勉強会報告

2015年10月15日

演題:「眼を見つめて50年ー素晴らしい眼科学の進歩と医療現場における問題を顧みる」
講師:藤井 青先生(ふじい眼科)
日時:平成27年10月14日(水)16:30 ~ 18:00 
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来 

長い間、新潟市民病院の眼科部長を務められ、新潟県眼科医会会長も歴任された藤井青(ふじい しげる)先生が、眼科医としての50年を振り返り、眼科の疾患の診断と治療の歴史を、問題点も含め丁寧に解説して下さいました。 

素晴らしい人類の視覚~「見える」ことの仕組み(眼球>視路>視覚皮質)、視力の発達・調節力の低下、屈折異常、中心視野と周辺視野、加齢による眼組織の変化、、 

眼科の疾患、結膜炎・眼科抗生剤の変遷、レッドアイクリニックからホワイトアイクリニックへの変遷、ジェネリックの問題点、角膜の構造と検査法、コンタクトレンズ、ドライアイ、点眼の指導法、角膜手術、白内障手術・緑内障治療・眼底疾患の診断と治療の変遷、、、、

眼科学の急速な進歩により何も問題がなさそうだが、実際には未だ解決されない問題・新たな問題も生じていることが紹介されました。
 

講演の後の時間では、参加者からいろいろな感想や質問がありました。
○知識や技術の習得方法に関する質問もありました。かつては新しい知識や技術を伝達する機会や手段がなかったこと、現在は講習会や学会、雑誌や教科書の他に映像や動画・動物眼等を使っての技術指導・専門別ガイドラインなどもあり、適切な学習の選択もそれ以前と比較すれば格段に容易となったことなどの答えをお聞きしました。
○その他、携帯電話やパソコンなどによる最近の新たな目の負担に関する話題、時代と共に変遷する眼疾患、感染を防ぐ手洗いなども話題もありました。 

70枚を超えるスライドを駆使し、藤井先生が体験してきた約50年間の眼科医療を振り返りながら、素晴らしいこの眼科学の進歩をいかに眼科医療の現場に生かすべきかについてお聞きした貴重な講演でした。

2015年10月11日

 眼の愛護デー(10月10日)に、8都府県から眼科医・内科医・神経内科医・リハビリ医・麻酔医やリハビリ関係者・教育者・当事者等々、約60名が参加し、済生会新潟第二病院10階会議室で公開講座を行った。テーマは「治療とリハビリ」。熱い討論があった。

1.「加齢黄斑変性治療の現状と課題」
  五味文(住友病院)
 加齢黄斑変性はこれまで失明する疾患の代表例だった。現在では抗VEGF療法が登場し、多くの患者が良好な視機能を保てるようになってきた。その治療の実際を示し、治療費がかかること、すべての患者がよい視機能を保てるわけではないことに触れ、抗VEGF療法の有用性と限界を語って頂いた。特に、患者さんへのアンケート、大変興味深かった。治療について、医者からの評価ばかりでなく、患者さんからの評価も必要な時代になってきていると感じた。

2.「iPS細胞による眼疾患治療の現状と未来」
  高橋政代(理化学研究所)
 iPS細胞を移植する再生医療が、世界で初めてわが国で臨床治験された。最初の臨床治験が行われてから1年の臨床経過を示してもらった。今後は、F1カー(個別のiPS細胞)ばかりでなく、カローラ(iPS細胞バンク)も用意するという。治療選択肢が増えるのはいい進歩。診療・研究・リハビリを兼ねた「アイセンター」構想が、より具体化している。企業の方も参加し戦略として進めているという。

3.「高次脳機能障害と向き合う~神経心理ピラミッドを用いたホリスティック・アプローチ~」
  立神粧子(フェリス女学院大学)小澤富士夫
 中枢神経が障害された場合の回復は可能だろうか?リハビリにいい方法はないのだろうか?くも膜下出血で数年間、表情も感情もなく,無反応で無気力だったところから、ニューヨークRusk研究所のプログラムで一年間訓練を受け回復した経験をお話頂いた。神経学的にどのような回復をたどったのか、興味深いところである。治療やリハビリを、病院・施設を主体に考えると見方(評価)が短期的になってしまう。 病は一生もの、治療(訓練)も一生もののはず。家族と共に歩む治療の重要性を再認識。コーチングの技(sweet & short)、広く使えそうだ。

