会:山田 幸男(信楽園病院/NPOオアシス)
   2.「視覚障害者とスマートフォン」        6月22日(土)午前
        企画:渡辺 哲也(新潟大学工学部福祉人間工学科)
   3.「盲学校で行う成人への視覚支援」       6月23日(日)午前
        司会:小西 明 (新潟県立新潟盲学校 校長)

  関連企画                      6月23日(日)午前
   「機器展示ワークショップ」「視能訓練士講習会」

  一般講演・特集講演
    一般講演(5題)               6月22日(土)午前
    特集演題(3~4題) 「スマートサイト」   6月22日(土)午前
    ポスター講演            (30題) 6月22日(土)午後
                       (30題)6月23日(日)午前

  ランチョンセミナー  昼食付
    22日 「最新の眼科医療」長谷部 日(新潟大学眼科)
        「ロービジョンケア」新井 千賀子(杏林大学アイセンター)
    23日 「アイパッドを用いた視覚支援」
             三宅 琢(Gift Hands)、氏間 和仁(広島大学)

  事前登録・演題募集
   演題募集 2013年1月15日から2月28日
   参加登録 2013年1月15日から5月15日

  機器展示

  ホームページ  http://www.jarvi2013.net/

 

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 平成25年7月10日(水)16:30 ~ 18:00
  演題未定 
     奥村 京子 (新潟市社会福祉協議会)