2015年9月3日

新潟ロービジョン研究会2015は、「ロービジョンケアに携わる人達」をテーマに、8月1日(土)済生会新潟第二病院にて行いました。
「報告:『新潟ロービジョン研究会2015』」と題して、研究会での講演を順に報告しています。今回、渡邉 信子(盲学校教諭)さんの講演要約をご紹介します。

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報告:『新潟ロービジョン研究会2015』 (5)渡邉 信子
 演題:「新潟盲学校が取り組む地域支援」
 講師:渡邉信子 (新潟県立新潟盲学校 教諭)
  http://andonoburo.net/on/3990
    
【講演要約】
 本校は新潟県内全域の視覚に障害のある全ての対象者及びその関係者等に対し、本校が有する視覚障害教育を中心とした専門性について、教育的支援・情報等を提供することを目的として「相談支援センター」を分掌として位置付けている。この「相談支援センター」が中心となり、相談事業・啓発事業・小中学校等支援事業などのセンター的機能を果たしている。
本講演では相談事業と小中学校等支援事業を中心に紹介する。

(1)相談事業
 相談は電話・メール・来校・訪問等の方法で行われる。そして前述したように対象は視覚に障害のあるすべての対象者及びその関係者等であるので、その年齢や見え方、環境等によって相談内容も様々である。

 就学前の乳幼児とその保護者へは、まずその気持ちに寄り添い受け止めるところから始まる。少しずつ前向きに考えられるように一緒に考えながら就学へとつなげていく。

 小・中学生とその保護者でも低学年では学校生活について、中学年では学習内容の増加に伴う教科書の文字サイズや書字、板書等についてのより具体的な相談が増える。高学年や中学生になると進路に関する相談が多くを占める。このように学齢期といっても見え方や子どもの実態、学年や在籍する学校等によっても相談内容は変わってくる。

(2)小・中学校等支援事業
 インクルーシブ教育システム構築に向けた取組が推進する中、本校は新潟県教育委員会より、平成25・26年度、文部科学省特別支援学校機能強化モデル事業(特別支援学校のセンター的機能充実事業)の実践研究校としての指定を受けた。研究を始めるに当たり小・中学校等の教員(視覚障害児と関わる)のニーズを把握した。方法はアンケート形式を取り、その結果
 ①研修会への参加、
 ②継続的教育相談(本校では学習支援教室という)への参加、
 ③本校教員や外部専門家の訪問支援、
 ④本校の授業参観、
 ⑤Web会議システムの活用等があげられた。

 ①の希望する研修会内容については関わる児童生徒によって異なり、このことは視覚障害児者の実態がそれぞれ異なり、個々の対応が必要であることを明瞭にしたものである。それでも、可能な限りその希望に応えるため外部講師や本校教員による研修会の開催や教材紹介等を行った。
 ②の学習支援教室とは、点字・補助具活用・歩行・デジタル機器・遊び等の個に応じた支援を行うものである。平成26年度は年間7回実施し、小・中学校等で学ぶ児童生徒やその関係者が多く参加した。
 ③の訪問支援については本校職員に加え外部専門家の訪問も実現し、視覚活用の実態把握と教室環境の確認、補助具の活用と最新情報の提供等の支援を行うことができた。
 ⑤のWeb会議システム導入の目的は遠方の小・中学校等の支援である。設定までにいくつかの段階を踏まなければならないこと、セキュリティの観点から制限があること等課題は多く残ったが、支援に活用できるということは確認できた。

 また、本校は成人からの相談も多い。今後の見え方に不安をもっていたり、これからの人生を考えたいという思いをもっていたり、内容は眼疾や現在の見え方の状況によっても様々である。本校高等部専攻科の職員が中心となり相談に応じているところである。

(3)課題
 事業を通しての本校「相談支援センター」の実践は概ね高評価をいただいているが課題も多い。今後、地域の小・中学校で学ぶ視覚障害児が増加する一方、本校の在籍児童数の減少とそれに伴う教員の減少、また本校の専門性の維持向上等、このことは本校のみならず全国の視覚障害特別支援学校にとって大きな課題と言える。本校は全職員での研修への取組の強化等、さらに努力を重ねていかなければならない。


【略 歴】
 県内小学校で8年間勤務
 その後、聴覚障害・知的障害を中心とする特別支援学校に勤務
 現在、新潟県立新潟盲学校 勤務


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『新潟ロービジョン研究会2015』
 日時:平成27年8月1日(土)14時~18時
 会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
 主催:済生会新潟第二病院眼科
 テーマ:「ロービジョンケアに携わる人達」

【プログラム】
14時~はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
14時05分~特別講演
  座長:加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
  『世界各国と比べた日本のロービジョンケア』
    仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  http://andonoburo.net/on/3843

15時~パネルディスカッション ~ 『ロービジョンケアに携わる人達』
  司会:安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
     仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  1)眼科医が行うロービジョンケア
    加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
   http://andonoburo.net/on/3923

 2)NPOオアシスでやってきたこと、行っていること
    山田 幸男 (新潟県保健衛生センター;信楽園病院 内科)
   http://andonoburo.net/on/3952

 3)ロービジョンケアにおける視能訓練士の関わり
    西脇 友紀(国立障害者リハビリテーションセンター病院;視能訓練士)
  http://andonoburo.net/on/3982

 4)新潟盲学校が取り組む地域支援
     渡邉 信子 (新潟県立新潟盲学校;教諭)
  http://andonoburo.net/on/3990

 5)盲導犬とローヴィジョン
    多和田 悟 (公益財団法人:日本盲導犬協会 訓練事業本部長 常勤理事)

 6)後悔から始まった看護師によるロービジョンケア
    橋本 伸子(石川県;看護師)

 7)嬉しかったこと、役立ったこと (患者の立場から)
     大島 光芳 (上越市;視覚障がい者)

2015年9月2日

 新潟ロービジョン研究会2015を、8月1日(土)に済生会新潟第二病院で行いました。今年のテーマは「ロービジョンケアに携わる人達」。
 「報告:『新潟ロービジョン研究会2015』」と題して、本研究会での講演を報告しています。今回、西脇 友紀(視能訓練士)さんの講演要約をご紹介します。

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報告:『新潟ロービジョン研究会2015』 (4)西脇 友紀
 演題:「ロービジョンケアにおける視能訓練士の関わり」
 講師:西脇 友紀 (国立障害者リハビリテーションセンター病院)
 
【講演要約】
 視能訓練士は、1971年に制定された「視能訓練士法」という法律に基づく国家資格を持った医療技術者である。私達のほとんどは、眼科で医師の指示のもと視力や視野などの眼科一般検査を行ったり、斜視・弱視の訓練治療に携わったりしている。リハビリテーション分野の他職種である理学療法士や作業療法士に比べてかなり少なく知名度も低いが、現在では各地に養成校も増え、今年6月には11,000名を超えた。

