新潟ロービジョン研究会2014 (第2回ご案内)特別講演1
演題 日本におけるロービジョンケアの流れ:日本ロービジョン学会の設立前
講師 田淵昭雄 (川崎医療福祉大学感覚矯正学科)
【講演抄録】
2000年4月の第1回日本ロービジョン(以下、LV)学会学術集会での基調講演で、丸尾敏夫帝京大学教授は「・・日本におけるLVへの眼科医の対応は1929年にはじまり、弱視学級が作られた。近代的なLVの医療、教育、社会や行政への対応は40年前から始まり、30年前にはすで確立していた.」と述べられた。すなわち、1929年に小柳美三東北大眼科教授がLV児の特殊教育の必要性を訴え、1933年に南山尋常小学校(東京麻布)に全国初の弱視学級が開設された。戦後になって傷痍軍人など中途LV者のための更生施設開設と共に、1960年前後に原田政美、大山信郎、湖崎克ら眼科医の活動によって学校教育の中に弱視教室が実現した。LVケアも斜視弱視外来に取り入れられ、1964年には順天堂大学や岡山労災病院の眼科外来にLVクリニックが設置された。
しかし、当時は眼科医主導のLVケア施設数が少ないこと、何よりもLVケアへの眼科医の関心の低さなどから、全国的には多数のLV者が眼科医療からLVケアへ繋がれることなく放置されていた。演者が1970年代に兵庫県立こども病院在職中は、LV児は東京都心身障害者福祉センター(1968年に開設)で指導してもらった。地元でのLVケアの必要性を理解していた眼科医師はいたが、1970年以降の白内障眼内レンズ挿入術や網膜硝子体手術など眼科医療・研究の急速な発展と、それに追付こうとする気運が勝り、一般眼科医にはLVケアは念頭になかったといえる。
ところが、高齢者社会の到来と共に中途LV者の増加が次第に地域LVケアへの転換の気運を生み出した。一方、1991年から年1回開催される国立身体障害者リハ・センター(簗島謙次眼科部長)での「視覚障害者用補装具適正医師研修会」に受講した全国各地の若手眼科医による職場(地域)での活躍が年々活発化した。そして、彼らが核となり、眼科医療関係者以外の教育、看護、福祉、保健や行政その他など広い領域による学際的な組織として2000年「日本ロービジョン学会」が創設されたのである。
【略歴】 田淵昭雄
昭和43年(1968年) 3月 神戸大学医学部卒業
昭和45年(1970年) 7月 兵庫県立こども病院眼科勤務
昭和52年(1977年) 5月 川崎医科大学 助教授 (眼科学)
平成 元年(1989年) 9月 川崎医科大学 教授 (眼科学)
平成 4年(1992年) 9月 川崎医療福祉大学 教授(感覚矯正学)併任
平成 16年(2004年) 12月 川崎医科大学 教授 退職
平成 17年(2005年) 4月 川崎医科大学名誉教授
平成23年(2011年) 4月 日本眼科学会名誉会員
平成25年(2013年) 4月 川崎医療福祉大学 特任教授
役職:日本ロービジョン学会理事長:
平成12年(2000年)4月~平成22年(2010年)3月
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済生会新潟第二病院では、「新潟ロービジョン勉強会」を2001年4月に開始、2003年4月の第4回からは「新潟ロービジョン研究会」と改称して13年間で14回(2001年のみ2回開催)開催しています。
今年は、我が国の視覚障害者のリハビリの歴史を振り返り、現状を把握し、さらに今後の展開を語りたいと思います。
特別講演は、「我が国のロービジョンケア 過去・現在・未来」をテーマに3題予定しました。講師は、日本ロービジョン学会を支えてこられた3名の歴代ロービジョン学会理事長で、田淵昭雄先生(初代理事長)これまでの歴史を、、高橋広先生(第2代理事長)現在の現状と問題点を、加藤聡先生(第3代、現理事長)将来の展望を語って頂きます。
シンポジウム「我が国のロービジョンケアを語ろう」では、吉野由美子先生(視覚障害リハビリテーション協会)に当事者の立場で、八子恵子先生(北福島医療センター)に一眼科医の立場で、山田幸男先生(新潟オアシス;内科医)に視覚リハビリの先駆者として述べて頂きます。歴代の3名の日本ロービジョン学会理事長にはコメンテーターとして参加して頂き、会場も含めての討論にしたいと思っています。
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【新潟ロービジョン研究会2014】
日時:平成26年年9月27日(土) 開場13:30 研究会14:00~18:40
会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
テーマ:「我が国のロービジョンケア 過去・現在・未来」
主催:済生会新潟第二病院眼科
要:事前登録制
14:00 開会の挨拶 安藤伸朗(済生会新潟第二病院)
14:05~16:20
1)特別講演 (各講演40分)
1.座長 山田幸男(新潟オアシス;内科医)
日本におけるロービジョンケアの流れ1:日本ロービジョン学会の設立前
田淵昭雄 (川崎医療福祉大学感覚矯正学科)
http://andonoburo.net/on/2714
2.座長 仲泊 聡(国立障害者リハビリセンター病院)
日本におけるロービジョンケアの流れ2:
ロービジョンケアからロービジョンリハビリテーションへ
-平成24年度診療報酬改定の意味するところ-
高橋 広(北九州市立総合療育センター)
http://andonoburo.net/on/2780
3.座長 安藤伸朗(済生会新潟第二病院)
本邦におけるロービジョンケアの課題と将来への展望
加藤 聡(東京大学眼科准教授)
http://andonoburo.net/on/2799
16:20~16:40 コーヒーブレイク
16:40~18:20
2)シンポジウム「我が国のロービジョンケアを語ろう」
座長 仲泊 聡(国立障害者リハビリセンター病院)
安藤伸朗(済生会新潟第二病院)
シンポジスト (各講演20分)
1.吉野 由美子 (視覚障害リハビリテーション協会)
「ロービジョン当事者として相談支援専門家として
我が国のロービジョンケアの未来に対する夢を語る」
http://andonoburo.net/on/2875
2.八子恵子 (北福島医療センター)
「一眼科医としてロービジョンケアを考える」
http://andonoburo.net/on/2889
3.山田 幸男 (新潟県保健衛生センター;信楽園病院 内科)
「私たちの視覚障害リハビリテーション」
コメンテーター
田淵昭雄(初代日本ロービジョン学会理事長)
高橋 広(第2代日本ロービジョン学会理事長)
加藤 聡(第3代、現日本ロービジョン学会理事長)
18:20~18:40 adjourn アジャーン
(参加者全員で)会場整理
参加者同志の意見交換
18:40 閉会の挨拶 仲泊聡(国立障害者リハビリセンター病院)
解散
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参加は、どなたでも出来ますが、会場準備の都合上、事前登録が必要です。
詳しくは後日ご連絡致します。