4.討論から
 ○障害者にとって就労は大切な課題。○リハビリを続けるにはモチベーションが大切。○施設で訓練しても社会(コミュニティ)が受け入れないという現実。○見えない人に対する、(それを知らない)社会(人たち)の拒絶反応も課題。○社会全体の成熟は必要。○与えるリハビリから、障害者自らが望むリハビリ。○地域包括ケアの取り組み、、、、、、

【後 記】
 盲学校の弁論大会を当院で10年近く続けているが、子供たちが「将来は、働いて税金を払えるようになりたい」「今は助けてもらって生活しているが将来は人を助ける職業につきたい」と語る姿にいつも感動している。リハビリにはその評価が大切だが、働いて得る報酬は確かな評価の一つ。
 現在、多くの眼科術者は、ロービジョンケアに関心がないが、硝子体手術を開発し広めた硝子体手術の先駆者であるロバート・マカマーとチャールズ・スケペンスは、ロービジョンケア(患者のこと/家族のこと)にも多くの関心を抱いていたことを思い起こした。

2015年10月10日

演題:街歩きを通して考える社会の視覚障害者観と当事者の心理
講師:清水美知子(フリーランスの歩行訓練士)
 日時:平成27年9月9日(水)16:30~18:00
 場所:済生会新潟第二病院 眼科外来 

【講演要約】
 視覚障害がある人の歩行訓練は人々が活動している実環境で行われることに大きな特徴がある。そこで訓練士は視覚障害がある人と街の人、そして双方のインターラクションを観察する。 

 南雲(2002)は、障害によってもたらされる心の苦しみには、自分の中から生じるものと、自分と社会の関係から生じるものがあり、前者の苦しみを軽減するためには新たな自分を知り受け入れる「自己受容」が、後者のためには社会が障害者を受け入れる「社会受容」が必要であるとしている。 

 私は「街を歩く」ことがこの二つの受容を進めるのに役立つと考えている。視覚障害がある人は、街を歩く自分と自分に対する街の人の態度を観察することを通して自分を再形成する。一方、街の人は視覚障害がある人を見たり言葉を交わしたりすることで、各々の障害者観を形成していく。 

 「街を歩く」ことは、街の人々(社会)に対して自分をさらけ出すこと(Coming-out)でもある。視覚障害を隠すには、動かなければよい。視覚障害のある人が座って前を見ているだけでは、その人の視覚障害を疑わせる手がかりを見つけるのは難しいが、その人が立ち上がり一歩足を前に踏み出せば、視覚障害の存在を隠すのは難しい。つまり視覚障害のある人にとって街に出ることは、否応のない自己開示なのである。 

 街には、見返すことのできない視線、予測できない態度の人々が待ち受けている。そのような好奇な眼の中へ足を踏み出すのは、自分が思っている以上に心の強さが要る。視覚障害によって自尊心が傷つき自信を失っている状況にある人にとっては、さらにその負担は大きい。障害を負った後、自分自身を再形成する段階では、自分を周囲にどう見せようか迷っている状態のため、外には出たいが、自己開示はしたくないという気持ちになる。足元が見えにくく歩くのに不安を抱えながらも、あたかも眼は悪くないかのように振る舞いがちである。そのため、外出中、白杖を出したり、場所や状況によって折りたたんで鞄の中にしまったりしながら歩く人もいる。社会に対する自己開示のハードルは決して低いものではない。今回の勉強会に参加した盲導犬使用者のひとりが「盲導犬と出かけたら度胸が決まり、乗り越えられないでいた垣根を越えられた」「杖は折りたためるけど、盲導犬は折りたためない」と語ったが、それはこのような状況での話だろう。 