 ロービジョンケアを行っている眼科も徐々に増えつつあり、ロービジョンケアを担当している職種について調べた調査では、視能訓練士が84.7%と他職種に比べ圧倒的に多かった(西脇・仲泊ほか2012)。しかし、視能訓練士全体の中でロービジョンケアに携わっている者の割合は低く、2010年に行われた日本視能訓練士協会の調査結果では27.9%と3割にも満たなかった。その後の割合の推移は不明だが、まだまだ少数派であると思われる。

 現在、私が在籍している病院の眼科では、眼科医、視能訓練士、生活訓練専門職、ソーシャルワーカーがチームを組んでロービジョンケアにあたっている。眼科医は、治療、診断、そして治療に関する相談を受け、患者のニーズについて問診票を用いて詳細に聴取し、その患者に必要な対応について他のスタッフに指示する。視能訓練士は、視機能検査および視覚補助具の選定と使用訓練を、生活訓練専門職は、歩行訓練、点字・パソコン訓練、日常生活訓練を、ソーシャルワーカーは身体障害者手帳や年金、職業訓練や社会福祉に関する相談を担当している。また、例えば就労中の患者で職場環境の調整の必要があれば、眼科医はじめ担当スタッフが患者の職場の人事担当者や上司と面談を行い、患者にどのような配慮をすれば仕
 事の継続が可能であるか等についてアドバイスを行っている。

 それぞれの職種で担当する内容は異なるが、すべての職種で共通していることは、見えにくくなって来院する患者や患者の周囲の人達に、見えにくくなる前とは異なる「見る方法の代替手段」を提案しているということである。その手段は、患者の視機能の状態や生活背景によって一人一人異なるため、それぞれの専門分野の知識や経験を総動員して、その患者に合った方法を一緒に探している。そして週に一度、全スタッフが集まり、対応した患者についてカンファレンスを行い、以降、必要な対応について協議している。

 視能訓練士の担当分野は、主に視覚補助具の選定と使用訓練であり、視力検査同様、業務独占の業務内容ではない。しかし、これは眼光学とレンズ光学の教育を受けている視能訓練士が適任ではないかと考えられる。数多ある補助具の中で、どの補助具をどのように使用すると最も効果的かを他覚的に判断し、自覚的な選択と比較しながら使用訓練を行っている。まぶしさを軽減する遮光眼鏡や、高倍率の拡大鏡、文字を数十倍に拡大したり表示を白黒反転にできる拡大読書器など、世間一般ではあまり馴染みがなく来院時に知っている患者はほとんどいない。見えにくくなったために好きだった読書を諦めていた患者が、「拡大することで文字が見やすくなった。拡大読書器を使うようになって世界が変わった」という言葉も、誇大でなくたびたび聞かれる。

 眼科でロービジョンケアが普及しにくい背景には時間不足や人手不足など諸問題があるが、患者が見えにくいことによって生活上で抱えている問題について検査時あるいは診察時に言及することで、対応すべき問題の存在を認識することができる。私たち視能訓練士は眼の治療をすることはできない。しかし、その見えにくさを改善する方法を共に考える眼の専門職として役に立ちたいと考えている。検査時、患者から言及される問題について、聞き逃すことなく解決策を共に考えていきたい。

(参考文献)
・西脇友紀・仲泊聡ほか「ロービジョンケアおよび視覚リハビリテーション実施状況調査と中間型アウトリーチ支援に関する意向調査」視覚リハビリテーション研究. 2(2) 75-81,2012
・日本視能訓練士協会「視能訓練士の現状と展望(2010)」2011

【略 歴】
 1998年3月 国立小児病院附属視能訓練学院卒業
 1998年4月 杏林大学医学部付属病院眼科
 2005年10月 もり眼科医院
 2010年4月 国立障害者リハビリテーションセンター病院


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『新潟ロービジョン研究会2015』
 日時:平成27年8月1日(土)14時~18時
 会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
 主催:済生会新潟第二病院眼科
 テーマ:「ロービジョンケアに携わる人達」  

【プログラム】
14時~はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
14時05分~特別講演
  座長:加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
  『世界各国と比べた日本のロービジョンケア』
    仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  http://andonoburo.net/on/3843

15時~パネルディスカッション ~ 『ロービジョンケアに携わる人達』
  司会:安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
     仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  1)眼科医が行うロービジョンケア
    加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
   http://andonoburo.net/on/3923

 2)NPOオアシスでやってきたこと、行っていること
    山田 幸男 (新潟県保健衛生センター;信楽園病院 内科)
   http://andonoburo.net/on/3952

 3)ロービジョンケアにおける視能訓練士の関わり
    西脇 友紀(国立障害者リハビリテーションセンター病院;視能訓練士)
   http://andonoburo.net/on/3982

 4)新潟盲学校が取り組む地域支援
     渡邉 信子 (新潟県立新潟盲学校;教諭)  

 5)盲導犬とローヴィジョン
    多和田 悟 (公益財団法人:日本盲導犬協会 訓練事業本部長 常勤理事) 

 6)後悔から始まった看護師によるロービジョンケア
    橋本 伸子(石川県;看護師) 

 7)嬉しかったこと、役立ったこと (患者の立場から)
     大島 光芳 (上越市;視覚障がい者)

済生会新潟第二病院眼科では、どなたでも参加できる公開講座を開催しています。今年は2月に眼科公開講座2015「細井順講演会」を開催しました。

10月10日(土)に、「治療とリハビリ」をテーマに眼科公開講座2015ー第2弾を予定しています。登壇されるのは、加齢黄斑変性治療の第一人者の五味 文先生(住友病院)、眼科再生医療のトップリーダーの高橋 政代先生(理化学研究所)、ご主人の高次脳機能障害にご夫婦で立ち向かった立神粧子先生(フェリス女学院大学教授)の3名の先生方です。会場の皆様も参加できるパネルディスカッションも企画しました。

参加費は無料ですが、会場準備の都合もあり、事前登録制(締切9月30日)です。
参加希望の方は下記の要領で、申し込み下さい。  

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
【事前登録】済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015-第2弾「治療とリハビリ」
 申込期間 平成27年8月19日(水)~9月30日(水)
 申し込み先:済生会新潟第二病院眼科 安藤伸朗 
  e-mail: gankando@sweet.ocn.ne.jp
  Fax: 025-233-6220  

***************************************************
【参加申し込み】済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015 第2弾「治療とリハビリ」 

  氏名~ 

  所属(勤務先)~   

  職業~   

 住所~都道府県名と市町村名をお願いします
  記載例~○○都道府県、○○市町村 

 連絡方法
    e-mail アドレス~ 

   Fax番号~ 
  (可能な限り、メールでの連絡先をお願い致します)
****************************************************
注:専門の職員はおりません。
  電話でのお問い合わせには応じることが出来ません。
  お問い合わせ等は、メールでお願い致します。 


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 済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015第2弾 「治療とリハビリ」
  日時:2015年10月10日(土)  開場:13時30分 研究会:14時~18時
  場所:済生会新潟第二病院10階会議室
  主催:済生会新潟第二病院眼科
  事前登録制  

