報告:『新潟ロービジョン研究会2016』 参加者から
2016年12月21日

報告:『新潟ロービジョン研究会2016』 参加者から
  日時:平成28年10月23日(日)
  場所:有壬記念館(新潟大学医学部)
 新潟ロービジョン研究会2016を、10月23日(日)有壬記念館(新潟大学医学部)で行いました。今回報告の最終回で、参加された方々からの感想の一部を紹介します。 

・過去から、現在進行形の話題、さらには将来をどうしてくのか、という「ロービジョン近代史」的な授業のようでとても楽しめました。患者から学ぶという姿勢は医療技術やIT技術が進んでも変わらないものですね。山田先生のお話、「体力増進」をこれからも提唱していきたいです。眼科医の視野を広げないとロービジョンケアの将来も狭窄してしまいそうです。後継者の育ちにくい分野なのでしょうか。もともと外科系だから興味を惹かないのかもしれません。眼科という科の特性が邪魔している気もします。出田先生の日頃の備え重要!印象に残りました。実体験が聞けてありがたかったです。今回は感情的な内容でなくてとても聞きやすく、また当時の状況が時系列でわかりやすく、聞けてよかったぁと思っています。ロービジョンケアは「機器選定」と思っておられる眼科医が大半です。「機器選定外来ではなないし、繋げることの良さ」を知ってもらいたいと改めて感じた週末でした。(埼玉県 眼科医) 

・今年に入り 日没後の外出には時に視力に不安を感じることもあり、貴重な機会を見送ることも多くなっておりました そんなときに昼の時間に、その上自宅のすぐ近くでのご案内で喜び勇んで出かけた次第です。前回までの研究会内容も、出席できなかった時には「報告」を読ませていただいております。今回の研究会での講演内容は、聞き手の身に「ひたひた」と感じられ、帰宅してからも身体に感触が残っているようです。厚く御礼申し上げます。(新潟市) 

内容が、iPadから盲学校設立の歴史、熊本震災まで多岐にわたり、面白かったです。iPadなど、医療者が考える利用法と、実際、ロービジョン患者が考えて便利だと考える利用法が異なるなど、目から鱗が落ちました。また、4つの盲学校の設立を聞いて、確か明治時代か、新潟県が全国屈指(1位だったかもしれません)の人口が多い県、それだけ豊かだったことを思い出しました。熊本震災は水の大切さ、バックルのような、最新の医療機器を使用しない手術の重要性が再認識されることも参考になりました。とても大変楽しかったです。(長野県 眼科医) 

・今回の新潟ロービジョン研究会2016では、何故か!最初の演題から涙が溢れました。年取ったのでしょう。視覚障害ではなくとも、いつか自身も色々な方々のお世話にならなければ!成るであろうと・・・実感しています。講演された方々については色々な書籍でお顔と実績だけは存じ上げておりましたが、生での講演は、ヤッパ一味・二味も違いました。残念なことは県内の眼科医療関係者の方々の参加が少なすぎでしょうか。(新潟市 医療関係者) 

1週間たってもなお、まだときどきメモを見直しながらその深い内容を見直している最中です。そのくらい内容も多彩でそれぞれが重厚な講演会でした。多治見スタディーにとどまらずますます広がる岩瀬先生のご活動のスケールの大きさに圧倒されたのをはじめ、すべての演者の方々と、講演の中で語られた眼科医達に共通して感じたのは、並々ならぬ熱い思いと使命感、実行力です。その熱い思いをそれぞれの強みをいかして実行してゆくこと、その積み重ねが違いを生むことをひしひしを感じさせていただきました。オリンピックでの選手たちの素晴らしいパフォーマンスから活力を与えられたのと同じように、演者の方々から元気をいただきました。また、それぞれの素晴らしい演者の方たちは、ご自身の弱みを見せることを怖れない、それはご自身の核をしっかりお持ちになっている強さを表している、と感じました。そして、多くの人と弱みや反省を共有することでより良いロービジョンケアにつながることへの強い願いを感じました。(東京 眼科医) 

・この度は、大変貴重なご講演を聞くことが出来ましてとても刺激になりました。憧れの橋本様とも名刺交換が出来ました。実践している方のお話は説得力があり久々に温かい気持ちになりました。私も初心に返って、今一度自分の役割を真剣に考えてみようと思っております。(神奈川県 看護師) 

