報告:第264回(18-02)済生会新潟第二病院眼科勉強会「ささえ、ささえられて」 2)大石華法
2018年4月12日

報告:第264回(18-02)済生会新潟第二病院眼科勉強会
「ささえ、ささえられて」   2)大石華法
  日時:平成30年02月14日(水)16:00 ~ 18:30
  場所:済生会新潟第二病院 眼科外来

 2月の勉強会は、5名の方に講演して頂きました;小林 章(日本点字図書館:歩行訓練士)、大石華法(日本ケアメイク協会)、橋本伸子(白尾眼科:石川県、看護師)、上林洋子(盲導犬ユーザー;新潟市)、岩崎深雪(盲導犬ユーザー;新潟市)。順に講演要約をお送りしています。今回は、大石華法氏です。 

演題:「『ブラインドメイク物語』視覚障害者もメイクの力で人生が変わる!」
講師:大石華法(日本ケアメイク協会)
【講演要約】
1.安藤伸朗先生との出会いと勉強会
 2012年7月、視覚障害リハビリテーション協会でブラインドメイクのポスター発表をした際に初めて安藤伸朗先生と出会いました。その運命の出会いから済生会新潟第二病院眼科勉強会に厚かましくも3回お話させていただきました。その勉強会も次回、第254回(平成30年3月14日)安藤伸朗先生自らのご講演、「これまでのこと、これからのこと」の演題を最後にして大きな節目が来ようとしています。
 264回の回数を安藤先生個人で継続開催することは私の想定を超えています。感銘以外の言葉が見つかりません。また1回1回の積み重ねで成り立つ264回という数字に計り知れない歴史と深い重み、そして安藤先生の情熱を感じます。その中で第228回、第240回、第253回に「ブラインドメイク」を中心とした題材でお話させていただけたことはとても光栄なことでした。
 この貴重な経験は、ブラインドメイクをとおして多くの視覚障害の方々と携わらせていただいたことで完成した「ブラインドメイク物語」と共に、私の人生の大切な宝物とさせていただきます。心よりお礼を申し上げます。 

2.“視覚障害の女性”ではなく “一人の女性”として
 視覚に障害のある女性から「人から化粧してもらうのではなくて、自分でしたい!」という言葉を耳にして、2010年に鏡を見なくても自分自身で化粧(フルメーキャップ)ができるブラインドメイクを考案しました。このプログラムは手指で化粧することができることから視覚障害者に受け入れられ、多くの視覚に障害のある方々が自分で化粧できるようになりました。
 受講者からは「お化粧すると心がウキウキします」「若返った気がします」「できないと思って諦めていた化粧ができると、楽しくて仕方がない」「顔を上げて歩けるようになりました」「お声掛けが多くなりました」「社会が優しくなったように感じます」「家族も喜んでくれています」「彼氏ができました」など耳にするたびに感動しました。
 この感動と共に大きな気付きがありました。それは、視覚に障害のある女性を“視覚障害の女性”という障害者の代名詞のような呼び方ではなく、また目の病気のために眼科へ通院する“一人の患者”ではなく、“一人の女性(レディー)”として接することの大切さでした。
 この気付きからさらに新しい気付きがありましした。それは、晴眼者であるの“私の声”ではなく、視覚障害者の“当事者の声”を社会へ届けなければならないことでした。そして、その当事者の声こそが社会を変え、世界の人たちの気持ちを変えることができる“力強い声”であることに気付くことができました。 

3.ブラインドメイク物語
 2017年8月に、その想いを1冊の書籍にして世に出すことができました。7名の視覚に障害のある女性たちがこれまでの自らの人生を振り返り、ブラインドメイクとの出会い、そしてそこから新しい自分を発見し、積極的な生き方をするという視覚障害者のストーリー(物語)、「ブラインドメイク物語」です。
 視覚に障害がある女性である前に“一人の女性(レディー)である”ことを伝えたかった。その想いが1冊の本になり、メディカ出版から発売が叶いました。また、本書の推薦者として、これまで実際にブラインドメイクをご覧になられて感動され、「視覚障害のQOL向上のためにブラインドメイクは必要!」とブラインドメイクを応援していただいている先生方に、「推薦の言葉」を執筆していただきました。
 安藤伸朗先生「ブラインドメイクは魔法なのか?」から始まり、松久充子先生「ブラインドメイクとの出会い」、久田まり子先生「化粧する手」、平野隆之先生「物語から当事者研究への発展を予感させます」、そして帯メッセージには田淵昭雄先生「女性として『生きる』、人として『活かす』 ブラインドメイク」です。真心執筆をしていただくことも叶うことができました。 