13:55 はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院)
14:00~特別講演1
  「加齢黄斑変性治療の現状と課題」
    座長:長谷部 日(新潟大学)佐藤 弥生(新潟大学)
    演者:五味 文(住友病院)
  http://andonoburo.net/on/3829 

14:50~特別講演2
   「iPS細胞による眼疾患治療の現状と未来」
    座長:福地 健郎(新潟大学)安藤 伸朗(済生会新潟第二病院)
    演者:高橋 政代(理化学研究所)
  http://andonoburo.net/on/3855 

15:40~ コーヒーブレーク  

16:00~特別講演3
  「高次脳機能障害と向き合う
  ~神経心理ピラミッドを用いたホリスティック・アプローチ~」
    座長:仲泊 聡(国立障害者リハ)平形 明人(杏林大学)
    演者:立神 粧子(フェリス女学院大学教授)
  http://andonoburo.net/on/3882 

16:50~パネルディスカッション「治療とリハビリ」(1時間)
   コーディネーター:
      仲泊 聡(国立障害者リハビりテーションセンター)
      安藤 伸朗(済生会新潟第二病院)
   パネリスト:
     高橋 政代(理化学研究所)、五味 文(住友病院)
     立神 粧子(フェリス女学院大学教授)、平形 明人(杏林大学)
     福地 健郎・長谷部 日・佐藤 弥生(新潟大学) 

17:50 おわりに 仲泊 聡(国立障害者リハビりテーションセンター)
     会場片付け(アジャーン)
18:00 終了

2015年8月31日

報告:第234回(15‐08月)済生会新潟第二病院眼科勉強会 
 「人生いろいろ、コーチングもいろいろ
   高次脳機能障害と向き合うこと、ピアノを教えること」
 立神粧子 (フェリス女学院大学教授)
 日時:平成27年8月5日(水)16:30~18:00
 場所:済生会新潟第二病院眼科外来 

【講演要約】
1.高次脳機能障害とは
 高次脳機能障害は脳外傷、脳卒中、脳腫瘍などを原因とする器質性の後遺障害である。とくに前頭葉の認知機能の働きに問題が生じる。認知機能とは、①覚醒と周囲への意識と心的エネルギー、②感情をコントロールする抑制と発動性、③注意と集中、④情報処理、⑤記憶、⑥遂行機能と論理的思考力、などの諸機能のこと。これらを下から順番に階層にして示しているのが「神経心理ピラミッド」の図表である。ピラミッドには最下層に“リハビリに取り組む意欲”が置かれ、最上層には“受容”と“自己構築”が置かれている。ピラミッド型が示すように下位の機能が働いていないと上位の機能はうまく機能しない。と同時に、諸機能は連動し相互に作用する。 

 脳損傷の特殊性として、脳細胞の欠損は身体の他の臓器と異なり再生しないことが挙げられる。しかも脳の機能はその人固有の人生の学習の記憶によって成り立っている。人それぞれ歩んできた人生が違うので、AさんとBさんとは神経回路のつながり方は全く異なる。本人に障害が残った自覚がない場合や、家族が症状の本質を理解しないために的確な支援ができない場合もある。そのため、症状自体に加え治療の目標も個々で異なり、リハビリは困難を極める。 

2.Rusk研究所における脳損傷通院プログラムとは
 夫は2001年の秋に重篤な解離性椎骨動脈破裂によるくも膜下出血を発症し、脳損傷(高次脳機能障害)が残存した。2004〜05の1年間、夫と筆者はNew York大学医療センター・リハビリテーション医学Rusk研究所の「脳損傷通院プログラム」で機能回復訓練を受けた。Ruskの通院プログラムは神経心理学を学問的基盤としたホリスティックなアプローチで、対人コミュニケーションを中心とした療法的プログラムである。20週を1サイクルとする訓練は個々のゴールにあわせて周到に計画され、理論と実践が巧みに組み合わされ構造化されている。訓練生は規則的な訓練の中で、症状の本質の理解と補填戦略を繰り返し学ぶことになる。 

 Rusk研究所での夫の訓練が終わるとき、Ben-Yishay博士から「君たちが訓練に成功したのは、君たちが成熟した音楽家で、訓練ということの意味を理解していたからだ」と言われた。このことについて考えてみたい。 

3.ピアノを教えるとは
 ピアノを教えるとき、専門家を育てるだけでなく、初心者、子供の情操教育、大人の趣味など、対象者は多岐にわたる。脳損傷が個々のケースで全く異なるように、年齢、習熟度、目的が一人一人異なる。ピアノを教えるということは、Ruskでの訓練と同じように、①多様なゴールを理解する、②個人の特性に合わせて(=相手の脳と心になり)指導する、③その都度ゴールを定めて、技術と考え方の両面からゴールの達成に向け訓練する、④教え込むのではなく自分でできるように導く、⑤ほめて育てる+厳しく指摘する、などを意味する。 

 良いピアノの指導者(=コーチ)は、①この上なく音楽を愛する、②情報交換を怠らずよく勉強する、③相手を知ろうとする、④レッスンの目的・方法論を明確にもつ、⑤渾身のレッスンをする、などの資質を持つことが望ましい。指導者は改善すべきところを見つけ、理論的かつ実践的に技術と方法を示す。生徒の側も、主体的にその道の専門家のアドバイスに耳と心を傾け、順応性をもって素直に訓練を受ける態勢になることが大切である。指導の目的は生徒が「自分で自分を改善させる」ことができるようにすること。つまり、自分の音を批評できる能力、悪いところを自分で気づき予防できる能力、様々なテクニック(戦略)を知り自分で使いこなす能力などを、訓練によって身につけさせることである。これらはそのまま高次脳機能障害のコーチングの技術に当てはまる。 

4.高次脳機能障害のコーチング
 脳損傷者のコーチングには重要な前提条件がある。第一に、訓練生が落ち着いていて客観的な時にのみコーチングする。イライラしていると抑制困難症を引き起こし、コーチングが逆効果となる。第二に、訓練生が疲れすぎていない時にコーチする。神経疲労を起こしていると、コーチングを受け取る集中力も情報処理力も十分に働かない。第三に、コーチされる側も活発にコーチングを求める意欲を持つ。本人に改善する意志がないと意味がない。 

 そして脳損傷のコーチングの原理としては、①ひとつの問題に焦点を当て,選択的であること、②問題は具体的に指摘し、慎重に戦略を選び、具体的に解決策を示す、③良いことも具体的に指摘する、④改善すべきことを良いことの指摘に挟む「サンドイッチ効果」の技法を使ってコーチする、⑤ユーモアを忘れないように、などである。 

5.受信情報を確認しながら会話しよう
 例えば、会話の訓練がある。隣の人と会話をしてみよう。その際に、受信情報を確認する〈確認の技〉や、相手の言葉を借りる〈語幹どりの技〉などを使ってみると、発動性のない人も、抑制困難な人も、それぞれの問題にとって助けになる戦略を用いて会話を進める事ができる。戦略を使うことで発動性のない人には発話のきっかけとなり、抑制困難症の人には話の筋道からそれないようにすることができる。 