・今回は特に前半の講演を拝聴した時点で、これからのロービジョンケアを考えさせられる会だと思いました。デジタルビジョンケアを主張される三宅先生に対し、山田先生や橋本さんのやっているロービジョンケアはアナログビジョンケアともいえるような、ロービジョンケアの原点に必ず必要なものであると感じました。時代が進歩してゆく中で、その時代時代に合わせたものは必要だと思いますし、ロービジョンケアの場合その代表たるものがデジタルビジョンケアの考え方なのでしょう。ロービジョンケアに時代が求めているもの(業)が何かと考えた時、それは三宅先生が追及されているものであるということは大変良く分かるように思います。 一方、時代がどんなに進んでいっても最新の技術を駆使しても対応できないものは世の中にいくらでもある訳で、それを思うときこれをカバーできるのは原点に対する考え方だと思いました。医師である先生方は、原点には人を救う、という概念が必ずあると思います。最近ではそうでない目的で医師を目指す若者が多いという話も聞きますが、ロービジョンに関わる先生方や医療職に就いている方たちはすべからく「醫の心」のもとに日々ロービジョンケアという、人を救う行為に邁進されていることと改めて感じました。これからしばらくの時代は、デジタルビジョンケアとアナログビジョンケアの融合した形でロービジョンケアが推進されるものと思います。(東京 障害者サポーター) 

・新潟ロービジョン研究会に初めて参加させていただきました。発表された先生方、また参加者の方々、県内の方をはじめ県外の方も多く参加されており県内規模の研究会ではないんだなと驚きました。私にとっては、眼科の分野は初めての領域ですので、今年は色々と勉強させていただいておりますが、今回の研究会でも多方面の視点からの発表を聞かせていただきとても参考になりました。看護の分野からの発表もあり、短期間の入院生活の中で退院後の生活を見据えて支援していく看護師の役割について改めて考えさせられましたし、それを具体的にどのように提供していくか考えていかなければならないと感じました。(新潟市 看護師) 

 ・とても豪華な講師陣でたいへん勉強になりました。何人かのお話は、まったく初めて聞くお話で、啓発されました。しらお眼科の橋本さんの「◎◎が関わればこんなに変わるロービジョンケア」、これはまさにどんな職種、どんな人でもあてはまることで、目からウロコでした。緑内障と闘う先生のお話も、初めて知り、驚くとともに、考えさせられました。(東京 パーソナリティー) 

・企画者と講師の先生方の繋がりが感じられるのがとても印象的な、温かい会だと思いました。ロービジョンケアは、私には馴染みのない分野で、単に三宅先生の講演を聞きたいというのが参加動機でしたが、シンポジウムの中でも産業保健に関わる話題もあり、思いがけず自分ごととしていろいろと考えるきっかけとなりました。橋下先生の「◯◯が関わると変わる、ロービジョンケア」という投げかけも、研究会が終わった後でも何度も思い出されます。ロービジョンケアが眼科医でもまだご存知ないかたもいらっしゃるとか、情報がないためにロービジョンケアに繋がれない現状は衝撃的でした。だとすると、 私が今回少しでも情報に触れることができたことは、必要な方と会った時に情報提供をしてあげられるということにつながるのだろうと思いました。県内でのロービジョンの方の就業状況などはわかりませんが、産業保健に関わる人や人事の方にもロービジョンケアの話を聞いてもらいたいと思いました。(新潟市 保健師) 

・他業界の私には本当に勉強になるお話ばかりでした。全体的にバランスの取れたプラグラムで、休憩なしの講演にもかかわらず、興味深く聞かせていただきました。私は建築系の仕事をしておりますが、今から17~18年前にユニバーサルデザインに出会いいろいろ勉強している身です。そんな事で、医療はもちろん福祉のこともよくわからずに仙台でもロービジョン勉強会に参加させていただいております。第1部の連携を求めてというテーマでのお話は身に染みるものがありました。中でも、いろいろ目線が大切という考え方に同感です。私の知らない業界の集まりに出かけても、皆さんと違う立場や視点で発言してしまい、何か違和感を感じていました。しかし、今回の研究会で少し気持ちが晴れた気がしました。特にトイレについては、一番大切な空間として考えております。公共のトイレは操作位置など、決まりがあるようになってきていますが、細かいボタン操作を要する機器のデザインはまちまちです。(同一メーカーでさえも…)多種職種、多業界の方々が同じテーマで話せる場があれば…みんなで大きな輪を作り、大きな声にならないか…などと、ワクワク・ドキドキさせられた一日でした。(仙台市 建築関係) 

