報告【新潟ロービジョン研究会2017】  3)山田幸男先生
2017年12月28日

報告【新潟ロービジョン研究会2017】 3)山田幸男先生
  日時:2017年09月02日(土)
   会場:新潟大学医学部 有壬記念館 2階会議室 

「新潟ロービジョン研究会2017」から、山田幸男先生の講演要約をアップします。
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演題:眼科医と生活訓練士を中心に多職種が集まった、なんでもありの私たちの視覚障害リハビリテーション
講師:山田 幸男(新潟県視覚障害者のリハビリを推進する会、NPO障害者自立支援センター「オアシス」、信楽園病院内科)
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【講演要約】
1.眼科医赴任を待つリハビリ外来開設までの10年間
 私たちの視覚障害リハビリのきっかけは、1984年の糖尿病網膜症で失明した35歳男性(O君)の自殺でした。O君のような患者が周囲にたくさんいたため、次の自殺者を防ぐために、O君の自殺原因を検討する必要がありました。
 O君の生前の入院生活を振り返ると、トイレやナースステーションに行くときはもちろんのこと、食事をするときも常に奥さんの介助が必要でした。そのため奥さんは働くこともできず、経済的に困り、「俺さえいなければ」と死の道を選んだのではないかと考えました。もしO君が、自分で歩き、自力で食事ができたら、奥さんは働くことができ、自殺は防げていたのかもしれません。 
 当時、眼の不自由な人のリハビリが行われていることは私は知りませんでした。周囲の眼科医を含む医療関係者も知らない、聞いたことがないとの返事です。「視覚障害リハビリはまだないのかも?」頭の中がもやもやした日々が続きました。それを解消したのが、糖尿病学会での清水先生の講演でした。リハビリはすでに行われていたのです。すぐに先生のベーチェット協会江南施設を訪ねました。次いで全国にある主な施設も見学させてもらいました。
 そのリハビリですが、新潟県外の施設に行ってリハビリをやったことのある人が極めて少ないことと、病院内でリハビリを行ってほしいと答えた人が7割を占めたことから、リハビリは信楽園病院内で行うことを考えました。
 ところで、我々医療者が眼の不自由な人のリハビリの存在を知らなかったのは、医療(眼科診療)と福祉(リハビリ)の連携が不足していたためではないかと考えました。そのため、リハビリは眼科医と生活訓練士を中心に行うことが必要と考えました。ところが当院には常勤の眼科医が当時おりません。院長にお願いして大学からの赴任を待ちました。そして、1994年、待ちに待った眼科医、大石正夫先生が赴任してくださったのです。 

2.リハビリ外来の開設
 リハビリは、眼科医と関東のリハビリ施設の生活訓練士の先生を中心に、視能訓練士、糖尿病医、事務職員が担当しました。その後、看護師、栄養士、理学療法士、ケースワーカー、検査技師、ボランティアも加わり、月2日のリハビリ外来と、日常生活訓練を週4日行って、受診者の困ることに積極的に対応しています。 

3.心のケア
 眼が不自由になると、6割近くの人が一度は自殺を考えることや、半数の人がうつ病・うつ状態、すいみん障害、燃え尽きを経験したこと、家族などの介助者も同様の精神的なダメージが大きいことをアンケート調査で知り、家族を含めた心のケアの重要性を認識しました。その対応として、リハビリ外来、パソコン教室、グループセラピーや、我々の行う行事の中では心のケアを意識して運営を行っています。 

4.なんでもありのパソコン教室
 心のケアでもっとも大きな力になっているのがパソコン教室です。教室開設当時の20数年前は、パソコンは障害者にとっても革命的な手段でした。文字の読み書き、メール、インターネットなどができるからです。そこで眼の不自由な人の集まる場を「パソコン教室」と命名しました。もちろんパソコンも教えますが、パソコンをやらない人もお茶のみや情報交換の場としても利用できます。歩行や調理、化粧の指導などなんでもありの教室です。このパソコン教室が、実は眼の不自由な人の心のケアに大きな役割を果たしてきました。時には利き手が使えない脳卒中患者に、眼の不自由な人がワードの使い方を習得して、脳卒中患者に教えたことは、視覚障害者の大きな自信となりました。
 その効果の大きさから、県内10数か所にパソコン教室を開設しています。 

5.転倒予防・体力増進教室を含めた歩行講習会
 もっと外に出たいとの声が多いため誘導歩行教室を、白杖を使っている人の6割が一度も白杖の使い方を教わったことがないことを知り白杖教室、さらに体力の低下が著しいことから転倒予防・体力増進教室を含めた歩行講習会を毎月行っています。最近の調査で、眼の不自由な人も誘導や白杖の技術を身に着けるべきだと考えている人が多いことを知り、その指導方法を検討しているところです。 

 以上、眼科医と施設の生活訓練士を中心にした、多職種のスタッフが集まり、障害者の要望に応える私たちの視覚障害リハビリについて紹介いたしました。
 

【略 歴】  山田幸男(やまだ ゆきお)
 1967年(昭和42年)3月 新潟大学医学部卒業
  同年       4月 新潟大学医学部附属病院にてインターン
 1968年(昭和43年)4月 新潟大学医学部第一内科に入局。内分泌代謝斑に所属
 1979年(昭和54年)5月 社会福祉法人新潟市社会事業協会信楽園病院
 2005年(平成17年)4月 公益財団法人 新潟県保健衛生センター 

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【新潟ロービジョン研究会2017】
 日 時:2017年09月02日(土)14時~17時50分
  会 場:新潟大学医学部 有壬記念館 2階会議室
     住所:〒951-8510 新潟市旭町通1-757
 主 催:済生会新潟第二病院眼科
 テーマ:「私と視覚リハビリテーション」
 1)司会進行
   加藤 聡(東京大学眼科)
   仲泊 聡(理化学研究所)
   安藤伸朗(済生会新潟第二病院)
  特別コメンテーター
   中村 透(川崎市視覚障害者情報文化センター)
   大島光芳(新潟県上越市)
2)プログラム
 14時00分~
   開会のあいさつ  安藤伸朗(済生会新潟第二病院眼科)
 14時05分~
  「眼科医40年 患者さんに学んだケアマインド」
     安藤 伸朗
     (済生会新潟第二病院眼科)
 14時40分~
  「眼科医と生活訓練士を中心に多職種が集まった、なんでもありの私たちの視覚障害リハビリテーション
     山田 幸男
     (新潟県視覚障害者のリハビリを推進する会、NPO障害者自立支援センター「オアシス」、信楽園病院内科
休憩(10分)
 15時25分~
  「眼科医オールジャパンでできるロービジョンケアを考える」
     清水 朋美
     (国立障害者リハビリテーションセンター病院眼科)
  http://andonoburo.net/on/6229
 16時00分~
  「ロービジョンケアとの出会い」 
     高橋 政代
     (理化学研究所CDB 網膜再生医療研究開発プロジェクト)
  http://andonoburo.net/on/6221
休憩(10分)
 16時45分~全体討論
 17時40分~討論総括   仲泊聡(理化学研究所)
 17時45分~閉会の挨拶  加藤聡(東京大学眼科)
 17時50分 終了