 会話の訓練以外にも、何か動作を覚える時の確認の手順や、日常生活を構造化することで動きの流れを作っていくことなど、症状に合わせてそれぞれの戦略を用いて一歩先のゴールを設定して地道に訓練することで、日常生活をよりスムーズにする事ができる。障害の完治は期待できないが、訓練により戦略を用いる技術を習慣化する事はできる。 

6.コーチングの意義
 脳損傷者がこうした技術を身につける事ができれば、家族や周囲の人たちとの共同生活の中でも、自分の存在に価値がある事を自ら感じる事ができる。コーチングの技術、コーチを求める順応性のある心と意欲が双方に求められる。ケアマネージャーやヘルパーさんたちとの連携も必要である。最終的には、自分で自分を改善できる力を持ち、相手との良い関係を再構築できるようにしたい。コーチする人もコーチされる人も、その時の問題にひとつずつ取り組み、落ち着いて訓練してつねに改善することが肝要である。 

 音楽の訓練を通じて「訓練」や「技術の獲得」ということの本質を理解していた我々だったので、Ben-Yishay博士は「訓練は成功した」と言及したのだろう。それほど、脳損傷者にとって自分の症状を理解し、それに対する戦略の習得から習慣化に至る地道な繰り返しの訓練が必要、ということである。
 

【略 歴】
 1981年 東京芸術大学音楽学部卒業
 1984年 国際ロータリー財団奨学生として渡米
 1988年 シカゴ大学大学院修了(芸術学修士号)
 1991年 南カリフォルニア大学大学院修了(音楽芸術学博士号)
 2004-05年 NY大学医療センターRusk研究所にて脳損傷者の通院プログラムに参加。治療体験記を『総合リハビリテーション』(医学書院)に連載(2006年)。
 2010年 『前頭葉機能不全その先の戦略』(医学書院)
  現在:フェリス女学院大学音楽学部音楽芸術学科教授、音楽学部長、日本ピアノ教育連盟評議員、米国Pi Kappa Lambda会員。

 

【著 書】
『前頭葉機能不全/その先の戦略:Rusk通院プログラムと神経心理ピラミッド』
 立神粧子著 (2010年11月 医学書院)
 医学書院のHPに以下のように紹介されている。
「高次脳機能障害の機能回復訓練プログラムであるニューヨーク大学の『Rusk研究所脳損傷通院プログラム』。全人的アプローチを旨とする本プログラムは世界的に著名だが、これまで訓練の詳細は不透明なままであった。本書はプログラムを実体験し、劇的に症状が改善した脳損傷者の家族による治療体験を余すことなく紹介。脳損傷リハビリテーション医療に携わる全関係者必読の書」
 http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=62912

【後 記】
 素晴らしい講演でした。ご夫婦で東京芸大出身の音楽家。立神先生はピアノ、ご主人はトランペット。ヤマハ楽器にお勤めだったご主人が「くも膜下出血」を発症。その克服にご夫婦で立ち向かい、ニューヨークで約一年の研修を受け、その後も地道な訓練をひたすらに続け、生活を取り戻した(今でも進行形)壮絶なお話。訓練と戦略のおかげで、絶望的だった夫との生活は奇跡的に改善され、希望が持てる人生を歩みだすことができた。後半ではご主人のユーモア溢れる講演もお聞きした。

 こうした経験から立神先生は、神経心理ピラミッドに則った訓練は、脳損傷リハビリにもピアノ教育にも有効なツールとなっていることに気が付いたという。すべてのリハビリあるいは習い事のいいお手本となるお話を、感動と共に拝聴しました。

 立神先生ご夫婦の健やかなお暮しを祈念致します。この度は、誠にありがとうございました。

 

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【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】
平成27年9月9日(水)16:30~18:00
 第235回(15-09)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題:街歩きを通して考える社会の視覚障害者観と当事者の心理
  講師:清水美知子(フリーランスの歩行訓練士)
  http://andonoburo.net/on/3919 

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平成27年10月10日(土)午後
 済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015「治療とリハビリ」
 会場:済生会新潟第二病院10階会議室
 事前登録(受付中)
 講演者
  五味文(住友病院)
  高橋政代(理研)
  立神粧子(フェリス女学院大学教授)
  http://andonoburo.net/on/3896
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平成27年10月14日(水)16:30~18:00
 【目の愛護デー記念講演会 2015】 
 (第236回(15-10)済生会新潟第二病院 眼科勉強会)
 「ー眼を見つめて50年ー
  素晴らしい眼科学の進歩と医療現場における問題を顧みる」
 藤井 青(ふじい眼科) 

平成27年11月11日(水)16:30~18:00
 第237回(15-11)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  「臨床からの学び・発展・創造・実現」
  郷家和子(帝京大学) 

平成27年12月02日(水)16:30~18:00
 第238回(15-12)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  「フィンゲルの仲間と取り組んだ出前授業
   ~工夫を重ねて子供たちの心をキャッチ~」
  田中正四 (胎内市) 

平成28年01月13日(水)16:30~18:00
 第239回(16-01)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  「パラドックス的人生」
  上林明(新潟市) 

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平成27年01月23日(土) 15時半開場 16時~19時
「学問のすすめ」 第10回講演会 済生会新潟第二病院眼科
  会場:済生会新潟第二病院 10階会議室 予定
  講師 門之園 一明(横浜市立大学教授)
     出田 秀尚(出田眼科)
  要:事前登録
  主催:済生会新潟第二病院眼科
 http://andonoburo.net/on/3813
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平成28年02月10日(水)16:30~18:00
 第240回(16-02)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  若槻 裕子・岩崎 深雪 (新潟市) 

平成28年03月09日(水)16:30~18:00
 第241回(16-03)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  関 恒子(長野県松本市)

 

 

2015年8月30日

 新潟ロービジョン研究会2015を、8月1日(土)に済生会新潟第二病院で行いました。今年のテーマは「ロービジョンケアに携わる人達」。今回、山田幸男先生(NPOオアシス)の講演要約をご紹介します。

報告:『新潟ロービジョン研究会2015』 (3)山田 幸男
 演題:「私たちのNPOオアシスでやってきたこと、行っていること」
 講師:山田 幸男(新潟県保健衛生センター/信楽園病院 内科) 

【講演要約】
 視覚障害者の自殺が契機となって、私たちは目の不自由な人のリハビリテーションに取り組む決意をしました。いまから、ちょうど31年前のことです。しかし当時の信楽園病院の眼科には、大学からパートできておられたので、眼科医が赴任されるのを待ちました。待つこと10年、1994年5月に、ようやく眼科医の大石先生が着任され、外来日には埼玉や東京から視覚障害更生施設の清水美知子先生と石川充英先生に来ていただいて、眼科医、日常生活訓練士を中心に、糖尿病内科医、視能訓練士などが加わったチームで、毎月2回リハビリテーション外来診療を行うことができるようになりました(表)。 

