報告:第190回(11‐12月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 (山口 俊光)
2011年12月15日

報告:第190回(11‐12月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 (山口 俊光
 演題:「新潟市障がい者ITサポートセンター4年間の活動報告」
 講師:山口 俊光 (新潟市障がい者ITサポートセンター)
  日時:平成23年12月14日(水)16:30 ~ 18:00 
  場所:済生会新潟第二病院 眼科外来  

【抄 録】
 新潟市障がい者ITサポートセンター4年間の活動を紹介します.
 障がいのある人々の学習や生活に役立つ支援技術の導入・活用を支援する新潟市障がい者ITサポートセンターは2011年度で開設から4年目を迎えました. 

 開設初年度に行った調査で,新潟市内では支援技術が障がい者に「使われていない」のではなく「知られていない」という状況が明らかになりました.その後,大きな方針転換を迫られた我々は障がい者の多くが通過していく病院と学校に照準を定め積極的な「営業活動」を行いました.つまり,病院や学校に直接出向きリハビリテーションや特別支援教育の現場にいる人々に支援機器を紹介して歩くわけです. 

 この「営業活動」は功を奏し,初年度には月に十数件電話がある程度だった当センターは,常時20件ほどの支援課題を抱え,電話やメールなどによる問い合せは月50件を越えています.2011年6月には開設以来初めて訪問サポートの依頼が月20件を越えました. 

 我々が行っている活動には,重度の肢体不自由の方が使う意志伝達装置の導入支援,視覚障害者のためのPC教室,リハビリテーションにおける作業療法士等への支援,特別支援教育現場における個別の指導計画の立案と機器選定の支援,病院・特別支援学校における研修の講師などがあります.支援技術だけを取り扱っているのではなく,周辺環境の整備にも関わって活動しているのが特徴です.支援対象は就学前のお子さんから70代の高齢者までと幅広く,障害種別も視覚障害,肢体不自由,知的障害と多様です. 

 大学教授と兼任のセンター長,非常勤事務員,そして常勤の私.3名で運営されている小さなITサポートセンターとしてはまずまずのサポート実績ではないか,と思えるほどに成長したわけです.ITサポートセンターは2010年度末で第一期を終え,2011年度から第二期に入りました.増え続ける支援依頼を効率よく処理するための仕組みづくりが第二期の大きな課題です.

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*新潟市障がい者ITサポートセンター
 http://nitsc.eng.niigata-u.ac.jp/
 新潟市障がい者ITサポートセンターは,新潟市から業務委託を受け新潟大学内に設置された組織です.市内在住の障がい者の方や病院,特別支援教育からの求めに応じて,支援機器の利用・活用を円滑に行うための支援活動を行っています.新潟大学工学部福祉人間工学科教授をセンター長に,支援員と事務員からなる組織です.また外部から当センターのあり方について評価する評価委員会と内部でセンター運営を支援する運営委員会を設置しています. 

 

【後 記】
 参加した人は皆、大満足でした。「障がい者ITサポートセンター」、福祉関係の方がやっているのは多いと思いますが、工学部の方、すなわち物作りの方が行うことに特色があると思いました。
 工学部と、福祉人間工学部の違いを感じる場面もありました~スイッチひとつを変えようとする提案も、患者さんは病気のステージが上がったのではないかと心配してしまうという、ためらうことがあるとのことでした。
 ニーズを知ることは難しいことです。インタビューだけでは知ることはできません。しかし、ひとつできると、次から次へとニーズもより深くなり、変容してきます。
 技術的な正解が、利用者の求めているものとは限らないことを知ることも必要です。そして何より支援は、組織的対応が大事であrことを学びました。
 この活動は、多くの人が知るべきものと思いました。