 対人関係における自己開示、コミュニケーション、気づき、自己理解などを説明するのに、「ジョハリの窓」というモデルがある。そのモデルでは自分を「公開された領域」「隠された領域」「自分は気づいていないが他人には見られている領域」「自分には他人にもわからない領域」の4つの領域に分けている。障害を負うとそれまで認識していた自己概念や自尊心が壊れ、それを再認識しないと新たな自分を形成できない。自分がよくわからない段階では解放された領域が小さい。例えば、今自分が外を歩いたらどのように歩くか、見えなくなって家から出てない人にはわからない。街に出て自分の歩く姿を人に見せ、見た人のリアクションを受け止めることは、自分自身を知るプロセスとして大切である。そしてそれは同時に街の人の意識を変えることにも役立つ。 

 講演後、視覚障害のある参加者(盲導犬使用者5人、白杖使用者1人)に街を歩いているときに経験したことについて質問した。多くの回答は街の人から受けた親切で優しい応対についてであった。そこで、あえて嫌な思いをしたことや辛かった経験についても聞かせてもらった。以下はその一部である。
・突然、汚い言葉や罵声を浴びせられた
・「俺がお前を襲ったら、この犬(盲導犬)はどうする?」と脅された
・帰路、付きまとわれたので、遠回りをして家に帰った。
・「他のお客さんに迷惑なので」とコンビニや飲食店で入店を拒否された
・「見えない者は外を歩くな、見えないのになぜ外を歩く」と言われた
 そのほか、遠慮のない好奇心から質問された、上からの物言いをされた、無視された、避けられた等の経験談が挙げられた。 

 一般に障害がある人に対する街の人の態度を決める要因には、知識、接触経験、能力観、価値観、ステレオタイプ、相手の態度などがあるといわれる。当事者の数少ない体験談、テレビ番組で紹介される「がんばる障害者」などが、個々の街の人が時折視覚障害のある人と遭遇したときに示す態度に影響を与えているのであろう。社会の障害者への態度は一朝一夕に変わるものではなく、法で規制できるものではない。街の中での一期一会が、社会の障害観を形成するひとつの要因として機能するものと思われる。 

 今回の勉強会で、視覚障害のある人から、移動支援、買物介助、代筆代読、通院介助等、福祉サービスが濃くなることで、視覚障害のある人と街の人との直接的な交流が少なくなってきているのではないかと心配する発言があった。視覚障害のある人の多くは高齢で、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下を考えると、同行援護従業者、ホームヘルパーなど福祉専門職との外出機会が増えていると思われる。外出のための支援が、一方では街の人との間の垣根となる側面があることを、サービスを提供する側も利用する側も共にしっかり認識しておく必要がある。 

(参考資料)
・南雲直二(大田仁史監修):リハビリテーション心理学入門人間性の回復をめざして. 荘道社. 2002
・清水美知子:「Coming-out, 自分になる」、済生会新潟第二病院眼科勉強会. 2002年8
・ジョハリの窓:https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョハリの窓 

【略 歴】
 1979年~2002年 
  視覚障害者更生訓練施設に勤務、
  その後在宅視覚障害者の訪問訓練事業に関わる
 1988年~
  新潟市社会事業協会「信楽園病院」視覚障害リハビリテーション外来担当
 2002年~
  フリーランスの歩行訓練士 

参考までに
カミング・アウトに関する清水先生の過去の講演録を、以下に記します。
●報告:第76回(2002‐9月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 清水美知子
 日時:2002年9月11日(水)16:00~17:30
 場所: 済生会新潟第二病院  眼科外来
  演題:「Coming out –人目にさらす」
  講師:清水美知子 (信楽園病院視覚障害リハビリ外来担当)
 http://andonoburo.net/on/4023 

●報告:第87回済生会新潟第二病院眼科勉強会 清水美知子
 日時:2003年8月20日(水) 16:30~18:00
 場所: 済生会新潟第二病院 眼科外来
  演題  「Coming-out Part 2 家族、身近な無理解者」
  演者  清水美知子(歩行訓練士)
 http://andonoburo.net/on/4030 


【後 記】
 清水先生は、障害者の目線でお話の出来る方です。「NBM(Narrative-based Medicine;物語と対話による医療)」とか、「社会受容」ということを最初に教えて頂いたのが清水美知子先生でした。
 