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表1 視覚障害リハビリテーション外来の概要(1994年5月開設)
   外来日 :毎月2回 11:00-17:00
   担当  :眼科医、日常生活訓練士、糖尿病内科医,視能訓練士、看護師、管理栄養士、その他
   指導内容:歩行訓練(白杖、誘導)、ロービジョンケア(視覚的補助具の紹介と処方など)、音声パソコン・点字・化粧・調理・栄養の指導、こころのケア(グループセラピーを含む)、日常生活用具の紹介と使い方の指導、更生施設・福祉制度の紹介、職業相談など
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 月2回行っているリハビリテーション外来では、眼科医や日常生活訓練士などを中心とした密度の濃い外来ですので、なるべくこの場でしかできないことを行っています。 一方、パソコン指導や点字指導など継続的に行わないと技術が身につかない日常生活訓練やこころのケアは、月2回のリハビリ外来だけでは不十分なため、その他の日にも行えるように週4日訓練日をとっています(図)。 

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図 視覚障害リハビリテーション外来と継続日常生活訓練室を中心とした指導

 

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  外来を開設して1年後には、パソコン教室を開設しました。その後、さらに歩行指導(白杖、誘導)、調理・化粧指導など指導項目を増やしながら、視覚障害者の自立を援助しています。 障害者の心のケアも大切です。お茶飲みや食事をしながら、話し合い、情報交換する機会を設けました。パソコンをやらないで、お茶飲みや友達を求めて集まる人も多くみられます。 

 リハビリ外来やパソコン教室を開設して、丸20年が経ち、視覚障害者にも高齢化の波が押し寄せています。老老介護の人が多くなり、いつ介護者が介護できなくなるかわからない人も少なくありません。そこで、目の不自由な人たちに「もし介護者が介護できなくなったら、あなたは施設で過ごしますか、自宅で過ごしますか?」とたずねてみました。自宅で過ごしたいと答えた人が多く、男性障害者(24人)では54.2%、女性障害者(8人)では75%に達しました。 

 介護者がいなくなったときに、視覚障害者がとくに困ることは、歩行・移動、食事作り、買い物です。歩行・移動に対しては、2014年8月から、「転倒予防・体力増進教室」を開始しました(毎月1回)。ロコモ・サルコペニア・フレイル・骨粗鬆症などの講義と、ラジオ体操などの実技、看護師によるフットケア、栄養士による栄養指導などを行っています。 

 調理教室は以前から月2回集団指導形式で行ってきましたが、一人になると作れない人がほとんどです。そこで確実に作れるようにするために、「習って、教える、リレー調理教室」を開設しました。ご飯が炊けることが大切なので、まず指導者が視覚障害者とマンツーマンでご飯が炊けるようになるまで指導します。その人ができるようになったら、次はその人が次の目の不自由な人に教えます。このように、一人でできるようになった人は、次の人に教え、その人がマスターしたら、また次の人の指導にあたる、リレー方式です。 

 ご飯を炊くことができるようになったら、次はみそ汁つくりです。同様に、次から次へと技術のバトンを渡しています。この方法は、技術が確実に身につくと同時に、達成感も味わえるように思います。今後はさらにサラダなど挑戦するメニューを増す予定です。 

 視覚障害者の一人暮らしや老々介護は今後いっそう大きな問題になります。その解決策なども含めてさらに検討が必要と考えます。
 

【略 歴】 山田幸男(やまだ ゆきお)
 1967年(昭和42年)3月 新潟大学医学部卒業
        同年4月 新潟大学医学部附属病院インターン
 1968年(昭和43年)4月 新潟大学医学部第一内科に入局。内分泌代謝斑に所属
 1979年(昭和54年)5月 社会福祉法人新潟市社会事業協会信楽園病院
 2005年(平成17年)4月 公益財団法人新潟県保健衛生センター
  日本内科学会認定医、日本糖尿病学会専門医、日本内分泌学会専門医、日本ロービジョン学会評議員、日本病態栄養学会評議員 

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『新潟ロービジョン研究会2015』
 日時:平成27年8月1日(土)14時~18時
 会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
 主催:済生会新潟第二病院眼科
 テーマ:「ロービジョンケアに携わる人達」   

【プログラム】
14時~はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
14時05分~特別講演
  座長:加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
  『世界各国と比べた日本のロービジョンケア』
    仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  http://andonoburo.net/on/3843
 
15時~パネルディスカッション ~ 『ロービジョンケアに携わる人達』
  司会:安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
     仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  1)眼科医が行うロービジョンケア
    加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
   http://andonoburo.net/on/3923 

 2)NPOオアシスでやってきたこと、行っていること
    山田 幸男 (新潟県保健衛生センター;信楽園病院 内科) 
  
 http://andonoburo.net/on/3952

 3)ロービジョンケアにおける視能訓練士の関わり
    西脇 友紀(国立障害者リハビリテーションセンター病院;視能訓練士)  

 4)新潟盲学校が取り組む地域支援
     渡邉 信子 (新潟県立新潟盲学校;教諭)   

 5)盲導犬とローヴィジョン
    多和田 悟 (公益財団法人:日本盲導犬協会 訓練事業本部長 常勤理事)  

 6)後悔から始まった看護師によるロービジョンケア
    橋本 伸子(石川県;看護師)  

 7)嬉しかったこと、役立ったこと (患者の立場から)
     大島 光芳 (上越市;視覚障がい者)

 新潟ロービジョン研究会2015を、8月1日(土)済生会新潟第二病院で行いました。2001年に始めてから、16回目になります。今年のテーマは「ロービジョンケアに携わる人達」。今回、加藤 聡先生(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科)の講演要約をご紹介します。

 報告:『新潟ロービジョン研究会2015』 (2)加藤 聡
 演題:「眼科医が行うロービジョンケア」
 講師:加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授) 

【講演要約】
 ゴールデンウィークも過ぎ、巷では日本のプロ野球もこれから佳境を迎えるところである。近年のプロ野球での投手の起用法を見てみると、先発、中継ぎ、抑えと分業化されてきている。果たして眼科医も患者さんに対して、そのように分業化されてくるべきなのであろうか? 