・ロービジョン研究会ではそれぞれの先生が聞きごたえのある講演をされましたが、私にとって心に一番響いたのは三宅さんの「I LOVE ME になりなさい」というメッセージでした。三宅さんのお話全体がストレートな表現で、集中して聞けたこともあります。ただ、今なぜこんなに響いたかと考えると、日ごろDISLIKE MEな自分が気になっていたからと分かりました。会場の有壬記念館も居心地のよい空間で、若い方々にお世話になりました。ありがとうございました。また、大学周辺や新潟市内の木々の美しさにも目を奪われました。再び訪れる機会を持ちたと思っています。(川崎市 公務員) 

・デジタル機器の活用がもたらす意味、近代以降の視覚障害児教育の黎明期のお話、はたまた大地震・大災害を眼科としてどう乗り切ったかというテーマなどなど、「4時間半休憩なし!!」の勢いに圧倒されつつも、今後考えて動いていく上で参考になるキーワードや視点を各講演で聞くことができ、とても有意義な研究会でした。多(他)職種連携も大事ですが、他(多)地域連携もとても役に立つし、歴史に学ぶことも必要です。そんなことがすべて含まれた研究会だったように思います。また、組織・団体・施設……といろいろありますが、基本はその人その人の課題意識と行動が出発点であり原動力になることを再認識しました(もちろん、個々人の課題意識を共有・賛同し、一緒に動いていく人が複数いることは大事ですが……)。そのためには、チャンスがあるなら行動する、可能であれば直接話を聞く、(適度に)よく考える、というようなことが「元気の薬」になるんでしょう。(仙台市 社会福祉士)

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「新潟ロービジョン研究会2016を終えて」
 加藤 聡 (東京大学眼科)
 今年も新潟ロービジョン研究会に参加して、心地よい充実感とともに会を終了することができました。毎年夏に開催されている新潟ロービジョン研究会ですが、今年は日本ロービジョン学会学術総会が8月に新潟で開催されたこともあり、新潟ロービジョン研究会の開催は秋となり、開催場所もいつも行われている済生会新潟第二病院の講堂と異なり、新潟大学医学部同窓会の有壬記念館で行われました。この会の特徴として、一つは国内一流の演者が安藤先生のご提案された話題に沿って話をしていただくということと、視覚障害者の支援者が当事者とともに一同に会するということかと思います。
今回の研究会は大きく分けて3つのパートからなり、それらは「連携を求めて」「眼科医療と視覚リハビリ」「熊本地震を考える」でありました。個々の講演に関し感想をすべて述べたいところですが、思いつくままに感想を述べたいと思います。

 初めに看護師の橋本さんの話は、今後ロービジョンケアに看護師の働きが重要であると考えている私にとって勇気づけられるものとなりました。三宅先生の話はデジタルビジョンケアという私にとって新しい言葉が頭に焼き付きました。山田先生の話は、内科医でありながら目の不自由な人にどのように寄り添っていったかの歴史がよく分かり、先生の人柄を感じられるお話でした。

 岩瀬先生と言えば、多治見スタディとして知らない眼科医はいないほどの方ですが、その方が検診をどのように熱意をもって推し進めたことに感動しました。小西さんの新潟での盲教育の歴史の話は、昔より新潟県の方々がいかに視覚障害者の方に尽力されたかがわかりました。その中で、大先輩の眼科医が大きな役割を占めたことに自分の努力のふがいなさも感じました。佐渡先生の話は、日本にロービジョンケアが立ち上がる黎明期の話が聞け、私のようにロービジョンケアに関して新参者の身としては、改めてロービジョンケアに関しさらに学ばなければいけないと思わざるを得ませんでした。香川先生の話は原田政美先生の活躍を年度ごとに紹介し、改めて東大眼科の偉大なる先輩であることを痛感しました。

