新潟ロービジョン研究会2015は、「ロービジョンケアに携わる人達」をテーマに、8月1日(土)済生会新潟第二病院で行いました。研究会での講演を順次、報告しています。今回、大島 光芳(当事者、上越市)さんの講演要約をご紹介します。
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報告:『新潟ロービジョン研究会2015』 (8)大島 光芳
演題:嬉しかったこと役立ったこと(患者の立場として)
講師:大島 光芳 (上越市)
【講演要約】
2009年4月に大学病院眼科の廊下待合で妻がロービジョン外来の貼り紙を見つけ、その日に担当医を通じて予約してもらいました。6月に初受診するとこの先生なら大丈夫、この先生の言う通りにやって行こうと思いました。
7月に休職を開始、市役所を訪問。福祉課の保健師さんが応対され、障害者相談支援センターの相談員を紹介下さいました。相談員の支援で7月に障害者手帳を申請、8月下旬2級が交付(翌年5月1級)、9月に支援計画、10月に移動支援16時間、11月20時間へ更新、12月に通院介護13時間と家事援助10時間を追加。2010年10月に移動支援30時間へ更新。 これらの福祉制度を受けられたことで私は人生の隘路をくぐり抜けられたと感じています。キーマンは相談員と保健師さんでした。「障害者手帳の取得」の先にこんな社会資源と福祉制度があることを知って頂きたくて話しました。
当時を振り返ると、お盆が過ぎると陽射しが弱まり気持ちが優しくなりました。両親の言葉を思い出し、余計なことを考えないで、とにかく忙しく、忙しく過ごせば何とかなるだろうと思っていた記憶があります。10月にサービス提供先のチーフがいいました。「移動支援ではいつでもどこへでも何にでも出かけられます。楽しみに出かけましょうね。」。この言葉を受け、私は12月の東京通院を予約しました。 しかし、この事業所は市外でのサービス提供ができませんでした。相談員が通院介護と県外へも出かけられる事業所を用意してくれました。
奮い立とうとする気持ちの一方で保育園児のような気分もありました。妻がちょっと近くだからと黙って出ようとすると「どこへ行く」と後追いしました。それと、務めていたから誰とも話せない時間がどうにも堪りません。つのる寂しさに耐えきれず相談員に訴えました。お昼に弁当を購入して届けてもらうと、日中に少し話ができただけで取り残された感覚が消えました。 これは相談員が家事援助は奥さんがいるから駄目ですと言っていたのに対して「これは食う食わないの問題ではないです。生きるかどうかなのです。」と私が言うと、やってみましょうと回答し、交渉してくれたおかげでした。
2010年1月に保健師さんが両方の提供先と相談員を私の家に集めてサービス提供会議を開催してくれました。3月の会議では4月から新潟大学病院通院は通院介護でホームヘルパーさんと一緒に列車で行くことが認められました。毎月のこの経験があったから10月には新潟市へも1人で出かけることができたのでした。 直江津駅から列車内を一人で2時間過ごして、新潟駅からは新潟市のガイドヘルパーさんの移動支援で動き出すと、次々と新展開が待っていました。
ケアを受けた後に私達が社会資源とどうかかわるかを知って頂く事が患者の立場だと思い至り、急遽タイトルで予定していた内容を変更し話しました。 相談員も汲み取って下さる人ばかりとは思えません。また許諾機関を説得するのが必ずしも得意でないかも知れません。保健師さんも状況によってはできない場合もあります。その時に患者はどうしたらいいのかを考えて頂きたいのです。その時に、このようなケースもあったと知っていて欲しかったのです。
【略 歴】
1950年に生まれ、64年に直江津市中学校新人戦野球大会で準優勝
2009年 新潟大学ロービジョン外来受診、その日に新潟県点字図書館登録
NPO法人新潟県障害者自立支援センターオアシス 利用会員
2010年 任意団体 上越市視覚障害者福祉協会 会員
2011年 社会福祉法人 新潟県視覚障害者福祉協会 会員
任意団体 新潟県中途視覚障害者連絡会 会員、日本点字図書館登録
2013年 視覚障害リハビリテーション協会 会員
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『新潟ロービジョン研究会2015』
日時:平成27年8月1日(土)14時~18時
会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
主催:済生会新潟第二病院眼科
テーマ:「ロービジョンケアに携わる人達」
【プログラム】
14時~はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
14時05分~特別講演
座長:加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
『世界各国と比べた日本のロービジョンケア』
仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
http://andonoburo.net/on/3843
15時~パネルディスカッション ~ 『ロービジョンケアに携わる人達』
司会:安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
1)眼科医が行うロービジョンケア
加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
http://andonoburo.net/on/3923
2)NPOオアシスでやってきたこと、行っていること
山田 幸男 (新潟県保健衛生センター;信楽園病院 内科)
http://andonoburo.net/on/3952
3)ロービジョンケアにおける視能訓練士の関わり
西脇 友紀(国立障害者リハビリテーションセンター病院;視能訓練士)
http://andonoburo.net/on/3982
4)新潟盲学校が取り組む地域支援
渡邉 信子 (新潟県立新潟盲学校;教諭)
http://andonoburo.net/on/3990
5)盲導犬とローヴィジョン
多和田 悟 (公益財団法人:日本盲導犬協会 訓練事業本部長 常勤理事)
http://andonoburo.net/on/3999
6)後悔から始まった看護師によるロービジョンケア
橋本 伸子(石川県;看護師)
http://andonoburo.net/on/4007
7)嬉しかったこと、役立ったこと (患者の立場から)
大島 光芳 (上越市;視覚障がい者)
http://andonoburo.net/on/4013