 もちろん、医療経済の観点からすれば、かかりつけ医と高度な医療機関(急性期病院)との分業である病診連携が必須なのは論をまたない。それでは高度な医療を行う急性期病院では、どのように眼科医は患者さんと相対すればよいのであろうか?高度の診断や手術を含む治療を行う眼科医が「先発投手」ならば、最終的にロービジョンケアを行う眼科医は患者さんへの対応を医療として終了するという意味で「抑えの投手」ということになるという考え方もある。あるいは、視覚障害の患者さんに対しては大変失礼だが、中には最終的にロービジョンケアを行う眼科医は「敗戦処理投手」のように考えている残念な眼科医も一部にいることは確かである。しかし、私は、いずれの考えにも違和感を覚える。 

 眼科医のなかでもかかりつけ医として、第一線の眼科医療に携わっている眼科医からは、「難しい手術や強力な治療を行っている訳ではないので、最終的に治療をしてもロービジョンになる患者はほとんどなく、自分はロービジョンケアとは縁遠い。」という声を聞くことがある。しかし、例えば、コンタクトレンズを作りに来た患者の眼底に偶然にも網膜色素変性症の初期病変を眼底に見つけてしまった場合、かかりつけの眼科医としてはどのように対応するのが望ましいのであろうか?
 1.今回はコンタクトレンズを作ることが目的なのだから、コンタクトレンズを処方し、余計なことは患者に伝えない。
 2.本日中に視野検査や電気生理学的検査を行い、結果によっては網膜色素変性症により出現する症状や予後、現在の治療法での限界を話す。
 3.とりあえず、本日はコンタクトレンズを作り、眼底に異常の疑いがあるので次回精密な検査をしましょうと予約をとる。
 1から3のどれも正解であり、どれも不正解とも考えられる。しかし、かかりつけ医として、「ロービジョンそのものや成りうる病態の告知行うには、ロービジョンケアや連携の裏付けが必須である」ことを忘れないでいて欲しいと考える。 

 一方高度医療機関で働く、例えば網膜硝子体手術者はいくら手術が成功しても、今までの生活を行うことは不可能である症例を前にして、いつ、ロービジョンケアのことを患者に話したら良いのであろうか?
 1.ロービジョンケアのことは話さない。
 2.ロービジョンケアのことを術前から話しておく。
 3.ロービジョンケアのことは術前ではなく、経過中に時機を見て話す。
 私から考えると、1はありえない回答のようにも思えるのだが、アンケートでは網膜硝子体疾患を専門にしている主に網膜硝子体の手術者の12%より、1という回答を得ている。いつ、ロービジョンケアを始めるのかの正解はないと考えるが、「患者からロービジョンケアに関する行動を起こすことは難しく、眼科医が連携のまず初めの人にならなくてはいけない」ということをどの眼科医、特に難治な症例の手術を行う眼科医は自覚する必要があると考えられる。 

 本来眼科医が行うロービジョンケアとは、正しい診断、適切な手術を含む治療を行い、その上での狭義のロービジョンケアを行うことが正しいあり方だと考える。すなわち、眼科医が行うロービジョンケアとは最後を締めくくることではなく、先発投手として完投することである。どの投手であろうと、元々が抑えの投手になろうとして、投手になった者はいない。以上のように考えるならば、ロービジョンケアにより力を入れる眼科医も必然的に増えると期待している。 

【略 歴】 加藤 聡 (カトウ サトシ)
 1987年 新潟大学医学部医学科卒業
     東京大学医学部附属病院眼科入局
 1996年 東京女子医科大学糖尿病センター眼科講師
 1999年 東京大学医学部附属病院分院眼科講師
 2000年 King’s College London, St. Thomas’ Hospital研究員 
 2001年 東京大学医学部眼科講師
 2007年 東京大学医学部眼科准教授
 2013年 日本ロービジョン学会理事長
  現在に至る 

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『新潟ロービジョン研究会2015』
 日時:平成27年8月1日(土)14時~18時
 会場:済生会新潟第二病院 10階会議室
 主催:済生会新潟第二病院眼科
 テーマ:「ロービジョンケアに携わる人達」  

【プログラム】
14時~はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医) 

14時05分~特別講演
  座長:加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
  『世界各国と比べた日本のロービジョンケア』
    仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  http://andonoburo.net/on/3843
 
15時~パネルディスカッション ~ 『ロービジョンケアに携わる人達』
  司会:安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院;眼科医)
     仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター;眼科医)
  1)眼科医が行うロービジョンケア
    加藤 聡(日本ロービジョン学会理事長 東大眼科准教授)
  
 http://andonoburo.net/on/3923

 2)NPOオアシスでやってきたこと、行っていること
    山田 幸男 (新潟県保健衛生センター;信楽園病院 内科)  

 3)ロービジョンケアにおける視能訓練士の関わり
    西脇 友紀(国立障害者リハビリテーションセンター病院;視能訓練士) 

 4)新潟盲学校が取り組む地域支援
     渡邉 信子 (新潟県立新潟盲学校;教諭)  

 5)盲導犬とローヴィジョン
    多和田 悟 (公益財団法人:日本盲導犬協会 訓練事業本部長 常勤理事) 

 6)後悔から始まった看護師によるロービジョンケア
    橋本 伸子(石川県;看護師)  

 7)嬉しかったこと、役立ったこと (患者の立場から)
     大島 光芳 (上越市;視覚障がい者)

2015年8月21日

  演題:街歩きを通して考える社会の視覚障害者観と当事者の心理
  講師:清水美知子(フリーランスの歩行訓練士)

 日時:平成27年9月9日(水)16:30~18:00
 場所:済生会新潟第二病院 眼科外来 

【抄 録】
 街には多様な歩き方をする人が混在しています。杖をついて歩く人、歩行器を押しながら歩く人、車椅子で移動する人などなど。このような様々な歩き方の人々がひとつの空間を共有し、互いに相手の動きや進路を予測し、ぶつからないように歩いています。相手がよけると思っていたのによけなかったなど、自分の予測と相手の行動にズレがあると、人は戸惑い、その訳を知りたくなります。視覚障害のない人にとって、視覚障害がある人の行動は、急に立ち止まったり、急に曲がったりするなど予測が困難です。一方、視覚障害がある人にとって、障害を負った当初は特に、一人でどれだけ歩けるのか、街の人とどのようなやり取りが起こるのかわからず、不安です。 

 視覚障害がある人にとって、街は視覚障害のない人の態度に接する場であり、一方、視覚障害がない人にとっては視覚障害がある人の行動を目にする場です。視覚障害がない人の中には、視覚障害がある人を街で見かけて講習会で覚えたばかりの誘導法を試そうとしたり、盲導犬の可愛らしさに感動したり、あるいは、良かれと思って、いきなり腕をとって引っ張る人もいます。街には、このような具体的な行動をとる人もいますが、遠巻きに見るだけの人やとくに関心を示さない人が大半です。 

 モビリティの障害は街を歩かなければわかりません。視覚障害についての話だけに限りませんが、相手の態度や考えはお互いが交わらなければわかりません。視覚障害のある人とない人が街歩きの場面で出会い、触れ合うことで相手の反応・態度を経験し、相手に対する考えや態度が構築されていきます。 

 今回の勉強会では、参加される方々からも、これまでの街歩きでのご経験をお話しいただき、社会の視覚障害者観と視覚障害のある当事者の方々の気持ちを一緒に考えたいと思います。 

【略 歴】
 1979年~2002年
  視覚障害者更生訓練施設に勤務、その後在宅視覚障害者の訪問訓練事業に関わる
 1988年~
  新潟市社会事業協会「信楽園病院」にて、視覚障害リハビリテーション外来担当
 2002年~
  フリーランスの歩行訓練士 