当院で開催する講演会や勉強会には清水先生を、ほぼ毎年をお呼びしていますが、先生の講演の日は、いつも多くの視覚障害者の方が出席します。どうしてなのか不思議でしたが、答えが判りました。今回の勉強会に、こんな感想が届きました。「清水先生のお話を聞くと『あるある』とか『そうそう』とか『そうなのよ』とうなづくことばかりで、どうしてそんなに分かるのかなあといつも不思議にさえ思います。でもだからこそ、この人は私達、視覚障碍者のことが分かる人、と安心して心が開けるので人気なのでしょう」。
 

【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】
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平成27年10月10日(土)14:00〜18:00
 済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015「治療とリハビリ」
 会場:済生会新潟第二病院10階会議室
 当日参加可能
 講演者
  五味文(住友病院)
  高橋政代(理化学研究所)
  立神粧子(フェリス女学院大学教授)
 http://andonoburo.net/on/3896
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平成27年10月14日(水)16:30~18:00
 【目の愛護デー記念講演会 2015】
 (第236回(15-10)済生会新潟第二病院 眼科勉強会)
 「ー眼を見つめて50年ー
  素晴らしい眼科学の進歩と医療現場における問題を顧みる」
 藤井 青(ふじい眼科)
 http://andonoburo.net/on/4042 

平成27年11月11日(水)16:30~18:00
 第237回(15-11)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  「臨床からの学び・発展・創造・実現」
  郷家和子(帝京大学) 

平成27年12月02日(水)16:30~18:00
 第238回(15-12)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  「フィンゲルの仲間と取り組んだ出前授業
   ~工夫を重ねて子供たちの心をキャッチ~」
  田中正四 (胎内市) 

平成28年01月13日(水)16:30~18:00
 第239回(16-01)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  「パラドックス的人生」
  上林明(新潟市) 

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平成27年01月23日(土) 15時半開場 16時~19時
「学問のすすめ」 第10回講演会 済生会新潟第二病院眼科
  会場:済生会新潟第二病院 10階会議室 予定
  講師 門之園 一明(横浜市立大学教授)
     出田 秀尚(出田眼科)
  要:事前登録
  主催:済生会新潟第二病院眼科
 http://andonoburo.net/on/3813
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平成28年02月10日(水)16:30~18:00
 第240回(16-02)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  若槻 裕子・岩崎 深雪 (新潟市) 

平成28年03月09日(水)16:30~18:00
 第241回(16-03)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  関 恒子(長野県松本市)

 

2015年9月10日

後日、ご本人に書いて頂いた講演要約を掲載いたしますが、速記録から私が理解したことを紹介致します。

速報版:第235回(15-09)済生会新潟第二病院眼科勉強会  清水美知子
  演題:街歩きを通して考える社会の視覚障害者観と当事者の心理
  講師:清水美知子(フリーランスの歩行訓練士)
 日時:平成27年9月9日(水)16:30~18:00
 場所:済生会新潟第二病院 眼科外来 

【速記録から】
 6月に福島で行われた視覚リハビリテーション研究発表大会で、言葉で自分の内面を伝えるという「自己物語」というテーマで講演をした。今日お話しするのは、街を歩くこと(自分が動くこと)が、自分を見せていること(カミング・アウト)になるということである。

 視覚障害のない人にとって、視覚障害がある人の行動は、急に立ち止まったり、急に曲がったりするなど予測が困難。一方、視覚障害がある人にとって、障害を負った当初は特に、一人でどれだけ歩けるのか、街の人とどのようなやり取りが起こるのかわからず、不安だ。

 視覚障害者は自分が見えないということを他人に知らせたくなければ、何もせずに座っているか、立っていればいい。しかしいったん歩きはじめると、「あれ、あの人は目が不自由なんだ」ということが人に知れてしまう。だから、歩くこと、街に出ることだけでカミングアウト(自分を他者に曝け出すこと)になる。そしてそこから双方のインターアクションが生じる。 歩いていると、視覚障害者が次に必要になるのは、援助要請交渉である。「ここはどこですか」「○○に行くにはどうすればいいですか?」

