報告:第76回(2002‐9月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 清水美知子
2002年9月10日

報告:第76回(2002‐9月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 清水美知子
 日時:2002年9月11日(水)16:00~17:30
 場所: 済生会新潟第二病院  眼科外来
  演題:「Coming out —-人目にさらす」
  講師:清水美知子 (信楽園病院視覚障害リハビリ外来担当)

【抄 録】
 視覚障害を持つ自分を世間はどう受けとめるのか?自分の記憶の中にある視覚障害者は、杖を突いて、黒メガネをかけて、電柱や自転車に当たりながら歩いていた。自分もあのようになるのだろうか。世間の人の目に自分はどう映るのだろうか。

 世間は視覚障害を持つ人に好奇の眼差しを注ぎ、蔑み、憐れみ、無関心、同情、冷淡、お世辞など様々な心情を示します。世間の人にとって視覚障害者は珍しいのです。視覚障害者と言葉を交わしたことがないのです。視覚障害者に「テレビを見ますか?」と尋ねることを躊躇するのです。ひとりで歩く視覚障害者を見て、「カンがいい」で簡単に片付けてしまいます。「眼が見えないのに明るい」と驚きます。視覚障害者は「点字が読める」と思っています。断ってもついてくる不要な手助け、呼び掛けに応えない群集、ガイドに自分の体調をきく看護婦、入居を拒む大家など、世間には無知、無理解、人権軽視の態度があふれています。

 coming out はこのような世間へ踏み出すことです。視覚障害を持つ自分をさらし、人々の反応を見るのです。そして新しいセルフイメージを確立していくのです。世間の視覚障害者のイメージに挑戦するのです。既存の鋳型にはめようとする世間と、ひとりの人間として生きようとする者の衝突です。

【略 歴】
 1976 歩行訓練士
 1979 ~ 2002 江南施設施設長
 1988  信楽園病院視覚障害リハビリテーション外来担当 

【後 記】
 今回は人気の清水美知子先生が講師だったため、いつもより多くの40名を越える(当院の職員を含めると50名を越える)方が参加されました。巻町の団体、西川町からの団体、信楽園病院パソコン教室の皆様等々、今回始めて参加された方も大勢いらっしゃいました。外来の視力検査のスペースを利用しているものですから、会場はそんなにひろくはありません。清水先生と一番近い方は、わずか80cmくらいのところでの聴講でした。場所の狭さと、話の面白さで熱気むんむんの勉強会でした。
 「Coming out かみんぐ-あうと」を、人目にさらす、自分になると定義して講演は始まりました。障害者が世間からどうみられているか、医療福祉関係者はどう見ているか、ボランティアに問題はないか、障害者は必要以上にへりくだっていないか、自分を見えにくくしているものは何か、障害者が自分を出そうとする時に衝突する世間の期待している障害者像、、、、、、等々。最後に、世間を変えるためには自分を変えることが重要と結びました。
 講演終了後の質疑でも「白杖歩行に抵抗がある」「障害者の方を手助けしたい時に、声を掛けられなかった」「今までモヤモヤしていたものをはっきり言って貰った」「世間よりも家族との関係が難しい」等々、多くの声を聞きました。本当にいろいろと考えさせられる勉強会でした。