4.当事者の熱い想いは世界へ
 初版が1か月で完売されて増版となり、視覚障害者の読者がサピエで多く読んでいただいたことから上位に入りました。図書館や海外からも多くの取り寄せがあります。その中で、「ブラインドメイク物語」の第7編を執筆した全盲の女性が次のことを私に言ってきました。「視覚障害者は日本だけではありません。世界中にいます」「私と同じ思いをしている世界中の視覚障害者にブラインドメイクを知ってもらいたいのです」「ブラインドメイク物語を英語に翻訳させてもらっていいですか?」「英語に訳す時には視覚障害者でしか分からない微妙な英訳などがあるのです。私は当事者なのでよく理解できています。だから私に英語の翻訳をやらせてください!」この彼女の熱い想いに感動しました。
 今、「ブラインドメイク物語」の書籍は、日本語から英語へ、韓国語、中国語に翻訳されています。そして、ブラインドメイクDVDは、日本語、英語、韓国語、中国語、スペイン語に翻訳されて発売されています。今年はブラインドメイクができるようになった視覚障害者の女性たちによって「世界にブラインドメイクを広げよう!プロジェクト」が発足され、毎年1か国ずつ海外の視覚障害の女性たちとブラインドメイクをとおした国際交流会が開催されることがメディカ出版と企画されています。Made in Japanのブラインドメイクは、既に日本の国境を越えて、当事者の力によって世界に広がっています。  

【略 歴】
 1995年 中央大学 法学部法律学科 卒業
 2010年 大阪中央理容美容専門学校 卒業
 2010年 日本ケアメイク協会 代表
 2015年 日本福祉大学大学院 福祉社会開発研究科 博士課程
 2016年 一般社団法人日本ケアメイク協会 理事長
            日本福祉大学福祉社会開発研究所 研究員
 

【参加者の感想】
・ブラインドメイクも魔法なら、関西弁の軽妙なトークも魔法のようで思わず引き込まれてしまいました。早速「ブラインドメイク物語」を購入し読んでいます。患者様ひとりひとりの人生にブラインドメイクを通して向き合っておられて素晴らしいと思いました。さらに世界に発信していっていただきたいです。(神奈川県;眼科医)
・視覚障害者とブラインドメイクで関わってまだ1年半の私にとって、こちらの勉強会は新たな発見であり、出会いでもありました。メイク講師、化粧訓練士として健常者、高齢者、障害者へ社会への関わり方をサポートしていけるように、これからも精進していこうと強く思い、皆様から元気もいただきました。ありがとうございました。(兵庫県;ボランティア) 

【後 記】
 「自分でお化粧したい」という視覚障害者の声を聞いて、鏡を見なくても自分自身で化粧(フルメーキャップ)ができる化粧方法を開発。視覚障害者が生き生きと生まれ変わることを実感。7名の視覚に障害のある女性たちが、化粧と出会い、新しい自分を発見し、積極的な生き方をするという視覚障害者のストーリー(物語)、「ブラインドメイク物語」を出版した。「ブラインドメイク物語」は、初版が1か月で完売されて増版、英語・韓国語・中国語に翻訳されているという。まさに破竹の勢いだ。
 ロービジョンケアはハンディを乗り越えて人間らしく生きるというイメージがあるが、大石さんの視覚に障害のある人が鏡を見なくても自分自身でフルメーキャップできる化粧には、視覚障害者の方のみでなく家族及び支援者をも巻き込んだ活き活きとした笑顔に包まれた熱気を感じる。こうした明るいパワーで大いに視覚障害者の世界を変革して欲しい。 

 

第264回(18-02)済生会新潟第二病院眼科勉強会「ささえ、ささえられて」
講師と演題
1.小林 章(日本点字図書館:歩行訓練士)
 「空気を感じて歩く楽しさと  少しでも楽に歩ける視覚活用方法を伝えること」
  http://andonoburo.net/on/6438
2.大石華法(日本ケアメイク協会)
 「『ブラインドメイク物語』視覚障害者もメイクの力で人生が変わる!」
3.橋本伸子(白尾眼科:石川県、看護師)
 「これからのロービジョンケア、看護師だからできること」
4.上林洋子(盲導犬ユーザー;新潟市)
 「生きていてよかった!!」
5.岩崎深雪(盲導犬ユーザー;新潟市)
 「私のささやかなボランティア …」  

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『済生会新潟第二病院 眼科勉強会』
 1996年(平成8年)6月から毎月欠かさず265回続け、2018年(平成30年)3月で終了しました。
 この勉強会は誰でも参加出来ました。話題は眼科のことに限らず、何でもありでした。参加者は毎回約20から30名くらい。患者さん、市民の方、医者、看護師、病院スタッフ、学生、その他興味のある方が参加しました。眼科の外来で行いますから、せいぜい5m四方の狭い部屋で、寺子屋的な雰囲気を持った勉強会でした。ゲストの方に約一時間お話して頂き、その後30分の意見交換がありました。
  日時:毎月第2水曜日午後 
  場所:済生会新潟第二病院眼科外来  

*勉強会のこれまでの報告は、下記でご覧頂けます。
 1)ホームページ「すずらん」
  新潟市西蒲区の視覚に障がいのある人とボランティアで構成している音声パソコン教室ホームページ
  http://occhie3.sakura.ne.jp/suzuran/
 2)済生会新潟第二病院 ホームページ
   http://www.ngt.saiseikai.or.jp/section/ophthalmology/study.html
 3)安藤 伸朗 ホームページ
   http://andonoburo.net/