 視覚障害のある人とない人が街歩きの場面で出会い、触れ合うことで相手の反応・態度を経験し、相手に対する考えや態度が構築される。しかし視覚障害者は歩くことが晴眼者へのカミング・アウトになるが、視覚障害者は晴眼者が歩くところを見ることが出来ないという点では不平等でもある。

 「ジョハリの窓」理論(@)で考えると、自己開示する(カミングアウトする)ということは、秘密が減ることになる。

 歩行訓練士が陥りやすい誤りがある。見えないことを他人に知られたくないと思っている視覚障害者に歩行訓練を強制することは、非常に精神的に重荷を負わせることになる。理学療法士(PT)は歩行を教えるだけでよいが、歩行訓練士はこの辺りを理解して歩行訓練を行う必要がある。最初は寄り添いながら訓練を開始するが、徐々に離れて最終的には視覚障害者が一人で歩けるようにする。

 講演が終了後、参加者への問いかけが始まった。見えないことでチョッと嫌な経験をしたことはないか? 見えない人に対する社会の視覚障害者観等々、清水先生と視覚障害の方々との濃厚なディスカッションが続いた。 

@ジョハリの窓(ジョハリのまど、Johari window)
 
自己には「公開された自己」(open self) と「隠された自己」(hidden self) があると共に、「自分は気がついていないものの、他人からは見られている自己」(blind self) や「誰からもまだ知られていない自己」(unknown self) もあると考えられる。これらを障子の格子のように図解し、格子をその四角の枠に固定されていないものとして、格子のみ移動しながら考えると、誰からもまだ知られていない自己が小さくなれば、それはフィードバックされているという事であるし、公開された自己が大きくなれば、それは自己開示が進んでいるととる事が出来る。

 

【参考~過去の清水美知子先生の講演録】
報告:第76回(2002‐9月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 清水美知子
 日時:2002年9月11日(水)16:00~17:30
 場所: 済生会新潟第二病院  眼科外来
  演題:「Coming out —-人目にさらす」
  講師:清水美知子 (信楽園病院視覚障害リハビリ外来担当)
 http://andonoburo.net/on/4023 

報告:第87回済生会新潟第二病院眼科勉強会 清水美知子
 日時:2003年8月20日(水) 16:30~18:00
 場所: 済生会新潟第二病院 眼科外来
  演題  「Coming-out Part 2 家族、身近な無理解者」
  演者  清水美知子(歩行訓練士)
 http://andonoburo.net/on/4030

2015年9月7日

 新潟ロービジョン研究会2015は、「ロービジョンケアに携わる人達」をテーマに、8月1日(土)済生会新潟第二病院で行いました。研究会での講演を順次、報告しています。今回、大島 光芳(当事者、上越市)さんの講演要約をご紹介します。

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報告:『新潟ロービジョン研究会2015』  (8)大島 光芳
 演題:嬉しかったこと役立ったこと(患者の立場として) 
 講師:大島 光芳 (上越市) 

【講演要約】
 2009年4月に大学病院眼科の廊下待合で妻がロービジョン外来の貼り紙を見つけ、その日に担当医を通じて予約してもらいました。6月に初受診するとこの先生なら大丈夫、この先生の言う通りにやって行こうと思いました。 

 7月に休職を開始、市役所を訪問。福祉課の保健師さんが応対され、障害者相談支援センターの相談員を紹介下さいました。相談員の支援で7月に障害者手帳を申請、8月下旬2級が交付(翌年5月1級)、9月に支援計画、10月に移動支援16時間、11月20時間へ更新、12月に通院介護13時間と家事援助10時間を追加。2010年10月に移動支援30時間へ更新。 これらの福祉制度を受けられたことで私は人生の隘路をくぐり抜けられたと感じています。キーマンは相談員と保健師さんでした。「障害者手帳の取得」の先にこんな社会資源と福祉制度があることを知って頂きたくて話しました。 

