報告:『新潟ロービジョン研究会2015』 (5)渡邉 信子
2015年9月3日

新潟ロービジョン研究会2015は、「ロービジョンケアに携わる人達」をテーマに、8月1日(土)済生会新潟第二病院にて行いました。
「報告:『新潟ロービジョン研究会2015』」と題して、研究会での講演を順に報告しています。今回、渡邉 信子(盲学校教諭)さんの講演要約をご紹介します。

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報告:『新潟ロービジョン研究会2015』 (5)渡邉 信子
 演題:「新潟盲学校が取り組む地域支援」
 講師:渡邉信子 (新潟県立新潟盲学校 教諭)
  http://andonoburo.net/on/3990
    
【講演要約】
 本校は新潟県内全域の視覚に障害のある全ての対象者及びその関係者等に対し、本校が有する視覚障害教育を中心とした専門性について、教育的支援・情報等を提供することを目的として「相談支援センター」を分掌として位置付けている。この「相談支援センター」が中心となり、相談事業・啓発事業・小中学校等支援事業などのセンター的機能を果たしている。
本講演では相談事業と小中学校等支援事業を中心に紹介する。

(1)相談事業
 相談は電話・メール・来校・訪問等の方法で行われる。そして前述したように対象は視覚に障害のあるすべての対象者及びその関係者等であるので、その年齢や見え方、環境等によって相談内容も様々である。

 就学前の乳幼児とその保護者へは、まずその気持ちに寄り添い受け止めるところから始まる。少しずつ前向きに考えられるように一緒に考えながら就学へとつなげていく。

 小・中学生とその保護者でも低学年では学校生活について、中学年では学習内容の増加に伴う教科書の文字サイズや書字、板書等についてのより具体的な相談が増える。高学年や中学生になると進路に関する相談が多くを占める。このように学齢期といっても見え方や子どもの実態、学年や在籍する学校等によっても相談内容は変わってくる。

(2)小・中学校等支援事業
 インクルーシブ教育システム構築に向けた取組が推進する中、本校は新潟県教育委員会より、平成25・26年度、文部科学省特別支援学校機能強化モデル事業(特別支援学校のセンター的機能充実事業)の実践研究校としての指定を受けた。研究を始めるに当たり小・中学校等の教員(視覚障害児と関わる)のニーズを把握した。方法はアンケート形式を取り、その結果
 ①研修会への参加、
 ②継続的教育相談(本校では学習支援教室という)への参加、
 ③本校教員や外部専門家の訪問支援、
 ④本校の授業参観、
 ⑤Web会議システムの活用等があげられた。

 ①の希望する研修会内容については関わる児童生徒によって異なり、このことは視覚障害児者の実態がそれぞれ異なり、個々の対応が必要であることを明瞭にしたものである。それでも、可能な限りその希望に応えるため外部講師や本校教員による研修会の開催や教材紹介等を行った。
 ②の学習支援教室とは、点字・補助具活用・歩行・デジタル機器・遊び等の個に応じた支援を行うものである。平成26年度は年間7回実施し、小・中学校等で学ぶ児童生徒やその関係者が多く参加した。
 ③の訪問支援については本校職員に加え外部専門家の訪問も実現し、視覚活用の実態把握と教室環境の確認、補助具の活用と最新情報の提供等の支援を行うことができた。
 ⑤のWeb会議システム導入の目的は遠方の小・中学校等の支援である。設定までにいくつかの段階を踏まなければならないこと、セキュリティの観点から制限があること等課題は多く残ったが、支援に活用できるということは確認できた。

 また、本校は成人からの相談も多い。今後の見え方に不安をもっていたり、これからの人生を考えたいという思いをもっていたり、内容は眼疾や現在の見え方の状況によっても様々である。本校高等部専攻科の職員が中心となり相談に応じているところである。

(3)課題
 事業を通しての本校「相談支援センター」の実践は概ね高評価をいただいているが課題も多い。今後、地域の小・中学校で学ぶ視覚障害児が増加する一方、本校の在籍児童数の減少とそれに伴う教員の減少、また本校の専門性の維持向上等、このことは本校のみならず全国の視覚障害特別支援学校にとって大きな課題と言える。本校は全職員での研修への取組の強化等、さらに努力を重ねていかなければならない。


【略 歴】
 県内小学校で8年間勤務
 その後、聴覚障害・知的障害を中心とする特別支援学校に勤務
 現在、新潟県立新潟盲学校 勤務


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『新潟ロービジョン研究会2015』
 日時:平成27年8月1日(土)14時~18時
 会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
 主催:済生会新潟第二病院眼科
 テーマ:「ロービジョンケアに携わる人達」

【プログラム】
14時~はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
14時05分~特別講演
  座長:加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
  『世界各国と比べた日本のロービジョンケア』
    仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  http://andonoburo.net/on/3843

15時~パネルディスカッション ~ 『ロービジョンケアに携わる人達』
  司会:安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
     仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  1)眼科医が行うロービジョンケア
    加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
   http://andonoburo.net/on/3923

 2)NPOオアシスでやってきたこと、行っていること
    山田 幸男 (新潟県保健衛生センター;信楽園病院 内科)
   http://andonoburo.net/on/3952

 3)ロービジョンケアにおける視能訓練士の関わり
    西脇 友紀(国立障害者リハビリテーションセンター病院;視能訓練士)
  http://andonoburo.net/on/3982

 4)新潟盲学校が取り組む地域支援
     渡邉 信子 (新潟県立新潟盲学校;教諭)
  http://andonoburo.net/on/3990

 5)盲導犬とローヴィジョン
    多和田 悟 (公益財団法人:日本盲導犬協会 訓練事業本部長 常勤理事)

 6)後悔から始まった看護師によるロービジョンケア
    橋本 伸子(石川県;看護師)

 7)嬉しかったこと、役立ったこと (患者の立場から)
     大島 光芳 (上越市;視覚障がい者)