 最後の出田先生の話は、術者として本邦で屈指の眼科医が大地震の際に身を粉にして、患者、職員、住民のために働き、震災が落ち着いた今も支援活動を続けているという内容に頭が下がらないわけにはいきませんでした。この話は多くの眼科医に是非とも聞いてもらいたいと思いました。

 以上のように、今回の新潟ロービジョン研究会も内容も濃く、その後の懇親会での会話もとどまるところを知らないほど盛り上がった後、後ろ髪を引かれる思いで新潟を後にしました。来年の開催を今からも待ち遠しく思っています。 

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「おわりに 自覚者が責任者である」
 仲泊 聡(神戸理化学研究所;眼科医)
 研究会の締めくくりの言葉としてこれまではもっと歯の浮くような優等生のコメントをしてきたのですが、今回は、今マイブームになっている糸賀一雄氏の言葉を引用しました。糸賀氏は、社会福祉の父と呼ばれる偉人なのですが、視覚障害の業界ではあまり話題に登らないようで、恥ずかしながら私は最近になって認識した方です。私が引用した「自覚者が責任者である」と言う言葉は、彼が多く残した名言の一つです。彼は「この子らを世の光に」という言葉も残し、こちらの方がむしろ有名のようです。知的障害児福祉に生涯を捧げた彼の思想を凝縮した名言だと思います。「を」と「に」を置き換えると極めて俗っぽくなる言葉がこの順だと極めて深いメッセージになっていることがわかります。

 十分に彼の思想を理解できたわけでない状態で軽々しく引用してしまったことをとても反省しています。そして、その時の単なる思いつきでした。「自覚者が責任者」の例えとして道に落ちていたゴミをゴミ箱に捨てるという行為を昔は当たり前と教わったが、今日それが毒物や爆発物であるといけないと、しないように教える向きがあると。これを、私がこれまでどうして視覚障害者関連の仕事してきたかという文脈で話ししました。終わりの言葉でしたから質問も出ませんでしたが、自分の中では冷や汗が10リットルくらい出る感じでした。改めて自分の未熟さを思い知りました。もっと勉強していきたいと思いますので、どうかお許しください。この反省文をもって講演要旨に代えさせて頂きます。

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●新潟ロービジョン研究会 2016
0.はじめに
   安藤 伸朗(済生会新潟第二病院;眼科医)
1.【第1部 連携を求めて】
 1)看護師が関わると、こんなに変わるロービジョンケア
   橋本 伸子(しらお眼科;石川県白山市、看護師)
   http://andonoburo.net/on/5171 

 2)情報障害に情報保障の光を、患者に学ぶビジョンケア
   三宅 琢(東京大学先端科学技術研究センター特任研究員;眼科医)
   http://andonoburo.net/on/5182 

 3)視覚障害者のための転倒予防・体力増進教室
   ○山田 幸男 田村 瑞穂 嶋田 美恵子  久保 尚人
   (新潟県視覚障害者のリハビリテーションを推進する会;NPOオアシス)
   http://andonoburo.net/on/5210 

2.【第2部 眼科医療と視覚リハビリ】
 1)最大のロービジョン対策は予防と治療:私の緑内障との闘い
   岩瀬 愛子(たじみ岩瀬眼科;岐阜県多治見市、眼科医)
   http://andonoburo.net/on/5189 

 2)新潟県の訓矇・盲唖学校設立に尽力した眼科医
   小西 明(済生会新潟第二病院医療福祉相談室、前新潟盲学校長)
    http://andonoburo.net/on/5217 

 3)我が国初の眼科リハビリテーションクリニック(順天堂大学)
   ー開設当時を振り返ってー
   佐渡 一成(さど眼科;仙台市、眼科医)
    http://andonoburo.net/on/5223 

 4)眼科医・原田政美の障害者福祉理念と功績
   香川 スミ子(元東京都心身障害者福祉センター)
    http://andonoburo.net/on/5233 

3. 【第3部 熊本地震を考える】
  「熊本地震と災害時視覚障害者支援」
   出田 隆一 (出田眼科院長;熊本)
    http://andonoburo.net/on/5248 

4. おわりに
   仲泊 聡(神戸理化学研究所;眼科医)