 当時を振り返ると、お盆が過ぎると陽射しが弱まり気持ちが優しくなりました。両親の言葉を思い出し、余計なことを考えないで、とにかく忙しく、忙しく過ごせば何とかなるだろうと思っていた記憶があります。10月にサービス提供先のチーフがいいました。「移動支援ではいつでもどこへでも何にでも出かけられます。楽しみに出かけましょうね。」。この言葉を受け、私は12月の東京通院を予約しました。 しかし、この事業所は市外でのサービス提供ができませんでした。相談員が通院介護と県外へも出かけられる事業所を用意してくれました。 

 奮い立とうとする気持ちの一方で保育園児のような気分もありました。妻がちょっと近くだからと黙って出ようとすると「どこへ行く」と後追いしました。それと、務めていたから誰とも話せない時間がどうにも堪りません。つのる寂しさに耐えきれず相談員に訴えました。お昼に弁当を購入して届けてもらうと、日中に少し話ができただけで取り残された感覚が消えました。 これは相談員が家事援助は奥さんがいるから駄目ですと言っていたのに対して「これは食う食わないの問題ではないです。生きるかどうかなのです。」と私が言うと、やってみましょうと回答し、交渉してくれたおかげでした。 

 2010年1月に保健師さんが両方の提供先と相談員を私の家に集めてサービス提供会議を開催してくれました。3月の会議では4月から新潟大学病院通院は通院介護でホームヘルパーさんと一緒に列車で行くことが認められました。毎月のこの経験があったから10月には新潟市へも1人で出かけることができたのでした。 直江津駅から列車内を一人で2時間過ごして、新潟駅からは新潟市のガイドヘルパーさんの移動支援で動き出すと、次々と新展開が待っていました。 

 ケアを受けた後に私達が社会資源とどうかかわるかを知って頂く事が患者の立場だと思い至り、急遽タイトルで予定していた内容を変更し話しました。 相談員も汲み取って下さる人ばかりとは思えません。また許諾機関を説得するのが必ずしも得意でないかも知れません。保健師さんも状況によってはできない場合もあります。その時に患者はどうしたらいいのかを考えて頂きたいのです。その時に、このようなケースもあったと知っていて欲しかったのです。 

【略 歴】
 1950年に生まれ、64年に直江津市中学校新人戦野球大会で準優勝
 2009年 新潟大学ロービジョン外来受診、その日に新潟県点字図書館登録
     NPO法人新潟県障害者自立支援センターオアシス 利用会員
 2010年 任意団体 上越市視覚障害者福祉協会 会員
 2011年 社会福祉法人 新潟県視覚障害者福祉協会 会員
     任意団体 新潟県中途視覚障害者連絡会 会員、日本点字図書館登録
 2013年 視覚障害リハビリテーション協会 会員 

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『新潟ロービジョン研究会2015』
  日時:平成27年8月1日(土)14時~18時
  会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
  主催:済生会新潟第二病院眼科
  テーマ:「ロービジョンケアに携わる人達」 

【プログラム】
14時~はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
14時05分~特別講演
  座長:加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
  『世界各国と比べた日本のロービジョンケア』
    仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
   http://andonoburo.net/on/3843

15時~パネルディスカッション ~ 『ロービジョンケアに携わる人達』
  司会:安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
     仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  1)眼科医が行うロービジョンケア
    加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
    http://andonoburo.net/on/3923

 2)NPOオアシスでやってきたこと、行っていること
    山田 幸男 (新潟県保健衛生センター;信楽園病院 内科)
    http://andonoburo.net/on/3952

 3)ロービジョンケアにおける視能訓練士の関わり
    西脇 友紀(国立障害者リハビリテーションセンター病院;視能訓練士)
   http://andonoburo.net/on/3982

 4)新潟盲学校が取り組む地域支援
     渡邉 信子 (新潟県立新潟盲学校;教諭)
   http://andonoburo.net/on/3990

 5)盲導犬とローヴィジョン
    多和田 悟 (公益財団法人:日本盲導犬協会 訓練事業本部長 常勤理事)
  http://andonoburo.net/on/3999

 6)後悔から始まった看護師によるロービジョンケア
    橋本 伸子(石川県;看護師)
  http://andonoburo.net/on/4007

 7)嬉しかったこと、役立ったこと (患者の立場から)
     大島 光芳 (上越市;視覚障がい者)
  http://andonoburo.net/on/4013