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 今回の勉強会の一部は、「新潟大学工学部渡辺研究室」と「新潟市障がい者ITサポートセンター」のご協力によりネット配信致します。以下のURLにアクセスして下さい。
  http://www.ustream.tv/channel/niigata-saiseikai
 当日の視聴のみ可能です。当方では録画はしておりません。録画することは禁じておりませんが、個人的な使用のみにお願いします。
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『済生会新潟第二病院 眼科勉強会』
 1996年(平成8年)6月から、毎月欠かさずに続けています。誰でも参加出来ます。話題は眼科のことに限らず、何でもありです。参加者は毎回約20から30名くらいです。患者さん、市民の方、医者、看護師、病院スタッフ、学生、その他興味のある方が参加しています。眼科の外来で行いますから、せいぜい5m四方の狭い部屋で、寺子屋的な雰囲気を持った勉強会です。
 ゲストの方に約一時間お話して頂き、その後30分の意見交換があります。 

 日時:毎月第2水曜日16:30~18:00(原則として)
 場所:済生会新潟第二病院眼科外来 

*勉強会のこれまでの報告は、下記でご覧頂けます。
 1)ホームページ「すずらん」
  新潟市西蒲区の視覚に障がいのある人とボランティアで構成している音声パソコン教室ホームページ
 http://occhie3.sakura.ne.jp/suzuran/ 

 2)済生会新潟第二病院 ホームページ
  http://www.ngt.saiseikai.or.jp/section/ophthalmology/study.html 

 3)安藤 伸朗 ホームページ
  http://andonoburo.net/ 

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【今後の済生会新潟第二病院眼科 勉強会 & 研究会】
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平成27年10月10日(土) 開場13:30 公開講座14:00〜18:00
 済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015「治療とリハビリ」
 会場:済生会新潟第二病院10階会議室
 事前登録(受付中)
 講演者
  五味文(住友病院)
  高橋政代(理化学研究所)
  立神粧子(フェリス女学院大学教授)
 http://andonoburo.net/on/3896
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平成27年10月14日(水)16:30~18:00
 【目の愛護デー記念講演会 2015】 
 (第236回(15-10)済生会新潟第二病院 眼科勉強会)
 「ー眼を見つめて50年ー
  素晴らしい眼科学の進歩と医療現場における問題を顧みる」
 藤井 青(ふじい眼科) 

平成27年11月11日(水)16:30~18:00
 第237回(15-11)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  「臨床からの学び・発展・創造・実現」
  郷家和子(帝京大学) 

平成27年12月02日(水)16:30~18:00
 第238回(15-12)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  「フィンゲルの仲間と取り組んだ出前授業
   ~工夫を重ねて子供たちの心をキャッチ~」
  田中正四 (胎内市) 

平成28年01月13日(水)16:30~18:00
 第239回(16-01)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  「パラドックス的人生」
  上林明(新潟市) 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
平成28年01月23日(土) 15時半開場 16時~19時
「学問のすすめ」 第10回講演会 済生会新潟第二病院眼科
  会場:済生会新潟第二病院 10階会議室 予定
  講師 門之園 一明(横浜市立大学教授)
     出田 秀尚(出田眼科)
  要:事前登録
  主催:済生会新潟第二病院眼科
 http://andonoburo.net/on/3813
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

平成28年02月10日(水)16:30~18:00
 第240回(16-02)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  若槻 裕子・岩崎 深雪 (新潟市) 

平成28年03月09日(水)16:30~18:00
 第241回(16-03)済生会新潟第二病院眼科勉強会
  演題未定
  関 恒子(長野県松本市)

2015年8月19日

 新潟県の眼科勤務医が中心となり有志が、「越後眼科研究会」を平成19年5月に立ち上げ、年に2回開催しています。日頃抱えている問題や症例を話し合い、また全国で活躍している先生をお呼びして最新・最前線のお話を伺っています。
  今回の特別講演は、網膜硝子体疾患で活躍の大越貴志子先生(聖路加国際病院)を予定しています。
  病院勤務医のみならず、開業医、大学勤務医、研修医、視能訓練士、看護師、学生など多くの方々に参加して頂きたいと存じます。今のうちにカレンダーへのチェックをお願い致します。


『第18回 越後眼科研究会』
 日 時:平成27年10月31日(土)17:00~19:00
 場 所:ホテルラングウッド新潟
    (旧:チサンホテル&コンファレンスセンター新潟)
    新潟市中央区笹口1-1 電話:025-240-2111(代表)
   http://www.lungwood.com/niigata/
 会 費:無料

 17:00~ 薬事案内
 17:15~ 一般演題
 18:15~ 特別講演
 「目にやさしいレーザー治療~低侵襲レーザーの現状と未来」
  大越貴志子(聖路加国際病院 眼科部長)
*尚、講演会終了後、情報交換会を予定しております。


==========================
※ 一般演題を募集致します
 「演題名」「演者名(発表者に○)」「所属名」を記入の上、
 メールまたはFAX、郵送にて、ご応募ください。

 応募先:越後眼科研究会事務局
    (済生会新潟第二病院眼科 安藤 伸朗)
   住所 〒950-1104 新潟市西区寺地280-7
   FAX 025-233-6220
   メールアドレス gankando@sweet.ocn.ne.jp

 演題締切:平成27年10月02日(金)
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【越後眼科研究会世話人】
 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院) 
 村上 健治 (第18回当番;新潟市民病院)
 橋本 薫  (長岡赤十字病院)       
 山本 達郎  (立川綜合病院)

 共催:越後眼科研究会  千寿製薬株式会社

 

*越後眼科研究会事務局**************
 950-1104 新潟市西区寺地280-7
 済生会新潟第二病院眼科
   安藤 伸朗  Noburo Ando,MD
 phone 025-233-6161
 Fax  025-233-6220
 e-mail gankando@sweet.ocn.ne.jp
 ***********************************

済生会新潟第二病院眼科では、どなたでも参加できる公開講座を開催しています。今年は2月に眼科公開講座2015「細井順講演会」を開催しました。
10月10日(土)に、「治療とリハビリ」をテーマに眼科公開講座2015ー第2弾を予定しました。登壇されるのは、加齢黄斑変性治療の第一人者の五味 文先生(住友病院)、眼科再生医療のトップリーダーの高橋 政代先生(理化学研究所)、ご主人の高次脳機能障害にご夫婦で立ち向かった立神粧子先生(フェリス女学院大学教授)の3名の先生方です。会場の皆様も参加できるパネルディスカッションも企画しました。 

参加費は無料ですが、会場準備の都合もあり、事前登録制です。
参加希望の方は下記の要領で、申し込み下さい。 

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【事前登録】済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015-第2弾「治療とリハビリ」
 申込期間 平成27年8月19日(水)~9月30日(水)
 申し込み先:済生会新潟第二病院眼科 安藤伸朗 
  e-mail: gankando@sweet.ocn.ne.jp
  Fax: 025-233-6220 

 @ 会場の都合上、先着100名様までとさせて頂きます。ご了承ください。

***************************************************

【参加申し込み】済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015 
        第2弾「治療とリハビリ」

