報告:第80回(2003-01)済生会新潟第二病院眼科勉強会 宮坂道夫
2003年1月8日

報告:第80回(2003-01)済生会新潟第二病院眼科勉強会    宮坂道夫
  演題:『ファミリーハウス』
  講師:宮坂道夫(新潟大学医学部准教授)
    日時:平成15年01月08日(水) 16:30 ~ 18:00
    場所:済生会新潟第二病院 眼科外来

【抄 録】
(1)ファミリーハウスの紹介

「にいがたファミリーハウスやすらぎ」は、新潟市内の病院に入院する患者さんの付き添いをされる家族のための滞在施設です。善意の方からお部屋を提供していただき、市民、企業、団体などの支援を受けて開設されました。各病院の理解、協力のもと、「にいがたファミリーハウスやすらぎ支援の会」が責任をもって管理、運営しています。入院したその日からすぐにご利用できます。これまでご利用いただいた方からは、「ゆっくり手足をのばせるその事が、とても有り難かったです」、「夜すべてを終えてこのハウスに帰り、ホッとした心のやすらぎは、何ものにもかえがたいものでした」などの声が寄せられています。(以上、当会のパンフレットより)

*詳細については、ホームページがありますので、そちらをご覧いただくのがよいかと思います。アドレスは以下の通りです。
http://www.ng-familyhouse.npo-jp.net/index2.html

 

(2)今回の話のあらまし

1)ファミリーハウスとは?
 病院中心の医療制度のもとでは、効率よく治療が行われ一方で、「治療やケアの場」と「生活の場」が隔絶しがちになります。病院や医療施設という特別な場所へ、家という普段の生活の場を離れて、治療のために「移住」しなければならないわけです。特に慢性疾患中心の現代では、この隔絶は患者とその家族にとって深刻な問題を生んでいます。専門的な治療を受けられる病院に、家を遠く離れて入院しないといけないことも多い。しかも療養には長い時間がかかる。その間、患者と付添の家族は、生活の場から離れて過ごさねばならず、生活の上で非常に負担がかかってくることになります。例えば宿泊はどうするか、子供の教育はどうするか、お金はどうするのか ・・・。

 残念ながら、日本の保健医療制度ではこうした面まではカバーしきれていません。そこで、ファミリーハウス活動が始まったわけです。「病院」の近くに、「家」に近いものを作り、そこで患者をささえる付添者のために「生活の場」を提供しようというアイデアです。ただし、一口に「ファミリーハウス活動」といっても、宿泊・滞在施設の提供だけのところもあれば、相談事業を展開しているところもあり、さらに幅広いサービスを提供しているところもあり、その実態はとても多様なものです。 

2)新潟でのファミリーハウス活動
 児玉義明・にいがたファミリーハウスやすらぎ支援の会・会長から、会の立ち上げ、実際の運営などについてお話させていただきます。これまで多くの方のご協力により、民間アパートの部屋を借りて、ハウスを運営しています。利用された方からはとても感謝されている活動ですが、マンパワー不足、一般市民の関心の低さなど、克服しないといけない問題もあります。

 

【後 記】
 私が始めて「ファミリーハウス」を知ったのは、昨年(2002年)9月29日「にいがたファミリーハウスやすらぎ支援の会」主催の『第1回命(いのち)のシンポジウム』でした。

 宮坂道夫先生(新潟大学医学部保健学科;当時講師、1月1日より助教授)がコーディネーターをされ、児玉義明氏(にいがたファミリーハウスやすらぎ支援の会会長、新潟大学での生体肝移植を受けた第一号)の講演がありました。遠方から入院されている患者家族のために宿泊施設を低料金で提供という、とても素敵なアイデアでした。世の中にこんなことに頑張っている方がいるのかと、感動しましたし、新鮮でした。

 今回、当勉強会でもお話して頂くよう宮坂先生にお願いしたところ、快くお引き受け頂き、またにいがたファミリーハウスの会員の方にも参加を呼び掛けて頂きました。さらに私にとって嬉しかったのは、難病を抱えながらもほのぼのとした心癒される色鉛筆画を書き続けている羽田沙織さん(白根市在住)にも参加頂いたことでした。

 宮坂先生の講演で「ファミリーハウス」について説明して頂きました。ヨーロッパでの状況、日本での状況(1988年に大阪で最初に開設)、そして新潟での現状と課題。必要なのは、施設、資金、労力、そして何よりも必要性の認識。白山駅近くに2001年7月に開設。以来利用料1500円という低料金で頑張っているとのことです。全国的には国や自治体の支援を受けているところ、病院と直結しているところ、企業から支援を受けているところなどあるそうですが、新潟の場合、運営は全てボランティア。

 終了後会場からは、素晴らしい事業であるという賞賛と同時に、いくつも質問がありました。この料金でペイは大丈夫か?これは病院なり自治体で頑張ってもらうべきものではないのか?ボランティアだけでは大変なのでは?米国では病院の周りに安い宿泊施設がありその負担は患者がするが、、、。患者自身の利用や、外来通院への利用は可能か?宣伝が少ないような気がする、、、、、。ニーズの掘り起こしが必要では?インターネットでの申し込みは出来ないのか?全国的な連絡網はないのか?そもそも子供が長期間家族から離れて暮さなければならない入院治療に問題があるのでは、、、、等々。

 宮坂先生はじめ、にいがたファミリーハウスやすらぎ支援の会の皆様、ありがとうございました。