  氏名~  

  所属(勤務先)~  

  職業~  

 住所~都道府県名と市町村名をお願いします
  記載例~○○都道府県、○○市町村 

 連絡方法
    e-mail アドレス~ 

   Fax番号~ 

  (可能な限り、メールでの連絡先をお願い致します)
****************************************************

注:専門の職員はおりません。
  電話でのお問い合わせには応じることが出来ません。
  お問い合わせ等は、メールでお願い致します。 

 

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 済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015第2弾「治療とリハビリ」
  日時:2015年10月10日(土)  開場:13時30分 研究会:14時~18時
  場所:済生会新潟第二病院10階会議室
  主催:済生会新潟第二病院眼科
  事前登録制 

13:55 はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院)
14:00~特別講演1
  「加齢黄斑変性治療の現状と課題」
    座長:長谷部 日(新潟大学)佐藤 弥生(新潟大学)
    演者:五味 文(住友病院)
  http://andonoburo.net/on/3829
 
14:50~特別講演2
   「iPS細胞による眼疾患治療の現状と未来」
    座長:福地 健郎(新潟大学)安藤 伸朗(済生会新潟第二病院)
    演者:高橋 政代(理化学研究所)
  http://andonoburo.net/on/3855
 
15:40~ コーヒーブレーク 

16:00~特別講演3
  「高次脳機能障害と向き合う
  ~神経心理ピラミッドを用いたホリスティック・アプローチ~」
    座長:仲泊 聡(国立障害者リハ)平形 明人(杏林大学)
    演者:立神 粧子(フェリス女学院大学教授)
  http://andonoburo.net/on/3882
 
16:50~パネルディスカッション「治療とリハビリ」(1時間)
   コーディネーター:
      仲泊 聡(国立障害者リハビりテーションセンター)
      安藤 伸朗(済生会新潟第二病院)
   パネリスト:
 
    高橋 政代(理化学研究所)、五味 文(住友病院)
 
    立神 粧子(フェリス女学院大学教授)、平形 明人(杏林大学)
 
    福地 健郎・長谷部 日・佐藤 弥生(新潟大学) 

17:50 おわりに 仲泊 聡(国立障害者リハビりテーションセンター)
     会場片付け(アジャーン)
18:00 終了

 

2015年8月17日

 済生会新潟第二病院眼科は、今年2月に眼科公開講座2015『細井順講演会』を行いました。今回第2弾として、『治療とリハビリ』を企画し、これは第4回ご案内です。どなたでも参加できます。

  特別講演を、加齢性黄斑変性治療第一人者の五味 文先生(住友病院)、再生治療のトップリーダー高橋 政代先生(理化学研究所)、夫婦で高次脳機能障害から回復を果たした立神粧子先生(フェリス女学院大学教授)の3先生にお願いしました。
  特別講演の3先生にも加わって頂き、会場の皆さまも参加するパネルディスカッションも行います。ご期待下さい。
  立神先生の抄録と略歴をアップしました。

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特別講演3
 演題:高次脳機能障害と向き合う〜神経心理ピラミッドを用いたホリスティック・アプローチ〜
 講演:立神粧子 (フェリス女学院大学教授)

【抄 録】
 14年前に夫がくも膜下出血に倒れたその日から、二人の生活は一変した。脳内出血の後遺症として高次脳機能障害が残存。発話も行動も表情もない別人の夫と向き合うのは、出口の見えないトンネルに入ったようだった。この先どうなるのか、今は道のどの辺りなのか、そのことを誰も教えてくれない。その苦しみに光が見えたのは、Ben-Yishay博士率いるNY大学医療センターのRusk研究所にて機能回復訓練を受けてからである。

 神経心理ピラミッドの表を使って、症状のひとつひとつを学び理解し、研究所での訓練と日常を関連づけて一日を構造化し、対人コミュニケーションの技術を身につけることで、この障害に対する戦略を理解するようになった。一年間のインテンシブな訓練によりようやく障害を受容することができた。

 しかし受容するだけでは足りない。夫自身も自分の症状の本質を認識し、自ら戦略を使いそれを習慣化する。家族である私はホームコーチとなり、夫が戦略を使えるようになるための支援をする。そして互いの新たな関係を模索し、障害を得てもなおそれぞれが幸せに生きるための自己再構築をする必要がある。家族や社会の一員として人とも関わっていかなければ、自己の確立は難しい。

 障害を得てから心と技術をそこまで統合することは困難である。しかし、改善しようとする気持ちや幸せを求める意欲を持つことは、障害の有る無しに関わらず、生を全うすることの本質なのではないかと思う。

【略 歴】
 1981年 東京芸術大学音楽学部卒業
 1984年 国際ロータリー財団奨学生として渡米
 1988年 シカゴ大学大学院修了(芸術学修士号)
 1991年 南カリフォルニア大学大学院修了(音楽芸術博士号)
 2004-05年 NY大学医療センターRusk研究所にて脳損傷者の通院プログラムに参加。
      治療体験記を『総合リハビリテーション』(2006)に連載。
 2010年 『前頭葉機能不全その先の戦略』(立神粧子著;医学書院)
       現在:フェリス女学院大学音楽学部音楽芸術学科教授、音楽学部長

 
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 済生会新潟第二病院 眼科公開講座2015第2弾「治療とリハビリ」
  日時:2015年10月10日(土)
     開場:13時30分 研究会:14時~18時
  場所:済生会新潟第二病院10階会議室
  主催:済生会新潟第二病院眼科
  事前登録制

13:55 はじめに 安藤 伸朗 (済生会新潟第二病院)
14:00~特別講演1
  「加齢黄斑変性治療の現状と課題」
    座長:長谷部 日(新潟大学)佐藤 弥生(新潟大学)
    演者:五味 文(住友病院)
  http://andonoburo.net/on/3829

14:50~特別講演2

   「iPS細胞による眼疾患治療の現状と未来」
    座長:福地 健郎(新潟大学)安藤 伸朗(済生会新潟第二病院)
    演者:高橋 政代(理化学研究所)
  http://andonoburo.net/on/3855

15:40~ コーヒーブレーク

16:00~特別講演3
  「高次脳機能障害と向き合う〜神経心理ピラミッドを用いたホリスティック・アプローチ〜」
    座長:仲泊 聡(国立障害者リハ)平形 明人(杏林大学)
    演者:立神 粧子(フェリス女学院大学教授)
   http://andonoburo.net/on/3882

16:50~パネルディスカッション「治療とリハビリ」(1時間)

   コーディネーター:
    仲泊 聡(国立障害者リハビりテーションセンター)
    安藤 伸朗(済生会新潟第二病院)
   パネリスト:
    高橋 政代(理化学研究所)、五味 文(住友病院)
    立神 粧子(フェリス女学院大学教授)、平形 明人(杏林大学)
    福地 健郎・長谷部 日・佐藤 弥生(新潟大学)

17:50 おわりに 仲泊 聡(国立障害者リハビりテーションセンター)
     会場片付け(アジャーン)
18:00 終了